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ホーム > 研究所 > 研究実績 > 老年学・社会科学研究センターの研究グループは、運転寿命延伸プロジェクト・コンソーシアム、全日本指定自動車教習所協会連合会の協力を得て全国の指定教習所を対象に高齢者向けの運転講習の実施状況に関するアンケート調査を実施しました
2025年7月4日
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典。以下 国立長寿医療研究センター)老年学・社会科学研究センター センター長 島田裕之(運転寿命延伸プロジェクト・コンソーシアム 会長ら)の研究グループは、運転寿命延伸プロジェクト・コンソーシアム、全日本指定自動車教習所協会連合会の協力を得て全国の指定教習所を対象に高齢者向けの運転講習の実施状況に関するアンケート調査を実施しました。その結果、回答があった教習所のうち約75%の教習所が高齢者を対象とした講習が必要と回答しています。また、教習所が高齢者向けの講習を実施できない理由として「マンパワー不足」や「講習を実施する時間がない」という意見が挙げられました。これらの結果から、高齢者の安全な自動車運転のニーズを満たすためには、法定の高齢者講習に加えて、高齢者向けの講習を実施できる体制を整えるための取り組みについて考えていく必要があります。
高齢ドライバーの数は近年著しく増加しています。加齢によって生じる視覚、運動、認知機能の低下は運転技能の低下を招き、事故の危険性を増加させます。そのため、安全運転のための取り組みがますます重要となっています。しかし、高齢者の自動車事故抑制のための対応策は多岐にわたり、国内でどのような方法がどの程度実施されているのかについて十分に明らかになっていません。そこで、運転寿命延伸プロジェクト・コンソーシアムでは、全国の指定自動車教習所を対象として、高齢者向けの講習の実施状況に関する実態調査をアンケートにて実施しました。
高齢者講習;道路交通法で義務化されている70歳以上の方が運転免許を更新する際に受講しなければならない講習です。本調査では高齢者講習以外で、教習所が独自に行っている高齢者向けの講習の実施状況を聴取しました。
本調査では、全日本指定自動車教習所協会連合会の指定自動車教習所1231件のうち、798件(64.8%)の教習所から回答が得られました。アンケート結果から、高齢者の運転技能の維持、向上に向けた取り組みとして、教習所独自の講習を実施している教習所は、回答があったもののうち151件(18.9%)でした(図1、左)。また、高齢者向けの講習を受講している年齢層は70代の者が最も多い割合を占め(72.8%)、次いで65~69歳でした(23.2%)(図1、右)。
図1 全国の指定教習所における高齢者向けの講習の実施状況
教習所独自で実施している講習内容としては、教習所内での実車講習144件が最も多く、座学120件、路上での実車講習が46件でした。路上での実車講習の際は、運転指導に加え、ドライブレコーダー、運転技能自動評価システム、GPS機能などの追加オプションを設けている教習所もありました。講習の指導内容は、基本的な運転操作、アクセル・ブレーキの踏み間違い防止、信号・標識・標示等に従った運転、交差点の通行等が主に実施されていました(図2)。
図2 高齢者向け講習での指導内容
また、回答があった教習所のうち599件(75.1%)の教習所が高齢者を対象とした講習が必要と回答しています(図3、左)。本調査では、教習所が高齢者向けの講習を実施できない理由に関する回答も聴取しており、その回答として「マンパワー不足」が421件と最も多く、「講習を実施する時間がない」が382件、「高齢者からのニーズが少ない」が329件、「収益性」が235件という意見が挙げられていました(図3、右)。したがって、自動車教習所で高齢者向けの講習を行うためには、多くの教習所が前述した課題を抱えていることが明らかとなりました。
図3 高齢者向け講習での指導内容
これらの結果から、高齢者の安全な自動車運転のニーズを満たすためには、教習所の人的、時間的コストの改善を目指し、法定の高齢者講習に加えて、高齢者向けの講習を実施できる体制を整えるための取り組みについて考えていく必要があります。
国立長寿医療研究センターは運転寿命延伸プロジェクト・コンソーシアムとともに、今後も高齢ドライバーの安全運転の継続のために、高齢者の運転支援に関する取り組みを進めてまいります。
国立長寿医療研究センター研究所 老年学・社会科学研究センター
センター長 島田裕之
電話 0562-46-2311(代表)
E-mail:driving_consortium[at]ncgg.go.jp
※([at]を「@」に置き換えてください)
国立長寿医療研究センター総務部総務課 総務係長(広報担当)
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