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すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~

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高齢になると味付けは濃くなるのでしょうか

老化疫学研究部 Department of Epidemiology of Aging

食事は私たち人間にとって生涯を通して生命維持に欠かせない行為であり、おいしい食事は心を満たし日々の健康増進を図る上で重要であることは言うまでもありません。

私たちの食生活は、加齢や時代の変化、環境の変化など様々な要因の影響を受けて成り立っています。たとえば年をとると脂っこいものをあまり好まなくなることや、日本では戦後、魚介類の消費量が減少し、一方で肉類の摂取量が増加したことや、自然災害や環境破壊により特定の食品が手に入りにくくなることがあります。このように私たちが普段何気なく食べている食事は、実は色々な要因の影響をうけて成り立っています。

今回は「高齢期の味付け」に注目したいと思います。皆様は「年をとると味付けが濃くなる」という話を耳にされたことがありますか? これは本当なのでしょうか。確かに年をとると味覚を感じる力が弱くなり、味付けが濃くなるかもしれません。しかし、実のところ、これを科学的に検証した研究はほとんどありません。「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA:ニルス・エルエスエー)」では、地域にお住まいの皆様の食事を調査し、「味付けの濃さ」の指標として食事に含まれる「食塩」摂取量が、加齢とともに変化するのかを調べました。この研究では、愛知県大府市または知多郡東浦町にお住まいの40歳から79歳の男女1,100名の方々にご協力いただきました。加齢に伴う食塩摂取量の変化を調べるために、2年ごとに計5回の食事調査を実施し、年代別に、約8年間の食塩摂取量の変化を調べました。

 

​その結果、男性ではほとんどの年代で加齢とともに食塩摂取量は低下していました。しかし、年を重ねると、食べる量そのもの(摂食量、エネルギー摂取量)も低下しますので、食べる量を考慮した食塩摂取量(エネルギー調整後の食塩摂取量)を調べますと、男性では60歳代で低下傾向を示し(図:青の実線)、一方女性では、50歳代で増加傾向を示しました(図:赤の点線)。

1997年開始の第1次調査から2008年終了の第5次調査までの、男女別および年代別の食塩摂取量の推移を示した図。図中では、青の実線が男性60歳から69歳の推移を示しており、赤い点線が女性50歳から59歳の推移を示している。

食塩は私たち日本人の食生活に欠かせない調味料ですが、とり過ぎは高血圧を招くことが知られています。日本人は世界の中でも食塩の摂取量が極めて高い集団で、「日本人の食事摂取基準2015」では成人男性は8グラム/日未満、女性は7グラム/日未満が目標値とされています。本研究では、男性は加齢と共に食塩摂取量が低下傾向を示していましたが、平均食塩摂取量は12グラム/日程度もあり、まだまだ目標値には届かない値です。薄味を心がけ、高齢になっても素材そのものの味を楽しみ、減塩を心がけたいものです。

 

素材そのものの味を楽しみ、減塩を心がけましょう

 

 

<コラム担当:大塚 礼>

*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*

Otsuka R, Kato Y, Imai T, Ando F, Shimokata H:
Decreased salt intake in Japanese men aged 40 to 70 years and women aged 70 to 79 years, an 8-year longitudinal study.
J Am Diet Assoc. 2011;111:844-50.

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