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ホーム > 研究所 > ニュース&トピックス > バイオインフォマティクス研究部の秋山真太郎研究員らの研究成果がDatabase (Oxford)誌に掲載されました
疾患のリスクを有する遺伝子多型※1が遺伝子の発現量に与えるメカニズム(expression Quantitative Trait Locus: eQTL)を網羅的に調べたデータベースは充実しています。しかしながら、マイクロRNA(miRNA)※2の発現量に対して網羅的に調べたeQTL(miRNA-eQTL)データベースは癌研究以外、これまで開発されていませんでした。
NCGGバイオバンクには約5,000例の認知症関連のmiRNome(網羅的なmiRNA発現量)データが保存されています。この中から遺伝子多型が測定されている約3,500例の認知症(アルツハイマー病、レビー小体型認知症、血管性認知症、正常圧水頭症、前頭側頭葉変性症)、軽度認知障害と認知機能正常者のデータを用いて、それぞれの病型ごと、あるいは病態を加味しない全データで網羅的にmiR-eQTLを調べました。調べた数は、約930万個の遺伝子多型と約2,500個のmiRNAの組み合わせになります。
解析の結果、miRNAの発現に影響を与える2,487個のcis-miR-eQTL※3と3,155,773個のtrans-miR-eQTL※4が同定されました。これらの結果は、誰でも参照できるようにデータベース化され(図、https://jamir-eqtl.org/)、解析結果はすべてダウンロードすることができます。このデータベースは、認知症、そして日本人のデータとして世界初になります。また、認知症の病型ごとに検索することができるだけでなく、疾患を加味しない検索も可能です。したがって、このデータベースは認知症研究だけでなく、さまざまな疾患研究の発症機序の解明の一助になると期待しています。
本研究の成果は,2021年11月3日にオンライン英国科学誌「Database (Oxford)」に掲載されました。本研究は、AMED、長寿医療研究開発費、長寿科学振興財団、武田科学振興財団、大幸財団、文部科学省科学研究費補助金、厚生労働省の研究助成を受けて行われました。
図: miR-eQTLデータベースの検索画面
ゲノム配列の個体差のうち、集団中に一定以上の頻度で存在するもの。中でもゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性である一塩基多型(single nucleotide polymorphism;SNP)が代表的である。
マイクロRNAは、タンパク質をコードしない約22塩基の短いノンコーディングRNAのひとつで、遺伝子発現の制御に関わっている。
miRNAの近傍(1Mb以内=1,000,000塩基以内)に位置している遺伝子多型がそのmiRNAの発現量に影響を与えていること。
miRNAの近傍以外に位置している遺伝子多型がそのmiRNAの発現量に影響を与えていること。
JAMIR-eQTL: Japanese genome-wide identification of microRNA expression quantitative trait loci across dementia types
Database (Oxford)
https://academic.oup.com/database/article/2021/2021/baab072/6420097