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すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~

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動くことは脳を鍛えること 【認知症予防】

老化疫学研究部 Department of Epidemiology of Aging

脳の細胞は死んでしまうと2度と元に戻らない。-かつてはこのように信じられていましたが、今世紀になって、脳細胞は再生することが明らかとなりました。

一般的に、脳の神経細胞は加齢にともなって数が減り、脳は萎縮していきます。脳の萎縮を進行させる要因として、加齢のほかに脳血管性疾患、飲酒、喫煙などが報告されています。一方、ジョギングなどの有酸素運動は脳の萎縮の進行を防ぐことが指摘されています。

 

しかし、「脳の細胞を増やすためにジョギングしましょう」といっても、運動が苦手な人や、ここ数年、全く運動していない人にとっては、なかなか難しいと思います。
脳の萎縮を予防するために、手軽に行うことができる運動はないでしょうか。

我々は「歩くこと」に着目し、歩数が脳萎縮の予防効果をもつかどうかを調べました。対象となったのは、NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)の第2次調査と8年後の第6次調査の両方に参加された、50歳以上の男性381名と女性393名の方々です。

その結果、男性では、1日の歩数が最も多いグループの脳の前頭葉(意欲をもつことや、計画を立てて行動することに影響します)の萎縮の悪化のしやすさは、最も歩数が少ないグループの約3分の1にとどまっていました(図1)。すなわち、趣味でよく歩く人、あるいは仕事や家事などで多く歩く人ほど、前頭葉の萎縮は悪化しにくいことが示されました。

図1:歩数と脳(前頭葉)の萎縮の悪化のしやすさ(男性)。1日あたりの歩数を、5736歩未満、5736歩以上かつ6955歩未満、6955以上かつ8261歩未満、8261歩以上かつ10437歩未満、10470歩以上の群に分け、歩数と前頭葉の萎縮の悪化のしやすさの関連をオッズ比で示した図。男性のみが対象。歩数は5分ぐらいとして分析を行った。

 

一方、女性では歩数と前頭葉の萎縮の悪化との関係性を見出すことはできませんでした。 そのかわり女性では、総エネルギー消費量が最も多いグループの前頭葉萎縮の悪化のしやすさは、総エネルギー消費量が最も少ないグループの約10分の1であることが分かりました(図2)。総エネルギー消費量とは「運動(体を動かすこと)によるエネルギー消費量+基礎代謝量+食事によるカロリー消費量」のことです。

図2:総消費エネルギー量と脳(前頭葉)の萎縮の悪化のしやすさ(女性)。1日あたりの総エネルギー消費量を、1696キロカロリー未満、1496キロカロリー以上1570キロカロリー未満、1570キロカロリー以上かつ1640キロカロリー未満、1640キロカロリー以上かつ1722キロカロリー未満、1722キロカロリー以上の群に分け、総消費エネルギーと前頭葉の萎縮の悪化のしやすさの関連をオッズ比で示した図。女性のみが対象。総消費エネルギー量は5分ぐらいとして分析を行った。

脳の萎縮が進行していくと認知症の症状が表れることもあります。脳の萎縮の悪化を防ぐために、男性は1日6,000歩を超えるくらい歩くことを心がけましょう。女性では基礎代謝量や運動によるエネルギー消費量を維持するために、筋肉量の減少を予防することが重要です。肉や魚、大豆などの良質なたんぱく質を摂取して(トピックスNo.9「良質なタンパク質とは」参照)筋肉量をできるだけ維持すること、体を動かす活動で積極的にエネルギー消費量を増やすことを心がけましょう。

 

脳の萎縮を予防するためには、男性ではよく歩くこと、女性ではエネルギー消費量を増やすことが効果的です

 

 

<コラム担当:幸 篤武>

*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*
Yuki A, Lee SC, Kim HY, Kozakai R, Ando F, Shimokata H:
Relationship between physical activity and brain atrophy progression.
Med Sci Sports Exerc, 44: 2362-2368, 2012.

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