本文へ移動

研究所

Menu

すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~

ホーム > 研究所 > すこやかな高齢期をめざして > 「余暇」は生きるための活力源です

「余暇」は生きるための活力源です

老化疫学研究部 Department of Epidemiology of Aging

1日の24時間の中で、人は食事や睡眠などの「生命維持に必要な活動」や、仕事や家事などの「生活の維持に必要な活動」を行なっています。そしてこれら以外が自由に使える時間であり、その時に行う活動を「余暇活動」と呼んでいます。近年では余暇活動が高齢者の身体的な機能や認知機能の維持に関係する可能性が示されていますが、もっと前の若い時期から、余暇活動が心身の健康維持に関わっていることも考えられます。そこで、まず中年期から高齢期の余暇活動の実態について把握することを目的とした研究を行いましたので、ご紹介します。

NILS-LSAの第7次調査に参加された2,326名の方々に、過去2年間に下表に挙げる余暇活動をそれぞれどのくらいの頻度で行ったかについて、「していない」、「年に1回から数回」、「月に1回から3回」、「週に1回程度」、「週に2回から3回」、「毎日」の選択肢の中から回答していただきました。そして、これらの余暇活動全体での活動頻度について、年代(中年期:40-64歳、高齢期:65歳以上)および男女別に集計しました(注1)。
(注1) 得点化に際しては、各余暇活動の活動頻度に1~6点を与え、得点を合計しました。

表 余暇活動の質問項目
新聞を読む

個人競技(テニス・ゴルフなど)

本を読む チーム競技(野球・バレーボールなど)
物を書く(日記・楽しみのための執筆など) エクササイズ(体操・ヨガ・エアロビクス・太極拳など)
クイズ・クロスワードパズル 水泳
盤ゲーム・カードゲーム(将棋・トランプなど) ウォーキング
集団での討論(勉強会や集会など) ジョギング
楽器の演奏・合奏 ハイキング・登山
創作(書道・絵画・写真・和裁など) 釣り
芸術鑑賞(映画鑑賞・音楽鑑賞・観劇など) 庭仕事(家庭用の野菜作り・盆栽など)
パソコン(インターネット・メールなど) 旅行(日帰り・泊まりがけを含む)

 

図1:年代(中年期および高齢期)と性別での余暇活動全体の活動頻度を示したグラフ。活動頻度は、毎日、週2から3回、週1回、毎月1から3回、毎年1から数回、していない、に分類されている。

図1にお示しするように、余暇活動全体で平均すると、高齢男性が頻繁に余暇活動を行なっていることが分かりました。とはいえ、余暇活動には「新聞を読む」のように毎日行うことが多いものから、「旅行」のように年に数回(場合によっては数年に1回)程度のことが多いものまでいろいろな種類がありますので、全体としてまとめてしまうと実態がよくわからないですよね。そこで、因子分析(注2)という統計的な手法を使って、活動頻度の傾向が関連する余暇活動同士を5つのグループに分類しました。
(注2)探索的因子分析(Promax 回転、最尤法(さいゆうほう))を用いて、5因子を抽出しました。その際、因子負荷行列において一つの因子だけに|.30|以上の負荷を持つことを選定基準とし、因子毎に合計点を算出しました。

 

図2:年代(中年期および高齢期)、性別の知的刺激系活動とスポーツ系活動の活動頻度を示した図。活動頻度は、毎日、週2~3回、週1回、毎月1~3回、年に1~数回、していない、に分類されている。

まず、図2をご覧ください。パソコンを使う活動や、芸術鑑賞、将棋やカードゲームなどの、いわゆる「頭を使う」余暇活動である知的刺激系活動や、スポーツのチーム競技、ジョギングなどの、比較的しっかり体力を使う余暇活動であるスポーツ系活動は、高齢期よりも中年期、女性よりも男性が頻繁に行なっていて、特に中年男性がこれらの余暇活動を行う機会が多いことが示されました。

 

図3:年代(中年期および高齢期)、性別に創造的活動とエクササイズ系活動の活動頻度を示した図。活動頻度は、毎日、週2~3回、週1回、月1~4回、年に1~数回、していない、に分類されている。

次に、図3をご覧ください。小説やエッセイなどの執筆活動や書道、あるいは絵画、手芸、写真などいろいろな作品を創る余暇活動である創造的活動や、体操や水泳・水中ウォーキングなど、やや緩く体を動かす余暇活動であるエクササイズ系活動は、中年期よりも高齢期、男性よりも女性が頻繁に行なっていることが示されました。

 

図4:年代(中年期および高齢期)、性別に日課的活動の活動頻度を示した図。活動頻度は、毎日、週2~3回、週1回、毎月1~3回、年に1~数回、していない、に分類されている。

今度は、図4をご覧ください。庭仕事、ウォーキング、新聞を読むといった、毎日、あるいは比較的高い頻度で行なっている日課的活動は、中年期よりも高齢期で頻繁に行われており、特に高齢男性がこれらの余暇活動を行う機会が多いことが示されました。

このように、余暇活動にはいろいろなものがありますが、年代や性別により、異なる活動を選択的に行なっている可能性が示されました。特に年代については、その時点での身体機能や認知機能に合わせて余暇活動の内容を変えている可能性も考えられますが、最初に述べましたように、これらの機能を維持するために有効な活動が存在する可能性もあります。そのため、今後はそういった検討を行う必要があるでしょう。

1日が24時間ということは決まっていますので、余暇活動に費やすことができる時間は他の活動に費やす時間と連動します。そのため、上手に時間をやりくりして、「生きるための活力として必要な活動」を行なっていきたいですね。


余暇活動から「生きるための活力」を得て、心身の機能を維持しましょう!

ビリヤード台の画像。家に1台あったら、余暇を楽しめそうです。  


 <コラム担当:丹下 智香子>

 

 

*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*
Daily Physical Activity Predicts Frailty Development Among Community-Dwelling Older Japanese Adults
Atsumu Yuki, Rei Otsuka, Chikako Tange, Yukiko Nishita, Makiko Tomida, Fujiko Ando, Hiroshi Shimokata, Hidenori Arai
Journal of the American Medical Directors Association (in press)

このトピックスに関連する記事もぜひご覧ください。