すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~
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トピックスNo.10「速く歩けること、バランスを保てることの大切さ」では、特に女性において歩く速さやバランス能力が自立した生活を維持するために重要であることをご紹介しました。今回は、筋力のひとつの指標である握力の加齢変化についてご紹介します。
握力の測定は、その方法が簡便であることから、世界的に多くの幅広い年齢の人に実施されています。筋力の測定にはいくつかの方法がありますが、複雑な方法では、”力”ではなく”巧さ”による差が表れることや、その日の気分や体調によって値が大きく変わることがあります。握力の測定は、比較的こうした影響を受けにくく、その人の最大の筋力をとらえやすい特徴があります。
NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)では、40歳から89歳の中高年者の方々(男性648名、女性598名)を対象として、握力の加齢変化を検討しました(図1)。この検討では、10年間の縦断的な握力の測定値を用いています。男女の人数がほぼ同程度で、このように多くの方の加齢変化を確認することが可能なデータは国内でもほとんどなく、学術的に貴重です。
なお、握力は、肩幅に足を開き、手指の第二関節を90度に曲げた位置に合わせてグリップを調整後、測定しました。測定は、右手から順に、左右それぞれ2回ずつ実施しました。左右とも最大値を採用し平均値で算出しています。
図1:握力の10年間の加齢変化
10年間の変化の度合いを分析した結果、握力の加齢変化は、最初の握力のレベルを考慮しても、男女で大きく異なることがわかりました。男性では、加齢に伴って握力が大きく低下していました。一方、女性では中年期から高齢期にかけて、わずかずつしか低下しないことが示されました(図2)。
図2:男女別の握力の10年後の残存率注
(注)残存率=10年後の計測値÷初回の計測値
日常生活に置き換えて考えてみるとどうでしょうか。男性では加齢に伴って、以前はできていたことができなくなったと感じる機会が多くなるかもしれません。女性では変化は感じにくいかもしれませんが、元々、男性と比較して筋力が低いことから、加齢に伴って、自立した生活を維持することが難しいレベルにまで筋力が落ちてしまうかもしれません。
筋力が高いということは、身体に予備力があることを意味します。日常生活の自立ということだけではなく、高齢期になっても人の役に立ったり、新しい活動にチャレンジしたりするには、やはり筋力を高く保つことが大切といえるでしょう。「握力は活力のバロメーター」と見立てる研究者もいます。握力を定期的に測るなど、生涯にわたって筋力の維持向上を意識していきましょう。
握力測定は簡便ではありますが、無理は禁物です。息を止めない、痛みや疲れのある時に無理して行わないといった点に注意しましょう。
筋力の維持向上に向けて、まずは自分の握力がどの程度か、以前からどのくらい変化したかを確認してみましょう!
<コラム担当:小坂井 留美>
*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています* |
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