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ホーム > 研究所 > ニュース&トピックス > アルツハイマー型認知症の血液マーカーの発見
疾患ゲノム研究部 光森理紗研究員らの論文がClinical Epigenetics誌に掲載されました
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)は、もっとも一般的な認知症で、世界的に高齢者での罹患者数の多い神経変性疾患です。発症してからの年数が経過するにつれて症状が重くなるため、AD病態の解明や早期診断、治療法の開発などに使えるバイオマーカーの開発が望まれています。
本研究チームは、ADバイオマーカーとして血液中(血液細胞)のDNAメチル化に注目し、AD患者と健常人のメチル化レベルを比較してきました。そして本研究チームはこれまでに、AD患者において既知のAD関連遺伝子のDNAメチル化が有意に低下していることを見出していました。
そこで今回、ゲノムワイドでADに関連するメチル化異常を探索しました。利用したのは国立長寿医療研究センター病院を受診し、PET検査で脳内アミロイド陽性と判定されたAD患者12人と脳内アミロイド陰性認知機能健常高齢者12人の血中DNAです。ゲノムのメチル化レベルは次世代シーケンサーに基づくTruSeq Methyl Capture EPIC(イルミナ社)で正確に測定しました。その結果、ADに関連したDMR(Differentially Methylated Region)候補を106箇所見つけました。次に106箇所の DMRについて2つのコホート集団でバリデーション解析をし、最終的に5箇所のAD関連DMRを同定しました。さらに、AD診断モデルを構築するために機械学習を実施し、5箇所のうち2箇所のDMRとAPOEアレル型を組み合わせることで、診断精度の指標であるAUCが0.84という良好なAD診断モデルを構築することができました。
本研究成果は,2025年6月20日にエピゲノム分野の国際専門誌「Clinical Epigenetics」に掲載されました。
本研究は、長寿医療研究開発費、厚生労働省の研究助成を受けて行われました。
【論文情報】
表題:Identification of diagnostic DNA methylation markers in the blood of Japanese Alzheimer’s disease patients using methylation capture sequencing.
Clinical Epigenetics