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疾患ゲノム研究部 浅海裕也特任研究員らの論文がJournal of Human Genetics誌に掲載されました

超高齢化社会である本邦において、アルツハイマー病(Alzheimer's Disease:AD)に代表される認知症患者の増加は大きな社会問題となっています。近年、ADの主要な病態である脳内アミロイドβ(Aβ)を標的としたAD治療薬が一部の患者に対して臨床的に使用され始めたものの、残念ながらまだ認知機能を回復するまでには至っていません。本研究チームはこれまでに、AD患者のゲノム解析により、SHARPIN遺伝子上の日本人特異的なミスセンス変異rs572750141(SHARPIN G186R)が、AD発症のリスク因子であることを世界に先駆けて発見しています。その後、欧米の大規模コホート研究においても日本人には存在しない別のSHARPIN変異とADの関連が報告され、AD発症におけるSHARPINの役割が注目されています。SHARPINの変異がどのようにAD発症に関わるのかを明らかにすることで、新たなAD治療薬の開発につながることが期待されます。

これまでにチームが行なってきた研究では、培養細胞に変異型のSHARPINを外部から導入し発現させる、いわゆる強制発現系の実験によって機能解析を行ってきました。しかしながらこの方法には、(1)培養細胞が本来持っているSHARPIN遺伝子に対して過剰量のSHARPINが発現すること、(2)内因性の野生型SHARPINが存在することなどの問題もありました。そこで本研究では、培養細胞が本来持っているSHARPIN遺伝子に対して、ゲノム編集技術によって直接変異を導入(ノックイン)することで内因性のSHARPIN機能に対する変異の効果を解析しました。ゲノム編集による培養細胞(HEK293)へのノックインにはCRISPR/Cas9システムを用い、さらにシングルセルクローニングにより単一クローン由来の細胞株を得ました。続いて、得られたクローンについてインベーダー法とサンガーシークエンスによるスクリーニングを実施し、目的のSHARPIN G186R変異をホモ接合型で保有するクローンを得ることに成功しました。

このG186Rノックイン細胞を用い、まずは以前に強制発現系の実験で調べたSHARPINタンパク質の細胞内局在と、SHARPINが制御に関わるNF-κBの活性化能について解析を行いました。その結果、強制発現系では変異型SHARPINの細胞内局在が野生型と比べて大きく変化していたのに対し、G186Rノックイン細胞では変異型SHARPINが野生型同様に細胞質に均一に分布していました。また、NF-κB活性化能はG186Rノックインにより大幅に低下しました。さらに興味深いことに、変異型APPを定常的に発現するADモデル細胞を用いて培養液中へのAβ分泌量をELISA法により測定したところ、G186RノックインによりAβ分泌量の増加が観察されました。これは、SHARPINがAβ代謝に関わっていることを示唆する重要な知見であり、SHARPIN変異とAD発症の繋がりを明らかにする重要な手がかりとなり得るものです。

本研究成果は,2024年2月13日に日本人類遺伝学会の機関誌「Journal of Human Genetics」に掲載されました。

本研究は、長寿医療研究開発費、堀科学芸術振興財団、長寿科学振興財団、AMED認知症開発事業、文部科学省科学研究費補助金、中京長寿医療研究推進財団、厚生労働省の研究助成を受けて行われました。

論文情報

表題

CRISPR/Cas9-mediated knock-in cells of the late-onset Alzheimer’s disease-risk variant, SHARPIN G186R, reveal reduced NF-κB pathway and accelerated Aβ secretion

研究チーム

掲載誌

Journal of Human Genetics

論文URL

https://www.nature.com/articles/s10038-024-01224-xこのリンクは別ウィンドウで開きます

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