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脳機能画像診断開発部の中村室長を代表とするMULNIAD studyグループの研究成果が、英国専門誌 BRAIN のonline版に掲載されました

2018年03月08日

アルツハイマー病は、認知症の症状が発症する20-30年も前から、原因物質と考えられている脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積が始まることが知られており、この発症前の期間に生じる脳の機能変化をとらえることのできるマーカーの開発は、アルツハイマー病の早期診断や病態進行の理解を深める上で非常に重要なテーマです。研究グループは、38名の認知機能が正常な高齢者(CN)および28名の軽度認知機能障害(MCI)の方を対象に脳磁図を用いて安静時自発脳波の計測を行い、脳の領域毎のパワースペクトラムを分析し、PETで評価した脳内Aβ蓄積状態や脳局所ブドウ糖代謝、MRIで評価した脳の皮質ボリューム等との関係を詳細に検討しました。その結果、1) 内側前頭前野のアルファ波のパワーは同じ部位のAβ蓄積を反映して増大し、特にCN群においてその関連性が強いこと、2) 同部位のデルタ波のパワーは脳内Aβ蓄積が陽性のCNおよびMCI群において症状の進行に伴って増大し、そのパワー値は嗅内皮質のボリュームや後部帯状回/楔前部のブドウ糖代謝と有意な負の相関があること、3) 脳の全般的なシータ波の増大は海馬の萎縮と有意な相関があり、これはAβが陰性の群で見られるため、アルツハイマー病に特異的な変化ではないと考えられる、等の、これまであまり知られていなかった所見が明らかとなりました。脳波や脳磁図検査は、脳の神経細胞の電気活動を直接とらえることができる検査のため、PETやMRIとは異なった角度からアルツハイマー病の病態をとらえることができます。今回の結果は、脳磁図が認知症発症前段階のアルツハイマー病の病態を反映するマーカーとして有用であることを示唆する結果であり、今後の認知症研究に貢献することが期待されます。

【原著論文情報】
Nakamura A et al., Electromagnetic signatures of the preclinical and prodromal stages of Alzheimer’s disease. Brain, published online: 07 March 2018.