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東アジア人特異的な新規アルツハイマー病発症リスク遺伝子変異を発見

2026年4月20日

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

研究成果のポイント

概要

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(荒井秀典理事長)研究所のメディカルゲノムセンターの尾崎浩一センター長、バイオインフォマティクス研究部の重水大智部長らの研究グループは、日本人約2,000人の全ゲノムシークエンスデータを解析(※1)し、孤発性アルツハイマー病(Late-onset Alzheimer’s disease: LOAD)(※2)の発症リスクに関連する新規遺伝子変異をINPP5J遺伝子内に同定しました。本変異は東アジア人に特異的に認められる稀な変異であり、機能解析の結果、INPP5Jタンパク質の酵素活性を低下させることが明らかになりました。これらの結果から、本変異によるINPP5Jの機能低下がLOADの発症に関与している可能性が示唆されました。今後、本変異の機能的影響をさらに詳細に解析することで、東アジア人におけるLOADの発症機序の解明や、新たな予防・治療戦略の開発につながることが期待されます。

研究の背景

 LOADは高齢者にもっとも多く見られる認知症であり、遺伝要因と環境要因が複合的に関与して発症することが知られています。これまでの研究により、アポリポ蛋白質E(APOE)のε4アレル(APOE4)がもっとも強い遺伝的リスク因子であることが明らかになっています。しかし、APOE4を保有していない場合でもLOADを発症することから、未同定の遺伝要因が存在することが示唆されています。さらに、LOADの遺伝的背景には、人種や地域集団によって異なることが知られており、特に日本人を含む東アジア人集団を対象とした遺伝学的解析の重要性が指摘されています。

研究成果の内容

 研究グループは、国立長寿医療研究センターバイオバンクに登録された日本人のLOAD患者と認知機能が正常な高齢者を対象に、全ゲノムシークエンス解析を実施し、LOADに関連する遺伝子要因の探索を行いました。その結果、LOADの発症リスクに関連する新規遺伝子としてINPP5J (Inositol Polyphosphate-5-Phosphatase J)を同定しました。

 INPP5Jには、以下の2つの稀なミスセンス変異(※3)が存在することが明らかになりました。

 これらの変異は、日本を含む東アジアに特異的に認められる変異であることが明らかとなりました(表1)。

表1. INPP5Jに存在する2つの稀な変異の異なる地域集団間での頻度比較

変異

日本人

LOAD

日本人

健常者

日本人

全員

東アジア人 南アジア人 アフリカ人 ヨーロッパ人

rs769490815

0.0075

0.00031

0.0013

2.30×10–4

9.34×10–5

2.94×10–5

8.94×10–7

rs1921732305

0.0062

0.00094

0.0018

3.60×10–4

0.00

0.00

0.00

INPP5Jタンパク質のフォスファターゼ活性測定

研究成果の意義

 今回の解析により、日本人のLOADの発症に関連する新規遺伝子INPP5Jが同定されました。本成果は、日本人を含む東アジア人集団におけるLOADの発症機構の理解を深めるだけでなく、将来的には発症リスク予測の精度向上や、新たな予防・治療法の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、国際専門誌「Translational Psychiatry」に2026年4月8日付で掲載されました。

 なお、本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)長寿科学研究開発事業、長寿医療研究開発費、厚生労働科学研究費補助金、日本学術振興会科学研究費助成事業の助成を受けて実施されました。

用語解説

※1全ゲノムシークエンス解析

次世代型DNAシークエンサーを用い、約30億塩基あるヒトゲノム配列の全領域を網羅的かつ高速に解読する手法です。数万人に一人しか保有していないような低頻度な遺伝子変異であっても検出することが可能です。

※2孤発性アルツハイマー病

全アルツハイマー病の約90%を占める、明確な家族歴を伴わないもっとも一般的なタイプであり、主に65歳以上で発症する加齢関連疾患です。その発症には、糖尿病や高血圧、運動不足などの生活習慣因子に加え、APOE ε4 などの遺伝的リスク因子が関与すると考えられており、複数の遺伝要因と環境要因が複雑に作用して発症します。

※3ミスセンス変異

DNAの塩基配列の1か所が別の塩基に置き換わる一塩基置換により、コードされるアミノ酸が別のアミノ酸に変化する遺伝子変異です。この変化により異常なタンパク質が産生され、タンパク質の安定性低下や機能喪失を引き起こし、疾患の原因となる場合があります。

研究グループ

国立長寿医療研究センター 研究所 メディカルゲノムセンター

国立長寿医療研究センター 研究所

論文情報

リンク

お問い合わせ先

研究に関すること

国立長寿医療研究センター 研究所 メディカルゲノムセンター
バイオインフォマティクス研究部 重水大智

TEL : 0562-46-2311(内線4153)
E-mail : daichi(at-mark)ncgg.go.jp

※(at-mark)を「@」に置き換えてください)

報道に関すること

国立長寿医療研究センター 総務部総務課 総務係長(広報担当)

TEL : 0562-46-2311(代表)
E-mail : webadmin(at-mark)ncgg.go.jp

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