すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~
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「頭の良い」あるいは「賢い」「利口な」人というと、どのような人を思い浮かべるでしょうか? 頭の回転が速い人。察しのいい人。豊かな知識を持っている人。記憶力がいい人。あるいは、ユーモアのある人、筆まめで文章が上手な人…。「頭の良さ」には、いろいろありそうです。
もう少し、想像を深めてみましょう。若い頃の「頭の良さ」と、年を重ねての「頭の良さ」は、同じでしょうか。若い頃には、ぱっと計算したり、覚えたり、問題をすばやく解決したりすることが、「頭の良さ」として重要でした。しかしながら、高齢になってくると、むしろ、物事をよく知っていたり、じっくりと物事に取り組んでいたり、あるいは、豊かな経験から若い人たちに助言したりすることなどが、「頭の良さ」として、より高く評価されるようになっていきます。人生のそれぞれの段階において、「頭の良さ」の内容は、少しずつ、異なっているのです。
このように、人の知的な能力には、いくつかの種類があります。多くの人が「最近、記憶力が悪くなって・・・」と言うように、よく知られているのは、記憶力です。記憶力にも、その場で電話番号を覚える『短期記憶』や、昔の出来事や経験についての『長期記憶』などの種類があります。そのほかにも、どれくらい知識を持っているか、知識を蓄えることができるかという『知識力』、道筋を立てて物事の本質をとらえる『論理的抽象的思考力』、外から与えられた情報をすばやく処理する『情報処理のスピード』、物事に計画的に取り組む『実行機能』などが、知的な能力の重要な要素であることが知られています。これらの知的な能力の果たす役割は、それぞれに違います。また、これらの知的な能力が、加齢から受ける影響もまた、異なると考えられます。ただし、日本人において、それぞれの知的な能力が、加齢にともなってどのように変化するのか、については、あまり明らかにされてきませんでした。
そこで、NILS-LSA(ニルス・エルエス・エー)では、さまざまな知的な能力が、加齢に伴ってどのように変化するかを調べました。
その結果、やはり知的な能力の種類によって、変化の仕方は大きく異なることが分かりました。下の2つの図を比べてみてください。NILS-LSAの調査に、少なくとも1回参加してくださった3983名の方々の、『知識力』得点と『情報処理のスピード』得点の変化を分析した結果を示しています。
『情報処理のスピード』は、50歳中頃までは少し向上するのですが、その後は急激な低下を示しました。しかしながら、『知識力』は、40歳から70歳を過ぎる頃まで、ぐんぐん向上していきます。その後、緩やかな低下を示していますが、90歳を目の前にしても、40歳よりも高得点なのです。
私たちは、年を重ねて起こってくる、「良くない変化(記憶力が悪くなった、頭の回転が鈍くなったなど)」に目を向けがちです。しかしながら、NILS-LSAの研究からは、『知識力』のように、年を重ねることによって、また、人生経験を重ねることによって成熟していく、知的な能力があることが分かってきました。高齢になっても、このような能力を大切に伸ばしていくことは、幸せに年を重ねていくために、とても重要なことだと考えられます。
高齢になっても、豊かに保つことのできる能力に目を向けてみましょう。
<コラム担当:西田 裕紀子>
*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*
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