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ウェアラブルデバイスによって判定されたフレイルが、入院・死亡リスクの予測に役立つ可能性 ― UK Biobank studyの結果から―

2025年9月2日

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典。以下、国立長寿医療研究センター)のフレイル研究部およびNeuroscience Research Australia(オーストラリア)のFalls, Balance and Injury Research Centerの研究グループは、UK Biobank studyに参加した約1万名のデータを用いて、手首装着型ウェアラブルデバイスによって判定されたフレイルが、中高年の入院・死亡リスクの予測に役立つ可能性を明らかにしました(図1)。

ウェアラブルデバイスによって判定されたフレイルは入院と死亡を予測できるか?既存のフレイル評価法に劣らない精度で予測可能

研究の概要と調査結果

私たちの身体は、年をとるにつれて、筋力や歩行速度の低下、疲れやすさなど、「フレイル」の症状が現れてきます。フレイルは要介護状態に移行する危険性が高い状態ですが、対策を講じればより長く自立した生活を送ることができるともいわれているため、その兆候をなるべく早期に捉えることが重要です。
現在、フレイルはアンケートや体力測定の結果に基づいて判定されるのが一般的ですが、近年では、スマートウォッチなど、ウェアラブルデバイスに内蔵されたセンシング技術を活用して、より早期にかつ日常的にフレイルを判定する技術が注目されています。私たちは、これまでに、手首装着型ウェアラブルデバイスから得られた7日間24時間の加速度データを用いて様々な歩行パラメータを生成し、4つの歩行パラメータ(歩数、最大歩行速度、歩行の安定性、歩行中の腕の動作)からフレイルを判定できることを明らかにしました(Osuka et al., J Am Med Dir Assoc, 2024)。
今回の研究は、イギリスの大規模観察研究「UK Biobank study」に参加した約1万名の中高年を対象に、手首装着型ウェアラブルデバイスによって判定されたフレイルが将来の入院や死亡のリスクを予測できるかを調べました。そして、その予測力が従来のフレイル評価法と比較して劣っていないかどうかについても調べました。(注1)
解析の結果、ウェアラブルデバイスによってフレイルと判定された人は、そうでない人と比較して、入院や死亡のリスクが高いことが明らかになりました。また、これらのイベントに対する予測力は、従来のフレイル評価法と比較しても劣らないことがわかりました。
以上の結果から、日常的に使用されるスマートウォッチなどを活用すれば、自宅にいながらでも自身のフレイルに関係する情報を連続してモニタリングし、早期に発見できる可能性が示されました。今後、こうした技術が広く活用され、標準的な評価手法が確立されれば、早期のフレイル発見や介入によって、高齢者の健康寿命の延伸にもつながると期待されます。
なお、本研究はJSPS科研費 JP22KK0269,JP21H03283の助成を受けて実施されました。

論文タイトル

Frailty assessed by a wrist-worn device can predict hospitalisation and mortality in middle-aged and older adults: a UK Biobank study(邦題:手首装着型ウェアラブルデバイスで判定されたフレイルは、中高年者の入院と死亡を予測できる:英国バイオバンク研究)

著者

Yosuke Osuka, Lloyd L Y Chan, Matthew Brodie, Yoshiro Okubo, Stephen R Lord

雑誌名

Age and Ageing

注1:今回の研究では、「修正版Cardiovascular Health Study基準」を用いてフレイルを評価しました。具体的には、体重減少、低筋力、疲労感、低歩行速度、低活動の症状の内、3つ以上該当した場合をフレイルと判定しました。

リリースの内容に関するお問い合わせ

この研究に関すること

老年学・社会科学研究センター フレイル研究部 大須賀洋祐
電話 0562(46)2311(代表) E-mail:osuka@ncgg.go.jp

報道に関すること

国立長寿医療研究センター総務部総務課 総務係長(広報担当)
474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地
電話 0562(46)2311(代表) E-mail :webadmin@ncgg.go.jp

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