すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~
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日本は世界的にも先例のない長寿社会を迎えています。1950年、日本人の平均寿命は男性58.0歳、女性61.5歳でした。その後、平均寿命は大きく延伸し、2019年には過去最高の男性80.2歳、女性86.6歳を記録しています。近い将来、人生100年の時代が到来するとも言われています。
このような長寿化に伴い、日本の高齢者の身体機能は向上しているのでしょうか? 今回は、NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)も参加している共同研究の成果をご紹介します。
「長寿コホートの総合的研究(ILSA-J:イルサ・ジェイ)」は、我が国で老化・老年病に関する研究を実施している代表的な研究プロジェクトが協力し合い、日本の高齢者の健康水準の推移やその要因を明らかにすることを目的としている多施設共同研究です。2021年6月現在で、NILS-LSAを含む15の研究プロジェクトが参加しています。
今回、ILSA-Jでは、各々の研究が2007年と2017年に取得した、高齢者の基本的な身体機能(身長、体重、歩行速度、握力、手段的日常生活動作等など)に関する代表値(平均値など)を収集し、統合解析を行いました。2007年には10,312名、2017年には7,010名の高齢者のデータが含まれます。
ここでは、「歩行速度」と「握力」に関する結果をご報告します。
図1は、2007年、2017年の「歩行速度」の年代別の推定値です。男女ともに、2007年と比較して2017年では、全ての年代で歩行速度が速くなっており、特に80代においてその差が顕著でした。
図1:2007年/2017年の年代別の推定値(歩行速度)
※ One-group meta-analysesにより算出した。コホート間の異質性が有意(Q-value: p<.05)の場合はランダム効果モデル、有意でない場合は固定効果モデルで推定した。
図2には、2007年、2017年の「握力」の年代別の推定値を示します。歩行速度と異なり60代では測定を行った時期による相違がありませんが、男性では75歳以上、女性では70歳以上において、2007年と比較して2017年の方が高値を示していました。
図2:2007年/2017年の年代別の推定値(握力)
※ One-group meta-analysesにより算出した。コホート間の異質性が有意(Q-value: p<.05)の場合はランダム効果モデル、有意でない場合は固定効果モデルで推定した。
高齢者の歩行速度は、生活機能と密接に関わることが分かっており、速く歩くことができる人ほど健康寿命(日常生活が制限されることなく、自立して過ごせる期間)が長いという調査結果があります。また、握力は全身の筋力の指標であり、活力のバロメーターとも言われています(トピックスNo.34「握力は活力のバロメーター」参照)。国内の複数の研究を統合して得られた今回の結果は、最近の10年間で、日本の高齢者の健康水準が向上している可能性を示しています。
身体も気持ちも若々しい高齢者を目指しましょう!
<コラム担当:西田 裕紀子>
*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています* Are Japanese Older Adults Rejuvenating? Changes in Health-Related Measures Among Older Community Dwellers in the Last Decade. |
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