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心房細動克服に向けて

国立長寿医療研究センター循環器内科部の心房細動克服への取り組み

国立長寿医療研究センター循環器内科部は、高齢化が進む現代社会において増加の一途を辿る心房細動に対し、臨床と研究の両面から精力的に取り組んでいます。数多くの患者さんへの治療経験と、そこから得られた研究成果に基づき、私たちは特に、2つの重要な課題を解明しました。

1.心房細動治療における地域格差の解消への貢献

国民皆保険制度下の日本においても、心房細動治療には地域による格差が存在することを明らかにしました。この課題を解決するため、不整脈専門医の配置が極めて重要である可能性を提唱しています。この結果は、日本循環器学会公式英文雑誌であるCirculation Reportsに掲載されました(Kamihara T, et al. Circ Rep. 2025 May 17;7(7):512-520.)。

当センターには不整脈専門医も所属しており、より多くの患者さんが質の高い治療を享受できる未来を目指します。

【研究背景】高齢化社会では「心房細動」が増えている。完治には「カテーテルアブレーション」が必要。国民皆保険下において治療機会は均等なのか?【研究結果】気候の影響はあまりなかった。カテーテルアブレーション実施率には地域差が存在。不整脈専門医数がカテーテルアブレーション実施率に関与していた。【今後の展望】日本中で心房細動の治療が公平に受けられるためには、不整脈専門医の存在が重要な要因であると示唆され、この点については様々な観点からの検討・対策が必要と考えられた。

2.カテーテル手術を受ける高齢患者さん特有の不安を科学的に解明

心房細動の主要な治療法であるカテーテルアブレーションを受けられた患者さんの声をテキストマイニングで詳細に分析しました。その結果、高齢患者さんに特有の心理的・身体的不安があることを客観的に特定しました。この知見は、患者さん一人ひとりに寄り添った、よりきめ細やかなケアの提供に繋がっています。この結果は日本老年学会公式英文雑誌であるGeriatrics & Gerontology International に掲載されました(Kamihara T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2025 Jun 23.)。下の図はテキストマイニングという手法を用いて患者さんの不安を分類して解析したものになります。当センターでは日々の診療をただ行うだけでなく、常に改善し続けていくための研究手法を日々の臨床に還元しています。

研究を臨床に直ちに生かす

当センターは、心房細動の代表的な治療法であるカテーテルアブレーションが、より多くの患者さんに公平に提供されるべきであると認識しています。大府・東浦地域で唯一カテーテルアブレーション治療が可能な施設として、私たちはこの先進的な治療に積極的に取り組んでいます。

また、近年注目を集める大規模言語モデルやテキストマイニングといった最新技術も積極的に応用し、高齢患者さんが手術に際して抱える固有の不安に対し、どのように向き合い、解決していくべきか、臨床・研究の両輪で探求を続けています。

当センターの目標は、日本そして世界が直面する医療課題を研究で解決するにとどまりません。そこで得られた最新の知見と、患者さんの利益に直結する医療実践を迅速に融合させ、患者さんお一人おひとりに最高水準の医療を提供し、質の高い医療体制を構築することを最重要視しています。