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バイオインフォマティクス研究部の重水大智部長らの研究成果がnpj Aging誌に掲載されました

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)は高齢者でもっとも多くみられる認知症で、年間10〜15%の軽度認知症障害(Mild Cognitive Impairment : MCI)者がADに移行しています。その多くは5年以内にADへ移行する一方、MCI状態を長く維持したり認知機能正常に戻ったりするケースもあります。このADへの移行リスクを早期に診断できるバイオマーカーを同定することができれば、AD移行が高リスクなMCI者の判定に役立ち、早期介入によりAD移行を遅延させるができるかもしれません。

現在報告されているAD発症リスク因子の多くが免疫に関連しています。そこで本研究では、NCGGバイオバンクに保存されているAD患者317名、認知機能正常高齢者(CN)107名、MCI者432名の血中全RNAシークエンス(RNA-Seq)データを用いて、免疫細胞組成の違い、獲得免疫の抗原特異的な受容体(TCR:TRA, TRB, TRG, TRD・BCR: IGH, IGK, IGL)(レパトア)の多様性の違いに着目したバイオマーカー探索を行いました。その結果、好中球、形質細胞、B細胞、 T細胞の細胞組成が認知機能低下に伴い変化すること、レパトアの多様性は高齢化に伴い減少しますが、BCRは男性、TCRは性差なく顕著に減少すること(図1)、IGH、IGK、TRAの多様性が認知機能低下に伴い減少することを見出しました(図2)。

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病型の予測には、コックス比例ハザードモデルを応用しました。学習群データのクロスバリデーションから最適なパラメータを決定し、全学習群データから判別モデルを構築しました。その結果、2種のレパトア(IGK、TRA)、1種の遺伝子発現(WDR37)をバイオマーカーとして用いることで、AD移行リスクを予測できる判別モデルが得られ、検証群による解析でもこのモデルが機能することが示されました。

判別精度はまだ高くはありませんが、免疫機能を考慮した判別モデルの有効性が示されました。ゲノム情報と組み合わせた再検証、症例数を増やした再検証が今後精度を向上させると期待しています。

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本研究の成果は,2022年11月4日にオンライン英国科学誌「npj Aging」に掲載されました。本研究は、AMED、長寿医療研究開発費、長寿科学振興財団、堀科学芸術振興財団、中京長寿医療研究推進財団、文部科学省科学研究費補助金、厚生労働省の研究助成を受けて行われました。

論文情報

表題

Identification of potential blood biomarkers for early diagnosis of Alzheimer’s disease through immune landscape analysis

研究チーム

掲載誌

npj Aging

論文URL

https://www.nature.com/articles/s41514-022-00096-9このリンクは別ウィンドウで開きます

 

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