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ホーム > 研究所 > ニュース&トピックス > 共同研究推進部が参加した共同研究「細胞の分子スイッチが次々と活性化を呼び込む仕組みの解明」がPNAS誌に掲載されました
共同研究推進部の錦見昭彦部長と近藤遼平研究員が参加した共同研究グループ(代表:理化学研究所・白水美香子 チームディレクター)は、細胞の形態や運動を制御する分子スイッチCdc42を活性化するタンパク質DOCK11が、いったん活性化したCdc42を利用して自身を細胞膜上に安定化させ、さらにCdc42の活性化を促進する「正のフィードバック機構」の分子レベルの仕組みを明らかにしました。研究成果は、『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)』オンライン版(10月6日付)に掲載されました。
DOCK11は、当センターの研究員だった錦見部長が2005年に見出した分子で、先天性免疫異常症やB型肝炎ウイルス感染などに関与し、免疫細胞の運動やシグナル伝達に重要な役割を担うことが示されています。しかしながら、DOCK11の機能が細胞の中でどのように制御されているかは明らかにされていませんでした。
理化学研究所の研究チームは、全長DOCK11単独、DOCK11と不活性型Cdc42との複合体、さらに不活性型Cdc42と活性型Cdc42の両方が結合した複合体について、クライオ電子顕微鏡法を用いて立体構造解析を行いました。その結果、不活性型Cdc42(これから活性化されるCdc42)は触媒ドメインDHR2に結合する一方、活性型Cdc42(すでに活性化されたCdc42)はDHR2から離れたARMドメインに結合することを明らかにしました。また、人工脂質膜に結合した活性型Cdc42の存在によってDOCK11の構造が変化し、Cdc42活性化能が約2.5倍に高まることを示しました。
錦見部長と近藤研究員は、実際に細胞内で同様の制御がなされているか、培養細胞を用いて検証しました。野生型のDOCK11を細胞に発現させると細胞膜に均一に分布し、フィロポディアと呼ばれるアクチン繊維による突起状の構造の形成を促しました。一方、活性型Cdc42との結合を弱めた変異体は細胞膜に効率よく保持されず、フィロポディアも低下しました。これらの結果から、活性型Cdc42との結合により、DOCK11が細胞膜に保持され、さらなるCdc42の活性化を促すことが示されました(図1)。

図1. 活性型Cdc42との結合によるDOCK11の細胞膜への保持
上段:野生型DOCK11を細胞に導入すると細胞膜に均一に分布するが、活性型Cdc42との結合を弱めた変異体は細胞膜への集積が低下した。下段:野生型DOCK11を導入した細胞は、フィロポディア(アクチン繊維に富んだ突起状の構造)が多数形成されたが、変異体を導入した細胞ではほとんど形成されなかった。DOCK11を緑、アクチン繊維をマゼンタで示す。
本研究により、DOCK11によるCdc42活性制御の分子メカニズムがはじめて明らかになりました。この成果は、DOCK11が関与する免疫異常症やウイルス感染症の病態理解を深めるとともに、新たな治療標的の探索や創薬研究の基盤となることが期待されます。
Tamao Hisano, Takehiro Shinoda, Mutsuko Kukimoto-Niino, Kazushige Katsura, Ryohei Kondo, Yoshiko Ishizuka-Katsura, Yukako Miyata-Yabuki, Kazuharu Hanada, Reiko Nakagawa, Akihiko Nishikimi, Mikako Shirouzu, Structural basis for membrane-dependent positive feedback regulation of DOCK11 by activated Cdc42. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2026; 123 (41): e2607665123. doi: 10.1073/pnas.2607665123.
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