すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~
ホーム > 研究所 > すこやかな高齢期をめざして > 緑茶にする?コーヒーにする? ~認知機能との関連性~ 【認知症予防】
緑茶やコーヒー、紅茶などの嗜好飲料は、1日に何杯も習慣的に飲むことが多い身近な飲み物です。そのため生涯で口にする量はかなり多く、消化・吸収を通して健康にも少なからず影響を与えていると考えられています。認知症予防の観点からも緑茶やコーヒーの有効性が注目されており、国内外の研究者により、それらの摂取と認知症発症との関連性が検討されていますが、未だはっきりとした結論は得られていません。
NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)では第2次調査以降、地域住民の方々に、緑茶やコーヒー、紅茶などの嗜好飲料を普段どの程度飲んでいるかを聞き取り調査しています。また、60歳以上の方々には認知機能の評価も行なっています。今回は、60歳以上の1305名の方々の12年間のデータを使って、嗜好飲料のうち、多くの人が飲んでいる緑茶やコーヒーの摂取頻度と認知機能の関連性を調べました。
その結果、緑茶の摂取が1日1杯未満のグループに比べ、1日に2-3杯、あるいは4杯以上のグループでは認知機能の低下リスクが約30%低下していました。つまり、緑茶を1日に2杯以上飲んでいる人では、ほとんど飲んでいない人に比べて認知機能が下がりにくいという結果でした。
図:緑茶の摂取頻度と認知機能低下のリスク
緑茶にはお茶特有の苦み成分のもととなるカテキンなどのポリフェノールが豊富に含まれ、抗酸化作用や抗炎症作用(注1)、動物実験ではアミロイドβ(注2)の蓄積を抑える作用などが報告されています。 またお茶類は人との団らん時に飲むことも多く、本研究では検討できていませんが、社交性の高さが両者の関連性を説明している可能性があります。したがって、今回の研究結果は、食事や人との社交を通して、習慣的に緑茶を飲むことが、認知機能の維持に効果的であることを示しています。
(注1)抗酸化作用や抗炎症作用:生体の酸化ストレスや炎症を抑える作用。
(注2)アミロイドβ:アルツハイマー型認知症の発症に大きく関わっていると考えられている脳内で作られるたんぱく質の一種。
一方、今回の検討では、コーヒーと認知機能には明確な関連性がありませんでした。60歳以上の地域住民の方々ではコーヒーをほとんど飲まない方々が約4割を占め、緑茶のように1日4杯以上飲む方々は非常に少ないため、コーヒーを飲む人と飲まない人での比較が十分に行えなかった可能性があります。コーヒーにもポリフェノールは豊富に含まれており、健康に良い効果を与える可能性が考えられます。
ただ、緑茶もコーヒーもカフェインが比較的多く含まれており、多量に飲むと睡眠障害など健康に悪影響を与える可能性もあります。緑茶は1日数杯程度、食後やお茶の時間、人との社交時に美味しく取り入れることが健康に良い効果をもたらすと考えられます。
社交時や食後など、1日数杯程度の緑茶を摂取し認知機能を維持しましょう。
<コラム担当:大塚 礼>
*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています* |
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