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アルツハイマー病に関係した神経細胞内の特異な輸送系を明らかにしました(研究結果は国際神経化学会誌に掲載され、表紙を飾りました)

2016年05月26日

論文タイトル

Retromer and Rab2-dependent trafficking mediate PS1 degradation by proteasomes in endocytic disturbance.

Presenilin-1はレトロマー複合体と小胞体関連分解の働きにより、エンドソームでの局在レベルが一定に保たれる。

​論文の説明:

アルツハイマー病(AD)の原因蛋白と考えられているβアミロイド蛋白(Aβ)は、神経細胞内のエンドソーム(注1)においてアミロイド前駆体蛋白(APP)から切断産生される。初期AD患者の神経細胞ではエンドソームの肥大化やライソゾームの異所局在など、エンドサイトーシスの障害を示唆する病変が多数確認され、肥大化したエンドソームにはAPPやAPP切断酵素の1つであるβセクレターゼ(BACE1)の蓄積が認められることから、近年ではエンドサイトーシス障害とAβ蓄積との関係性に大きな注目が集まっている。

家族性ADの原因因子であるPresenilin-1(PS1)はAβ産生に必須のγセクレターゼを構成する膜蛋白質でもあるが、これまでエンドサイトーシスとの関係性については不明な部分が多かった。そこで、培養細胞に人為的にエンドサイトーシス障害を誘発してPS1の細胞内局在性や蛋白発現レベルを検索したところ、PS1はAPPやBACE1のようにエンドソームに蓄積せず、蛋白発現レベルもほぼ一定に保たれることが明らかとなった。そこで、エンドソームの各輸送経路を個別に阻害した状態で検索を行ったところ、エンドサイトーシスに障害が生じているときに限り、PS1はレトロマー複合体(注2)の働きによってエンドソームからゴルジ体へ回収され、その後さらに小胞体へ輸送されてプロテアソームによる分解を受けることが明らかとなった。これらの結果から、神経細胞にはAβの産生を促進させないよう、エンドソームに局在するPS1の蛋白レベルを一定に保つ機構が存在することが示唆された(J Neurochem. 2016 May;137(4):647-58にて発表)。

注1:エンドサイトーシスという、細胞膜を起点とする一連の膜輸送系において膜蛋白質等の輸送に関わる細胞内小胞のこと。
注2:VPS35をコアとする機能性蛋白質複合体で、エンドソームの膜蛋白質をトランスゴルジネットワークへと輸送する際に働く。

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