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ホーム > 研究所 > ニュース&トピックス > 新型コロナワクチン接種後の抗体価の推移についての調査結果がJournal of Infection誌に掲載されました
現在、わが国で進められている新型コロナワクチンは、mRNAワクチンとよばれる新しいタイプのワクチンです。国内では、すでに80%以上が2回目の接種を受けていますが、接種後の抗体価などの免疫機能がどのように推移するのかは十分に明らかになっていません。
当センターでは、昨年6月に実施した職員の定期健診で採取した血液に含まれる新型コロナウイルスのS(スパイク)抗原に対する抗体の量(抗体価)を測定し、年齢、性別、接種後の日数との関係を調査しました。図1に示すように、抗体価は年齢とともに低下する傾向にあり、年齢が高い層において女性の方が男性より高い値を示すことが分かりました。また、接種からの日数が経つにつれて抗体価が低下し、接種後3~4ヶ月での抗体価が、接種後1ヶ月以内の被験者に比べて約30%に低下していることが分かりました。
図1. 2回目接種後の抗体価
(左) 年齢と性別ごとの抗体価の関係(右)接種後の日数と抗体価の関係
研究グループは、昨年12月に行われた健康診断で採取した血液についても抗体価を測定しました。その結果、基準値より高いものの、接種後6~7ヶ月で抗体価が約10%にまで低下することが示されました(図2)。また、この時点では、いずれの年齢層においても性別による差は認められませんでした。
図2. 2回目接種の約6ヶ月後の抗体価
黒の点と実線が中央値、点線が基準値を示す。
私たちの体がウイルス感染に抵抗するしくみとして、抗体にくわえて細胞性免疫応答があります。細胞性免疫応答は、リンパ球の一種であるT細胞が、他の免疫細胞の活性を高めたり、感染してウイルスの増殖を助けている細胞を取り除いたりする作用です。研究グループは、抗体価が十分に得られなかった人を対象に、昨年10月に採血して細胞性免疫応答を測定しました。その結果、抗体価が低くても、十分に細胞性免疫応答が見られる人もいることが分かりました(図3)。
図3. 新型コロナウイルス抗原に対する細胞性免疫応答
2回目接種の5〜6ヶ月後に測定した。点線は基準値を示す。
当センターでは、今後とも職員における新型コロナウイルス抗体や細胞性免疫応答を定期的に検査して感染状況やウイルスに対する免疫機能を監視するとともに、感染対策の徹底や検査体制の強化により、センター内での感染拡大を防止するよう努めて参ります。
本研究成果は、2022年5月21日に、英国の科学誌「Journal of Infection」のオンライン速報版で公開されました。本研究は、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)による「ナショナルセンター職員における新型コロナウイルス感染症の実態と要因に関する多施設共同観察研究」ならびに長寿医療研究開発費「国立長寿医療研究センター職員における新型コロナウイルスワクチン接種後の細胞性免疫の推移に関する調査」の一環として行われました。
Immune responses to COVID-19 vaccine BNT162b2 in workers at a research institute in Japan: 6-month follow-up survey.
Journal of Infection