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Osr1欠損マウスを用いた異種間胚盤胞補完法により、 マウス体内でラットの腎臓を持つキメラ動物の作製に成功

~腎臓再構築の新たな基盤を提示~

2026年6月19日

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典。以下国立長寿医療研究センター)研究所・研究推進基盤センター・実験動物管理室の由利俊祐室長、磯谷綾子准教授(奈良先端科学技術大学院・器官発生工学研究室)の研究グループは、胚盤胞 補完法[1]と呼ばれる技術を用いて、腎臓を欠損するマウスの体内でラットの多能性幹細胞[2]由来の腎臓を作り出すことに成功しました。本研究は、異種キメラ[3]動物体内での臓器作製研究や将来的な移植用臓器作製に向けた重要な基盤となる成果です。

研究の主なハイライト

研究の概要と結果

国立研究開発法人長寿医療研究センターの研究グループは、ラット多能性幹細胞(PSC)を用いた異種間胚盤胞補完法により、マウス体内でラット細胞由来の腎臓形成に成功しました。胚盤胞補完法は、特定臓器が形成できない胚にES細胞(ESC)やiPS細胞(iPSC)などのPSCを注入し、PSCに由来する臓器を生体内で作製する技術です。本技術により作成された臓器は立体構造をもつことから、将来的には、移植用臓器の作製法として期待されています。しかし、腎臓は発生機構が極めて複雑であり、特にラット細胞をマウスへ導入する異種間の組み合わせ条件では、これまで腎臓形成についての報告がありませんでした。研究グループは今回、複数の腎形成不全モデルマウス(Sall1欠損、Ret欠損、Osr1欠損)を比較解析しました。その結果、Sall1欠損モデルでは、腎臓発生に必須な「ネフロン前駆細胞」[4]、Ret欠損モデルでは、腎臓形成に必須な「尿管芽」[5]、Osr1欠損モデルでは「ネフロン前駆細胞」と「尿管芽」の両方の腎臓発生領域が欠損していることを明らかにしました。
さらに、ラットES細胞をOsr1欠損マウス胚へ注入したところ、ラット細胞が腎臓発生領域へ高率に寄与した場合のみ、「ネフロン前駆細胞」と「尿管芽」由来組織がラット細胞により主に構成されることが明らかとなりました。本研究成果は、異種間での臓器形成には「臓器発生に必要な細胞が発生領域に適切量が存在する」ことが極めて重要であることを示すものです。

研究の意義と今後の展望

本研究は、胚盤胞補完法による腎臓形成の成立条件を明らかにし、異種腎臓を作製した重要な成果です(図)。今後は、より成熟した腎臓形成、血管系・間質系譜の完全再構築、長期生存可能な異種間キメラモデル、移植可能な腎組織の作製などを目指した研究へ発展することが期待されます。また、本研究で得られた知見は、今後、異種間臓器形成の発生学的適合性を理解する上で重要な知見となると考えられます。

異種間胚盤胞補完法による肝臓の作製

本研究は、主に、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金、基盤研究B、基盤研究C、挑戦的研究(萌芽)、ノバルティス科学振興財団、奈良先端科学技術財団、長寿医療研究開発費(24-31)の支援を受けて行いました。この研究成果は、Cell Pressが発行する国際学術誌Stem Cell Reports誌に2026年6月11日11:00 AM ET(米国東部時間)にオンライン公開され、Volume21,Issue7(2026年7月14日)に掲載されます。

論文情報

掲載誌

Stem Cell Reports (2026) DOI: https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2026.102957

著者

由利俊祐1,2*,#、磯谷綾子2#

  1. 国立長寿医療研究センター研究所 研究推進基盤センター 実験動物管理室(現所属)
  2. 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 器官発生工学研究室

*共筆頭著者 #責任著者

論文タイトル

Rat cell–derived kidney generation via interspecies blastocyst complementation in an Osr1-KO mouse model 

用語解説

  1. 胚盤胞補完法:臓器が欠損する初期胚(胚盤胞期胚)へ多能性幹細胞を注入し、代理母の子宮へ移植することで、多能性幹細胞が、本来欠損するはずの臓器を作り出す方法。動物の発生システムを利用し、動物体内で臓器を作製するため、三次元構造を持つ多能性幹細胞由来の臓器を作製することができる。
  2. 多能性幹細胞:胎盤以外の生体のどの組織にもなる能力(多能性)を持つ細胞のこと。胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)などがある。
  3. キメラ動物:1つの個体中に2つ以上の異なる遺伝型を持つ細胞が含まれる動物のこと。
  4. ネフロン前駆細胞:腎臓のネフロン(糸球体や尿細管)を形成する前駆細胞群。
  5. 尿管芽:集合管系を形成し、腎臓発生を誘導する重要な上皮系譜。

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お問い合わせ先

研究に関すること

国立長寿医療研究センター研究所 研究推進基盤センター 実験動物管理室
室長 由利俊祐
TEL : 0562-469-2311(代表)
E-mail : shunsukeyuri(at-mark)ncgg.go.jp
※(at-mark)を「@」に置き換えてください)

報道に関すること

国立長寿医療研究センター 総務部総務課 総務係長(広報担当)
〒474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地
TEL : 0562-46-2311(代表)
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