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すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~

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フレイルに気をつけて

老化疫学研究部 Department of Epidemiology of Aging

年齢を重ねるごとに身体は言うことをきかなくなり、若いときと比べて衰えを感じることがあると思います。それは「年のせい」なのでしょうか。

フレイルとは、心身のさまざまな機能が加齢や病気などによって低下してしまった状態をさしますが、適切な対処により改善すると考えられています。フレイルに陥ると、日常の生活で生じる様々なストレスに対処することが難しくなり、生活能力が著しく低下し、死亡率が高まったりすることもあります。フレイルの早期発見やその予防は高齢者が健やかに過ごすためにはとても大切です。

NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)では第7次調査にご協力いただいた65歳以上の高齢者の方々を対象に、海外の研究にならって日本人向けの独自のフレイルのチェックを行いました(表1)。フレイルのチェックでは、心身の状況について5つの観点から確認しました。

表1:フレイル・チェックの5項目

フレイル・チェック
身体の萎縮 意図しない体重減少がある:過去2年間で5%以上
筋力低下 握力が男性26kg、女性18kg未満である
移動能力低下

普通歩行速度が毎秒1メートル未満である

(横断歩道を青信号のうちに渡れない)

低い活動性 余暇身体活動量が同年代の人と比べて少ない
疲労感 「何をするのにも面倒だ」または「仕事が手につかない」と感じることがある
フレイル 上記の3つ以上にあてはまる
フレイル予備軍

上記の1つから2つにあてはまる

その結果、これら5項目のうち、日常的に疲労感を感じる高齢者が多いことがわかりました(図1)。また1割ほどの高齢者では移動能力が低下した状態にあり、外出などに制約が生じている可能性がわかりました。閉じこもりや外出機会の減少は心身の状態を悪化させることが知られています。

図1:各フレイル・チェック項目の該当者割合(%)

身体萎縮、筋力低下、移動能力低下、低い活動性、疲労感にあてはまる人数の男女別の割合を示した図。

そしてこれらのフレイルの5つのチェック項目のうち、3つ以上にあてはまる場合をフレイル1つまたは2つにあてはまる場合をフレイル予備群とすると、男性の5.2%、女性の12.0%がフレイルに該当しました。また、男性の49.6%、女性の55.1%がフレイル予備群であることがわかりました。男女ともに、フレイルの有症率は年齢が上がるほど高くなる傾向にあることもわかりました。フレイル、フレイル予備群のどちらも女性で多い点が特徴です。日本人の場合、男性よりも女性の方が長生きであることがその一因と考えられます。そのため女性では、より高齢になるほどフレイルに対するケアが必要とも考えられます。

フレイルは、健康と介護が必要な状態(寝たきりなど)との中間にあたります。図2に示すように、フレイルになったとしても、運動などによって心身の状態の改善することが十分に可能であることが、近年の研究から明らかになってきています。

図2:フレイルの概念図

高齢になるにつれて、予備能力の高さによりフレイル状態と健康な状態、身体機能障害とフレイルの状態を行き来することを表したイラスト。

ふと心身の衰えを感じた時は、ご自身の生活を改めて見直す良い機会といえるかもしれません。

フレイルに気をつけ、日々の運動などに努め心身の健康維持を心がけましょう。

 <コラム担当:幸 篤武>

*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*
Yuki A, Otsuka R, Tange C, Nishita Y, Tomida M, Ando F, Shimokata H.
Epidemiology of frailty in elderly Japanese
The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine. (2016) Vol. 5 No. 4 pp.301-307.

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