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ホーム > 研究所 > ニュース&トピックス > バイオインフォマティクス研究部 菅沼睦美特任研究員らの論文がGerontology誌に掲載されました
フレイルは加齢とともに心身が衰えた状態を指し、高齢化社会の進展に伴い、その患者数は年々増加傾向にあります。フレイルは進行すると要介護状態になるリスクが高まります。そのため、早期発見と効果的な介入が求められます。
早期発見には正確なフレイル診断が重要になります。これまでのフレイル診断は患者からのアンケートや臨床測定値(主に身体活動に関するもの)に基づいており、より客観的な指標がその精度向上に役立つものと期待されます。
そこで本研究チームは、その客観的な指標になりうるバイオマーカーを血液検査データと遺伝子発現データの網羅的な解析から探索を行いました。国立長寿医療研究センターバイオバンクおよびロコモフレイルセンターに登録されている61名のフレイル患者および43名の健常者の血液データから、フレイルの発症に関連する遺伝子や老化関連因子を網羅的に探索しました。その結果、骨格筋量と4つの老化関連因子(GDF15, Adiponectin, CXCL9, Apelin)がフレイル診断に役立つバイオマーカー候補になりうることを発見しました(図1、疾患発症予測精度AUC=0.95)。同定したバイオマーカー候補は、それぞれフレイル診断基準のJ-CHSの4つの要素と相関を示しましたが、『GDF15』がもっとも強い相関にあり、3つの要素(体重減少、疲労感、筋力低下)と相関が見られることがわかりました(表1)。
本研究で同定された4つの老化関連因子は、炎症に関連していることが報告されており、フレイルの発症において炎症が重要な役割を果たしている可能性を改めて示すことができました。また、臨床データのバイオマーカー候補である骨格筋量が、フレイル患者において低下していることが観察されました。骨格筋量は、サルコペニアの診断要素の一つであり、サルコペニアは広義においてはフレイルに含まれると考えられます。これらの結果は、今後のフレイルの病態メカニズムの解明や予防法の開発につながるものと期待されます。
研究成果は、老年病分野の国際専門誌「Gerontology」に2024年3月14日付で掲載されました。
本研究は、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)、長寿医療研究開発費の助成を受けて行われました。
Identification of potential blood-based biomarkers for frailty by using an integrative approach
Gerontology