本文へ移動

病院

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

 

外来診療・時間外診療・救急外来 電話:0562-46-2311

ホーム > 病院 > 受診のご案内 > 診療科のご紹介 > 光干渉断層画像診断機器(Optical Coherence Tomography)

光干渉断層画像診断機器(Optical Coherence Tomography)

患者さんに優しい機器、
光干渉断層画像診断機器(Optical Coherence Tomography)
を用いた新時代の歯科診断システム

現在、日常医療の現場で、頻繁に使われている画像診断機器は、レントゲン写真検査を始め、CT、 MRI、 PET、超音波検査などがあり、誰でも一度はこれらの画像診断機器による検査を受けたことがあると思います。近年、これらの画像診断機器に加えて新たに、光干渉断層画像診断装置(Optical Coherence Tomography:OCT)と呼ばれる機器が登場しました。この装置は生体にやさしい近赤外線を使用しており、組織表面の2~3ミリメートルと浅い部分の鮮明な断層画像撮影が可能な装置であります。

特徴1→非侵襲性(厳密に被曝がありません。)

この装置の一番の魅力的な特徴は「近赤外線」を使っているという点であります。レントゲン線(電磁放射線)のような被曝をすることなく画像検査が行える点にあります。

特徴2→高解像度(CT、MRI、従来の医療画像診断機器の10倍以上の分解能)

さらに、解像度が高い鮮明な画像が得られる点は、他の画像検査法を比較しても、トップクラスに位置しており、生体組織の精密な構造を知ることができます。

特徴3→即時性と同時性:リアルタイム描写(現像作業などが不要であります)

また検査画像を撮影してすぐその場で見ることができるので、治療中の診断やインフォームド・コンセントに利用できます。また、検査に時間がかからない点なども魅力として挙げることができます。
これらの様に、OCTは、現在、そしてこれからの医療において、最も世界で求められている非侵襲、高解像度(早期発見)、同時性、簡便性、客観性などと言った条件・特徴を備えた新時代の画像診断法と言えます。

高い汎用性:応用が期待される様々な臨床応用分野

OCTはすでに、眼科領域で眼底検査法として臨床に応用されており、OCTの活躍の場が急激に増え続けています。そして今後、汎用的な医療用画像検査機器として、眼科領域以外でも、例えば心臓血管系、皮膚、消化器、呼吸器疾患、そして歯科領域でも研究が行われています。国立長寿医療センター 先端医療部 口腔機能再建科では、OCTの臨床応用をするために歯科用OCT画像診断機器の開発を行い、日本発、世界初の歯科用OCT画像診断機器の製品化を目指しています。

国立長寿医療センター 先端医療部 口腔機能再建科のこれまでのOCT研究

これまでの当科での研究・検討結果では、う蝕や歯周病の診断、義歯の内部構造の非破壊検査、口腔軟組織疾患診断等に有効であることが解ってきました。OCTを日本発、世界初の新たな歯科用画像診断機器としての製品化へ向けて、歯科用 OCT画像診断機器の開発と臨床応用を行っております。ここでは、国立長寿医療センター口腔機能再建科での歯科用OCT 機器開発と歯科疾患診断への応用について解説したいと思います。
 OCT の最大の長所に非侵襲な検査であることが挙げられます。OCT に用いられている近赤外光は物質を透過しやすい性質を持っている電磁波で、生体に無害であることが大きな特徴です。日本人の発癌の3.2%は医療診断用放射線によるとの報告もあり、CTなど被曝量の多い検査は、生死に関わりの少ない歯科臨床への応用は慎重に行う必要があります。次の長所としては、他の医療用画像技術に比べて高い解像度を有するという点が挙げられます。空間分解能が約10μm と解像度が高いため、これまでの画像診断機器では不可能であった生体の微細構造や病変の検出の可能性が高いと考えています。CT やMRI が空間分解能300~600 μm 程度であることを考えると、OCT の空間分解能は飛び抜けており、高精細画像を得ることができます。将来は、OCT 技術の発展とともに組織生検などの侵襲的な検査にかわる、癌検診への応用も期待されています。さらに、OCT は装置自体が単純でCT やMRI のような大きな設備、放射線遮蔽室を準備する必要がなく、診療用チェアのすぐそばで撮影が可能であり、その場で画像として描出されるので、患者への説明やインフォームド・コンセントにも活用でき、安価に歯科医療の現場に提供できる可能性があります。短所としては、OCT は画像により取得できる情報が軟組織では表層から1~2ミリメートル程度(歯牙のような透過性の良い組織では2~4ミリメートル)と、ごく浅い部分しか観察できないことにありますが、歯科疾患は他の疾患と比べて比較的表面に出現するため、有効な手法と言えます。

国立長寿医療センター口腔機能再建科では,santec(株)との産官共同研究にて、最新式であるフーリエドメイン光干渉断層画像診断装置(FD-OCT) の一種である波長走査型OCT(SS-OCT)を用いた歯科用OCT機器 を共同開発致しました。本装置は従来型のOCTに比べ極めて速い撮影速度と高い感度を有する装置で体動に対する耐性も非常に定評があります。
現在,当科では歯科用OCT機器を使用し,『OCT を用いた歯科診断システムの構築』を目標に研究を行っております。(図1:歯科用OCT機器参照)

臨床写真とOCT画像

図1に産官共同開発にて現在使用する機器の全体像と口腔プローブ示します。
図2~4においては、抜去歯牙観察結果を供覧します。
図5、6に口腔内のう触を図7に歯周組織の観察像を示します。

図1:歯科用OCT機器

左;歯科用OCT機器の全貌 (santec株式会社製)
高さ約140cmの小型機器でキャスターもついているため移動も容易に可能)
右;口腔内撮影用プローブ。複雑な口腔内を様々な方向から自由に撮影可能。

図2:抜去歯牙初期う蝕

左;写真上で抜去歯牙上に白く濁った部分(初期う蝕部分)を確認した。写真上の白線の部分の断面を歯科用OCTにて撮影した。
右; OCT画像上ではエナメル質(E)象牙質(D)エナメル象牙境(DEJ)と初期う蝕部分(C)が確認できた。う蝕部分は歯質表面の欠損を伴わず、かつ他の部分と比較して白みを帯びた部分としてエナメル質内に観察された。

図3:抜去歯牙エナメル質う蝕

左;写真上で抜去歯牙上に浅い欠損部分(う蝕部分)を確認した。写真上の白線の部分の断面で歯科用OCTを撮影した。
右; OCT画像上ではエナメル質(E)象牙質(D)エナメル象牙境(DEJ)と初期う蝕部分(C)が確認できた。う蝕部分は表面歯質の浅い欠損とそれよりやや深いエナメル質内に、白みを帯びた部分が描出された。

図4:抜去歯牙象牙質う蝕

左;写真上で抜去歯牙上に茶褐色に着色した欠損部分(う蝕部分)を確認した。写真上の白線の部分の断面で歯科用OCTを撮影した。
右; OCT画像上ではエナメル質(E)象牙質(D)エナメル象牙境(DEJ)と初期う蝕部分(C)が確認できた。う蝕部分はエナメル質表面からほぼ全層に及ぶ大きな歯質の欠損と、それより深いエナメル質、エナメル象牙境と象牙質内に及ぶ白みを帯びた部分として描出された。

図5:口腔内初期う蝕

左;写真上で黄囲みの部分に白く濁った部分(初期う蝕部分)を確認した。写真上で黄囲みの部分の縦の断面で歯科用OCTを撮影した。
右;OCT画像上ではエナメル質(E)象牙質(D)エナメル象牙境(DEJ)と初期う蝕部分(C)が確認できた。う蝕部分は、歯質表面の欠損を伴わず、かつ白みを帯びた部分として描出された。

図6:口腔内エナメル質う蝕

左;写真上で黄囲みの部分に欠損部分(う蝕部分)を確認した。写真上で黄囲みの部分の縦の断面で歯科用OCTを撮影した。
右;OCT画像上ではエナメル質(E)象牙質(D)エナメル象牙境(DEJ)と初期う蝕部分(C)が確認できた。う蝕部分はエナメル質内に限局した歯質の浅い欠損および、白みを帯びた部分として描出された。

図7:歯周組織

図a;写真上で黄囲みの部分の歯牙(しが)と歯槽骨(しそうこつ)を確認した。写真上で黄囲みの部分の縦の断面でOCTを撮影した。
図b;歯科で一般的に撮影されるパノラマ写真。それぞれの歯を支えている歯槽骨は不明瞭である。
図c;パノラマ写真よりも明瞭な画像が撮影できるデンタル写真。この写真上でも歯槽骨は不明瞭である。 図d;OCT画像上ではエナメル質(E)象牙質(D)エナメル象牙境(DEJ)と歯槽骨(黄色矢印)が観察できた。BやCの画像では不明瞭であった歯槽骨の位置がよく分かり、歯槽骨の高さが比較的よく保たれていたことから、この歯の寿命はまだ先が長いことが確認できた。

歯科用OCT機器を用いた口腔疾患診断への期待

口腔内病変は「う蝕」、「歯周疾患」、「粘膜病変」をはじめ、その多くが口腔内組織のごく浅い部分に発生します。その中でも高頻度に認められる「う蝕」は病巣の進行により治療方法が異なりますが、その診査・診断は歯科医師の視診と歯科用レントゲン写真が用いられます。従来のレントゲン線写真検査においては方向により観察の困難な部分も存在する場合があり、また視診は診断歯科医の主観が伴うため、客観性に乏しくなりがちであります。歯科用OCT機器は高解像度に断層画像の撮影が可能であり、客観的な評価が期待できます。それに加えレントゲンのような被曝の問題や時間的制限の問題もなく、簡便に繰り返し行うことが可能であります。また汎用性も高く「う蝕」をはじめ、広く口腔疾患の画像診断法として利用できる可能性が高いと考えられています。 歯科用OCT機器を口腔疾患診断に導入することで、歯科医療領域において期待できることは、以下のように挙げることができます。

  1. 診断面においては、非侵襲下にて、歯周疾患診断、口腔硬組織・軟組織診断などが画像化・数値化でき客観性のある適切な診断が可能と考えられます。
  2. 診療面において、X線のように為害作用がなく、診療用チェアのすぐそばで即時的にかつ頻繁に撮影することが可能であり、治療精度の向上が期待できます。
  3. 健診面において、口腔内診査を行う歯科医師の主観に頼る歯科健診ではなく、客観性のある歯科健診システムを構築することができるようになります。
  4. 患者へ画像情報を的確に提供でき、インフォームド・コンセントにも有効に利用することが可能となります。
  5. 各種口腔疾患の早期客観的診断により早期治療が可能となり医療費の適正化にも寄与することが期待できると考えています。

当科では、歯科用OCT機器による系統的な歯科診断システムの構築を目指し研究を行っております。今後、本研究をさらに発展させ,新規技術として歯科医療の現場に歯科用OCT機器を実用化し、歯科医学・歯科医療の進歩に貢献して参りたいと考えております。

歯科用OCT機器に関する詳しい情報はこちらから・・・

角 保徳, 西田 功, 他:光干渉断層画像診断法(Optical Coherence Tomography)の歯科臨床への応用~口腔用OCT 機器開発と歯牙齲蝕への応用~.日本歯科医師会雑誌60 : 6-18, 2008.(PDF:869KB)
2008年 3月 Vol.60 No.12 日本歯科医師会雑誌

OCTの紹介VTRはこちらから(WMV:144MB)