本文へ移動

研究所

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

 

Menu

News & Topics

ホーム > 研究所 > ニュース&トピックス > 神経遺伝学研究部の榊原泰史研究員と飯島浩一部長らの論文が「Journal of Alzheimer’s Disease」に掲載されました

神経遺伝学研究部の榊原泰史研究員と飯島浩一部長らの論文が「Journal of Alzheimer’s Disease」に掲載されました

アルツハイマー病発症の過程で最初期に見られる神経変性のメカニズムを,モデルマウスの解析から明らかにしました。

2021年8月10日

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井 秀典)・研究所・認知症先進医療開発センター・神経遺伝学研究部の榊原 泰史 研究員,関谷 倫子 副部長,飯島 浩一 部長らは,理化学研究所脳神経科学研究センター・神経老化制御研究チーム(西道 隆臣 チームリーダー),名古屋市立大学大学院医学研究科・認知症科学分野(斉藤 貴志 教授)との共同研究により,アルツハイマー病発症の過程で,最初期に変性脱落することが知られる青斑核ノルアドレナリン神経細胞が,アミロイドβ病理の蓄積により傷害されるメカニズムの一端を明らかにしました。

 脳幹に位置する青斑核には,ノルアドレナリンという神経伝達物質を産生,放出する神経細胞が存在しています。これらノルアドレナリン神経細胞は脳の広い範囲に長い軸索を投射して,認知機能や睡眠覚醒の調節,ストレスの制御など,さまざまな脳機能に関係しています(図1・A)。アルツハイマー病では,青斑核神経細胞で最も早期にタウタンパク質の異常リン酸化や凝集が起こることや,神経細胞死が起こることが知られています(図1・B)。また,青斑核の神経細胞が脱落することが,認知機能の低下や脳病態の重篤化に繋がることも指摘されており,アルツハイマー病の発症を早期に抑止するための重要な治療標的と考えられています。

 アルツハイマー病の発症メカニズムを説明する「アミロイド仮説」では,アミロイドβ病理が原因となり,タウタンパク質のリン酸化や凝集体形成を引き起こし,神経細胞死を引き起こすと考えられています。しかし,大脳皮質に蓄積したアミロイドβ病理と,遠く離れた脳幹に存在する青斑核神経細胞で見られるタウ病理や神経細胞死の関係は明らかではありませんでした(図1・B)。

YS_figure1

図1.脳幹の青斑核ノルアドレナリン神経細胞が脳全体へ投射する様式(A)と,アルツハイマー病で見られる青斑核ノルアドレナリン神経細胞の病理(B)。

 今回,研究グループは,アルツハイマー病初期のアミロイドβ病理を模すマウス(Appノックインマウス,参考文献1,2)を用いて,アミロイドβ病理により青斑核の神経細胞が傷害される様子を観察しました。その結果,大脳皮質におけるアミロイドβ病理の増悪化に伴い,青斑核神経軸索が著しく変性することを見出しました(図2・A)。一方で,青斑核に存在する細胞体は脱落しておらず,またタウタンパク質のリン酸化や凝集,蓄積が起きていないことも見出しました(図2・B)。

YS_figure2

図2.アミロイドβ病理モデルマウスにおける青斑核神経変性のメカニズム。

 以上の結果から,アルツハイマー病発症過程の初期に,大脳皮質で蓄積したアミロイドβ病理が青斑核から大脳皮質への投射軸索を傷害することが示されました。また,これとは独立に,脳幹にある青斑核神経細胞体で加齢などに伴いタウタンパク質のリン酸化や凝集蓄積が起こることで,それらの相乗作用により青斑核の神経細胞が脱落する可能性が示されました(図2・C)。

 また今回の研究から,アルツハイマー病初期のアミロイドβ病理を模すモデルマウス脳内においても,青斑核神経細胞が傷害されていることが明らかとなりました。今後,そのメカニズムを解明していくことで,アルツハイマー病の発症を予防し,進行を抑制する先制治療法の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は,令和3年6月22日付けで科学誌Journal of Alzheimer’s Diseaseのonline版に掲載されました。なお,本研究は,国立長寿医療研究センター長寿医療研究開発費,科研費(日本学術振興会科学研究費助成事業),大幸財団,上原記念生命科学財団からの研究助成を受けて行われました。

原著論文情報

Yasufumi Sakakibara, Yu Hirota, Kyoko Ibaraki, Kimi Takei, Sachie Chikamatsu, Yoko Tsubokawa, Takashi Saito, Takaomi C. Saido, Michiko Sekiya, Koichi M. Iijima,

“Widespread Reduced Density of Noradrenergic Locus Coeruleus Axons in the App Knock-In Mouse Model of Amyloid-β Amyloidosis”.

Journal of Alzheimer’s Disease, in press, 2021. doi: 10.3233/JAD-210385.

参考文献

  1. Saito, T., et al., Nat Neurosci 17(5): 661-663, 2014. doi: 10.1038/nn.3697.
  2. Sakakibara, Y., et al., BMC Neurosci 20: 13, 2019. doi: 10.1186/s12868-019-0496-6.

【この研究に関する問い合わせ】

国立長寿医療研究センター研究所・認知症先進医療開発センター

神経遺伝学研究部   飯島 浩一

電話 0562(46)2311(内線6401/7505) E-mail:iijimakm@ncgg.go.jp

研究関連