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血液検査で,アルツハイマー病に合併する脳血管障害の程度などが判定可能に

~ 血液中の胎盤成長因子(PlGF)が脳の白質病変(白質高信号)と関連 ~

2026年1月6日

国立長寿医療研究センター

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典)診断イノベーション研究部(部長:春日健作)と新潟大学脳研究所(教授:池内健)などの研究グループは、アルツハイマー病の患者さんに見られる脳の白質の傷(医学的には「白質高信号」(#1)と呼ばれます)と、血液中の「胎盤増殖因子(Placental Growth Factor:PlGF,ピーエルジーエフ)(#2)」という物質との関連を明らかにしました。

研究の背景

認知症の原因の約3分の2を占めるアルツハイマー病は、脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積することで進行しますが、約20から40%の患者さんでは、脳の血管障害も合併していることが知られています。この血管障害は、認知機能を悪化させるだけでなく、2023年以降に承認された抗アミロイドβ抗体薬の効果にも影響を与える可能性があります。
このような観点から、脳の血管障害を早期に把握することが重要ですが、これまで血管障害の程度を示す「血液で測れる目印(バイオマーカー)」は存在しておらず、MRI検査に頼るしかありませんでした。MRIは、評価者によるばらつきが大きいため、客観的な評価が難しいという課題がありました。

研究内容

今回の研究では、新潟大学とその関連病院のもの忘れ外来を受診した242人の患者さんを対象に、MRI検査・脳脊髄液検査・血液検査を実施しました。
具体的には、血液中のPlGFの値と、脳の白質の傷(白質病変)の程度との関連を調べました。
PlGFは血管の成長や修復に関わるタンパク質で、脳の血管に慢性的な障害があると血液中で増加すると考えられています。
その結果、アルツハイマー病と診断された患者さんでは、脳の白質の傷(白質病変)が大きいほどPlGFの値が高いことが分かりました。
この関連性は、下図のように年齢・性別・認知機能の違いを考慮しても確認されました。

血液中のPIGFの濃度

研究の意義と今後の展望

この成果は、血液検査という簡単な方法で、脳の血管障害の程度を把握できる可能性を示しています。
患者さんにとって、次のようなメリットが期待されます:

今後は、患者さんを長期間追跡する研究や、他の血液バイオマーカーと組み合わせて将来の認知機能の変化を予測する研究を進めることで、臨床現場で応用できるようになることを目指します。

本研究は、厚生労働科学研究 認知症政策研究事業、科研費(日本学術振興会科学研究費助成事業)、国立長寿医療研究センター長寿医療研究開発費からの研究助成を受けて行われました。

用語解説

#1:白質高信号(白質病変):
脳は、神経細胞が集まる「灰白質」と神経細胞同士をつなぐ線維からなる「白質」に大きく分けられる。MRI検査では、白質は通常黒っぽく映るが、ダメージを受けるとその部分が白く映るようになり、これを「白質高信号」と呼ぶ。「白質高信号」は、脳の血管障害などによって起こりやすく、その広がりは、認知機能低下と関連することが知られている。

#2:胎盤増殖因子(PlGF):
 血管の成長や修復に関わるタンパク質。
Placental Growth Factorの略で、「ピーエルジーエフ」と発音する。
もともとは胎盤で発見されたが、脳の血管障害がある場合にも血液中で増加すると考えられている。

論文情報

本研究成果は、令和7年9月26日付けで国際科学誌Biomoleculesにonlineで掲載されました。
論文(doi:10.3390/biom15101367)へのリンクこのリンクは別ウィンドウで開きます
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【リリースの内容に関するお問い合わせ】

この研究に関すること

診断イノベーション研究部 部長 春日健作

電話 0562(46)2311(代表) E-mail ken39[at]ncgg.go.jp

報道に関すること

国立長寿医療研究センター総務部総務課 総務係長(広報担当)

〒474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地

電話 0562(46)2311(代表) E-mail webadmin[at]ncgg.go.jp

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