健康長寿ラボ
スマートウォッチを使ったことはありますか。近年、多くの種類のスマートウォッチが市販されています。また、若い方や健康な方はもちろんのこと、高齢者の方や病気・障害のある方にも、スマートウォッチの活用は、健康長寿に有効であることがわかっています。ここでは、健康づくりに役立つスマートウォッチの使い方についてご紹介します。
スマートウォッチの登場する以前には、活動量計を用いて、ふだんの生活のなかでどのくらい身体を動かしているかを「見える化」する研究がさかんに行われてきました。たとえば、歩数に着目すると、高齢者の方は1日2000歩歩くことで寝たきり予防、1日5000歩で要介護予防、1日7000歩で骨粗鬆症予防になると言われています[1]。速歩き(中等度の強さの運動)が5〜20分以上あることで、さらに健康長寿効果が高まります。さらに、フレイル(心身の活力が低下した状態)の方は特に、より多く歩くほど寿命が延びる可能性があります[2]。また脈拍数は、運動の強度を推定するのに役立ちます。たとえば、50歳で安静時の脈拍が60拍/分の場合、運動中に115拍/分まで上がっていれば、適度(中等度の強さ)の運動が行えていると思われます。適度な運動が1日10分多いと、心臓病の発症や死亡リスクが低くなることが明らかになっています[3]。
こうした研究で使われる活動量計は高性能ですが使い方が難しかったり、高価だったりして、一般の方が気軽に使うことはなかなかできませんでした。いっぽう最近のスマートウォッチは従来の機器と比べて、かなり簡単に使うことができ、価格も比較的手頃に入手できます。腕時計と同じように1日身につけるだけで、歩数や脈拍数を自動的に記録してくれますし、それをスマートフォンですぐに見ることができます。このように自分がふだんどのくらい身体を動かしているかを「見える化」すると、運動を頑張った日は“これだけ運動できた”と励みになります。また、あまり動かなかった日は“明日は5000歩を目指して運動しよう”などと具体的な目標を持つことができ、自然と健康増進に役立つのです(図1)。
図1 活動を「見える化」することの相乗効果
健康に心配のない方は、ご自身で始めていただくことができますが、もし病気や障害により歩くことや運動することに心配・不安がある方は、かかりつけの医師や地域の保険センター等に相談しましょう。スマートウォッチを活用して、ふだんどのくらい運動しているかチェックすることは、病気や障害のある方のリハビリテーションにも効果があります[4][5]ので、リハビリテーション専門職に相談しながらチャレンジしてみてください。
現代を生きる高齢者の方々が自立して活動的に暮らすうえで、デジタル機器と上手くつきあう力は欠かせません。上手く活用することで、孤独感を軽減し、生活満足度を向上させるといった「心の健康維持」に役立つとも言われています[6]。より活き活きとした暮らしを目指すために、スマートウォッチを健康づくりに役立ててはいかがでしょうか。
青柳幸利.活発を測る:活動計を用いた日常生活の身体活動計測(中之条研究).Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 2014 May 18;51:S179.
総合型介護予防実施マニュアル.京都地域包括ケア推進機構.(2025年1月21日閲覧)http://www.kyoto-houkatucare.org/kaigo-yobou-manual/
「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版.e-ヘルスネット(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト).(2025年1月21日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-00-002.html
Simmich J, Mandrusiak A, Russell T, Smith S, Hartley N. Perspectives of older adults with chronic disease on the use of wearable technology and video games for physical activity. Digit Health. 2021 May 30;7:20552076211019900.
Otaka E, Oguchi K, Kondo I, Otaka Y. Effectiveness of Self-Monitoring Approach Using Fitness Trackers to Improve Walking Ability in Rehabilitation Settings: A Systematic Review. Front Rehabil Sci. 2021 Dec 2;2:752727.
Forsman AK, Nordmyr J. Psychosocial Links Between Internet Use and Mental Health in Later Life: A Systematic Review of Quantitative and Qualitative Evidence. J Appl Gerontol. 2017 Dec;36(12):1471-1518.
文 大高恵莉(健康長寿テクノロジー応用研究室)