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アルツハイマー病研究部の飯島浩一部長が共著のアルツハイマー病関連遺伝子変異とタウタンパク質蓄積メカニズムに関する論文がThe Journal of Biological Chemistry誌に掲載されました

2020年11月02日

国立長寿医療研究センター・認知症先進医療開発センター・アルツハイマー病研究部の飯島浩一部長は、東京都立大学・大学院理学研究科・生命科学専攻の安藤香奈絵准教授らとともに、アルツハイマー病における認知機能低下の原因となる、タウタンパク質の蓄積と神経細胞死のメカニズムを明らかにしました。

高齢化社会を迎え、老年性認知症の発症率は年々増加しており、予防・治療法の開発が急がれています。アルツハイマー病では、脳の機能を担っている神経細胞が次第に死んでいくため、記憶障害や生活機能障害が引き起こされます。これまでの研究から、アルツハイマー病の患者の脳には、タウと呼ばれるタンパク質が凝集して神経細胞の中に蓄積し、それによって神経細胞死が起こることがわかっています。そのため、脳内でタウが蓄積するメカニズムを解明することは、アルツハイマー病の発症や進行を遅延させる治療法の開発につながると考えられます。

研究グループは、1)アルツハイマー病の患者の脳内でMARK4注1)の発現量が上昇していること、2)MARK4の活性がタウの病理学的な変化と共局在していること、さらに3)近年のゲノム解析により、MARK4の遺伝子変異注2)がアルツハイマー病の発症リスクと相関すること、という3点の理由から、MARK4という酵素に注目して、アルツハイマー病でタウが蓄積するメカニズムの解明に取り組んできました。

これまでに研究グループは、MARK4がタウをリン酸化注3)することで、タウが神経細胞の中に蓄積しやすくなることを報告してきました。本研究では、疾患変異型MARK4注4)が、アルツハイマー病の発症リスクを上げる理由の解明に取り組みました。その結果、疾患変異型MARK4は、タウをリン酸化することに加えて、タウの凝集を促進させる新たな機能を獲得し、より重篤なタウの蓄積と神経細胞死を引き起こすことを見いだしました。

本研究から、MARK4の遺伝子変異がアルツハイマー病の発症リスクを上げるメカニズムが明らかになりました。今回の研究は、疾患変異型MARK4に関するものですが、変異のないMARK4も、老化に伴い異常な性質を獲得してしまう可能性があります。アルツハイマー病の患者数は年々増える一方で、その治療法は未だ確立されていません。今後、MARK4を標的とした、アルツハイマー病の治療薬開発への応用が期待されます。

本研究成果は、10月6日(米国時間10月5日)に米国科学誌「The Journal of Biological Chemistry」のオンライン版に掲載されました。また東京都立大学からは、10月27日付けでプレスリリースされました。

タイトル

“Microtubule Affinity Regulating Kinase 4 with an Alzheimer's disease-related mutation promotes tau accumulation and exacerbates neurodegeneration”

著者名

 Toshiya Oba1, Taro Saito1, Akiko Asada1, Sawako Shimizu1, Koichi M. Iijima2,3, Kanae Ando1

所属 

  1. 東京都立大学・大学院理学研究科・生命科学専攻
  2. 国立長寿医療研究センター・認知症先進医療開発センター・アルツハイマー病研究部
  3. 名古屋市立大学薬学部・大学院薬学研究科・加齢病態制御学分野

なお本研究は、日本学術振興会の援助を受け行われました。

用語解説