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臨床ゲノム解析推進部の尾崎浩一部長が共著の虚血性心疾患の遺伝的要因解明に関する論文がNature Genetics誌に掲載されました

2020年10月09日

大規模ゲノム解析による虚血性心疾患の遺伝的要因の解明

虚血性心疾患は心臓を栄養する冠状動脈が狭窄、閉塞することにより心筋にダメージを与える疾患で高齢者に多く発症します。虚血性心疾患の発症における遺伝的要因の占める割合は50%近くであることが知られており、すでに欧米では大規模な解析により遺伝的要因の解明が進められ関連遺伝子をターゲットとした創薬や疾患関連座位群のリスクをスコア化(ポリジェニックリスクスコア;PRS)することによる高精度な発症の予測が可能になることが示されています。しかしながら、これまでの大部分の解析結果は欧米人によるものであり、これらがアジア人、日本人においても当てはまるかどうかということは不明でした。今回、共同研究グループは日本人約4,400人の全ゲノム配列を基盤として日本人約17万人の虚血性心疾患のゲノムワイド関連解析(GWAS)を施行し8ヶ所の新規疾患関連座位を含む48疾患関連座位を同定しました。さらに、この日本人約17万人のGWASデータと欧米人約48万人のGWASデータを統合解析し35ヶ所の新規領域を含む175疾患関連座位を同定しました。また、これらのGWASデータを用いてPRSを構築したところ欧米人データによるPRSで日本人の発症予測を行うよりも日本人GWASデータを用いたPRSの方が日本人における発症予測精度が高くなることは予想通りでしたが、さらに欧米人と日本人GWASデータを統合して構築したPRSの方がより高精度であることが判明し、今後、疾患の正確な発症予測により有用であることを示しました。これらの知見は虚血性心疾患の病態の理解のみならず、今後の発症予防、治療法の発見につながる成果だと考えられます。