プレスリリース
2026年9月10日
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典。以下国立長寿医療研究センター)は、令和6年度に公開した「認知症発症/進行リスク早期発見の手引き」を改訂し、第2版を公開しました。
本手引きは、地域において認知症の発症/進行リスクの早期発見から受診推奨、診断後支援までを各自治体が効果的・効率的に実施するための実践的なガイドとして作成されています。今回の改訂では、全国の自治体および認知症本人・家族の意見を反映するとともに、令和6年度および7年度に実施したJ-DEPP研究の成果を取り入れ、より現場で活用しやすい内容へと充実させました。
改訂にあたり、全国の市区町村を対象に手引き第1版に関するアンケート調査を実施し、853自治体から回答を得ました。その結果、79%の自治体が「認知症の早期発見事業の計画・実施に役立つ」と回答しました。特に、「認知症・MCIの早期発見における自治体の役割」や「先行事例」の紹介は、事業の計画・準備段階で参考になるとの評価を得ました。
一方で、自治体からは次のような内容の充実を求める意見が多く寄せられました。
アンケート調査の結果を踏まえ、第2版では人口約1万人規模の秋田県羽後町および鹿児島県垂水市の取組事例を新たに掲載しました。また、認知機能スクリーニングツールについては、検査概要、実施時間、費用、特徴、利点・課題を一覧として整理し、自治体が地域の実情に応じて選択しやすい内容としました。
さらに、J-DEPP研究において認知症専門外来を受診した本人・家族5組へのインタビューを実施し、受診行動に影響する要因を分析しました。その結果、「治療への期待」「家族からの前向きな声かけ」「相談先の分かりやすさ」が受診を促進する一方、「移動手段の制約」や「認知症に対するスティグマ」が受診の障壁となることが示されました。第2版では、これらの知見を「当事者の声」として新たに掲載し、自治体が認知症に関する普及啓発や受診推奨を実施する際の参考となる内容を充実させました。
J-DEPP研究では、令和6年度に認知機能スクリーニング後に受診を推奨された方が、実際の医療機関の受診につながりにくいことが課題として明らかになりました。そこで令和7年度は、受診推奨基準の見直しや結果画面の視認性改善、一部地域での医師相談ブースの設置など、受診につなげるための取組を改善しました。その結果、受診推奨者の受診率は令和6年度の7.3%から令和7年度は13.5%に向上しました。
また、参加者自身が受診推奨を認識できた場合の受診率は33.3%であったのに対し、認識していなかった方では8.3%にとどまり、受診推奨を対象者に確実に伝えることの重要性も明らかになりました。なお、令和7年度J-DEPP研究の成果の詳細は、厚生労働科学研究成果データベース
で公開しています。
こうした令和6年度および7年度J-DEPP研究の成果を基に、自治体が認知症の発症/進行リスクの早期発見事業を円滑に実施するための標準モデルとして、「J-DEPPモデル」を新たに作成しました (参考資料・別表1)。
J-DEPPモデルでは、図1の事業フロー例のとおり、Plan(事業計画・体制整備)、Do(市民啓発、リクルート、検査実施、結果通知・受診推奨、継続支援)、Check & Action(事業評価)のPDCAサイクルに沿って事業全体を8つのステップで整理しています。

図1.J-DEPPモデルの事業フロー例
本手引き第2版は、全国853自治体へのアンケート調査、認知症当事者・家族へのインタビュー、およびJ-DEPP研究で得られた知見を反映した日本独自の実践的な手引きです(図2)。自治体が地域の実情に応じた認知症発症/進行のリスク早期発見の取組を効果的に実施するための標準的な手引きとして、全国での活用が期待されます。
本手引きは、どなたでも閲覧いただけるようにWeb上で公開しています。
本研究は令和5年度および6年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(認知症政策研究事業)の支援のもと実施されています。また、データ収集にご協力いただきました研究参加者の皆様、協力自治体の皆様に心より感謝申し上げます。
| PDCA | Step | 内容 | 詳細 |
手引き参照ページ |
|---|---|---|---|---|
| Plan | 1.事業計画 | 事業目的を設定し、具体的なKPI (評価指標)を策定 | 事業目的を明確にし、主要KPI (評価指標)として、検診受検率、受診率などを設定します。 | 枠組みの整理 P34-35 指標の例 P35-36 |
| 2.体制準備 | 関係機関と連携し、実施体制を構築 | 受診先の受け皿となる地域医師会、認知症疾患医療センター、および大学病院等へ事業の趣旨を説明し、受診体制を整えます。次に、外部委託業者(スクリーニング用認知機能検査提供、会場運営補助、ダイレクトメール発送・印刷等)やボランティアなどの地域資源を選定し、実施体制を整えます。 | 地域資源との協働と連携 P37 |
|
| Do | 3.市民啓発 | 多様な媒体を活用して啓発活動を実施 | 啓発活動においては、自治体のホームページや広報誌、回覧板などへの記事・動画の掲載を行い認知症の基礎知識や相談窓口、介護保険制度の情報を発信します。情報提供の場として、講演会や地域イベント等も活用します。情報提供の際には、認知症の発症・進行リスクの早期発見・早期対応の重要性や認知症の予防や治療などについて、丁寧に周知し ます。 |
継続的な事業実施を目指して (参考:P7、P66-68) |
| 4.リクルート | リクルートを実施 | 「個別化した手法」を用いたリクルートは受検率が高いことがわかっています。個別化した手法には「個別郵送」「会場イベントでの直接声かけ」「地域包括・介護予防教室での案内」の方法があります。補助的ツールとして、広報誌・ポスター・ホームページ・新聞折込・リスティング広告なども活用します。 | 対象者のリストアップ P39-40 |
|
| 5.検査実施 | 地域の特性に合わせて実施形式と検査ツールを選択し検査を実施 | 検査の実施形式は、地域の特性に合わせて選択します。会場型は対面での丁寧な説明や操作支援などの即時フォローを行うことができるため、推奨されています。各自のスマートフォン等の電子的デバイスで検査をオンライン実施する非会場型は操作性による途中離脱支援として、事前練習や電話等のサポート体制を整える必要があります。 |
検査の形式 P40-41 (参考:各地域の取組事例 P52-61)
検査の形式と使用ツール P40-45 |
|
| 6.結果通知・ 受診推奨 | 結果通知および受診推奨 | 検査後は結果送付にとどまらず、電話や訪問、面談などによる「人を介した」支援を行います。具体的行動(受診予約方法・相談先)と地域の受診先を明記し、対象者の不安を軽減しつつ受診を促します。 | 不安のない推奨のために P45-49 |
|
| 7.継続支援 | 受診行動のリマインドと診断結果に応じたフォロー | 必要に応じて関連部署と連携し、継続的な支援を行います。医療機関受診のリマインドを行い、受診後の診断結果(認知症、MCI、正常)に応じて適切な支援を実施します。結果が正常範囲であった場合でも、定期的なスクリーニング検査の案内や継続的な啓発・情報提供を行います。 | モニタリングとフォローアップ P49-50 |
|
| Check & Action | 8.事業評価 | 認知症の早期発見の取組の事業評価を実施し主要KPIを確認 | 事業全体を振り返り、当初設定した主要KPI (受検率、受診率等)の実績を確認します。この事業評価を次年度以降の計画にフィードバックしていきます。目標が達成できなかった場合は、Planを見直します。 | 3段階の評価方法と活用 P51 |
| PDCA | Step | 取組チェックリスト | 手引き参照ページ |
|---|---|---|---|
| Plan | 1.事業計画 |
|
枠組みの整理P34-35 |
| 2.体制準備 |
|
地域資源との協働と連携 |
|
| Do | 3.市民啓発 |
|
継続的な事業実施を目指して (参考:P7、P66-68) |
| 4.リクルート |
|
対象者のリストアップ |
|
| 5.検査実施 |
|
検査の形式 P40-41 (参考:各地域の取組事例 P52-61) |
|
|
検査の形式と使用ツール P40-45 |
||
| 6.結果通知・ 受診推奨 |
|
不安のない推奨のために |
|
| 7.継続支援 |
|
モニタリングとフォローアップ |
|
| Check & Action | 8.事業評価 |
|
3段階の評価方法と活用 |
国立長寿医療研究センター J-DEPP研究事務局
国立長寿医療研究センター 総務部総務課
TEL : 0562-46-2311(代表)
E-mail : webadmin(at-mark)ncgg.go.jp
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