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メディカルゲノムセンターの浅海裕也研究員らの論文がJournal of Human Genetics誌に掲載されました

老年性アルツハイマー病(Late-onset Alzheimer’s disease: LOAD)は、最も多くみられる認知症であり、環境的要因、遺伝的要因が複雑に関わることで発症する多因子疾患です。研究チームは以前、SHARPIN遺伝子上に日本人特異的に存在するミスセンス変異rs572750141(NP_112236.3:p.Gly186Arg)が、統計学的に有意なLOADリスク因子であることを発見しています(オッズ比 = 6.1)。その後、欧米の大規模なゲノムコホート研究においても日本人には存在しない別のSHARPINバリアントがLOADリスク因子として見つかり、LOAD発症におけるSHARPINの役割に急速に注目が集まっています。

NCGGバイオバンクには、現在3,000例近くの全ゲノムシークエンス(Whole-genome sequencing: WGS)データが保存されています。本研究では、この中からLOAD患者180例と、認知症前駆段階である軽度認知障害184例のWGSデータを活用し、SHARPINの新たな機能的バリアント探索を実施しました。その結果、6種の候補バリアントが検出されました。続いて、NCGGバイオバンクが保有する2万例以上のジェノタイピングデータを活用し、LOAD患者5,043例と認知機能正常者11,984例における関連解析を実施しました。その結果、候補バリアントの1つrs77359862(NP_112236.3:p.Arg274Trp)が統計学的に有意なLOADリスク因子(オッズ比 = 1.43)であることを見出しました。さらに、このバリアントがコードするR274W変異型SHARPINタンパク質の機能解析を実施した結果、以前報告したG186R変異と同様に細胞内局在が大きく変わり、NF-κBを活性化する機能が低下することが明らかとなりました。

今回見つかったバリアントrs77359862(R274W)は、オッズ比やタンパク質機能への影響がrs572750141(G186R)に比べるとその効果が小さいものでした。しかしながら、rs572750141の保有者が極めて少ない(日本人では<0.05%)のに対し、rs77359862の保有者は1~4%と比較的多く、臨床的な重要性がより高いと考えられます。今後、SHARPINとLOADの遺伝的関連性やSHARPINの生理的役割に焦点を当てた研究をさらに進めることで、LOAD発症のメカニズムが解明される可能性があります。

本研究成果は,2021年11月5日に日本人類遺伝学会の機関誌「Journal of Human Genetics」に掲載されました。本研究は、長寿医療研究開発費、AMED、JSPS科研費、長寿科学振興財団、大幸財団、武田科学振興財団、厚生労働省の研究助成を受けて行われました。

論文情報

表題

A functional variant of SHARPIN confers increased risk of late-onset Alzheimer’s disease

研究チーム

掲載誌

Journal of Human Genetics

論文URL

https://www.nature.com/articles/s10038-021-00987-xこのリンクは別ウィンドウで開きます

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