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外来診療・時間外診療・救急外来 電話:0562-46-2311

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脳神経外科部

業務の実際

 脳神経外科は、脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷などを、外科的な方法によって治療する診療科です。私達もこのような疾患の診断や治療を日常的に行っています。手術治療については、手術用顕微鏡やナビゲーションシステム、術中脳機能モニターなどを用いて、高度で安全な手術を行うことができ、特に水頭症、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫の手術症例が多くあります。一方で、覚醒下手術や術中MRI診断などは当センターで行うことができず、頭蓋底手術や内視鏡手術、脳刺激装置植込術、脳血管内治療などの、特殊な技術や機器が必要な治療も、通常は行なっておりません。これらの治療が必要な症例は、大学病院などへ紹介しています。脳腫瘍手術後の放射線治療も、治療機器がないため他院へ依頼しています。

 当センターでは認知症を専門的に扱っているため、一般病院では行うことの難しいDATスキャンなどの画像検査や、詳しい認知機能検査、充実したリハビリテーションを日常的に行えるメリットがあります。脳神経外科でもこれらのメリットを生かし、高度な診断技術と安全な手術、手術前後のリハビリにより、高齢者に多い正常圧水頭症や脳腫瘍を、高いレベルで専門的に診ることができる体制を整えています。

対象疾患

 正常圧水頭症、脳腫瘍、脳血管障害(脳出血、脳梗塞)、未破裂脳動脈瘤、頭部外傷(脳挫傷、急性・慢性硬膜下血腫)、脳膿瘍、三叉神経痛、顔面痙攣など

最近の話題

  1. 正常圧水頭症の治療に力を入れており、検査(タップテスト)や手術(髄液シャント術)の件数が増加しています。

  2. 名古屋大学の関連病院と協力し、正常圧水頭症の手術方法に関する臨床研究を行っています。

  3. 悪性脳腫瘍の薬物療法、特に神経膠腫と悪性リンパ腫の化学療法を専門的に行える体制をとっています。

  4. 当センターのバイオバンクを利用し、患者さんの同意のもと、脳脊髄液、脳腫瘍組織、慢性硬膜下血腫の血腫液などの生体組織を保存して、研究を進めています。

疾患と治療内容

正常圧水頭症

 脳の内部にある脳室に脳脊髄液(髄液)が貯留して脳室サイズが拡大したものを水頭症といいます。脳腫瘍やクモ膜下出血などでも続発性に起こりますが、先行する病気がなく、髄液の圧が高くないものは、特発性正常圧水頭症(iNPH)と呼ばれ、他の水頭症と区別されます。

 iNPHは高齢者に多く、歩行障害、認知障害、排尿障害が見られるため、アルツハイマー病などの認知症と間違われることがありますが、特徴的な水頭症の画像所見をきたし、髄液シャント術という外科的な治療で症状が改善するという特徴があります。特徴的な画像所見はDESHと呼ばれ、脳室やクモ膜下腔の不均衡な拡大を示すため、脳CTやMRIで比較的容易に見つけることができます。iNPHの診断には、問診、歩行や認知機能の評価、髄液検査、その他の画像検査などを行います。髄液排除試験(タップテスト)を行うと、髄液を流す治療を行なったときの効果を予測することができます。

 iNPHの治療は、貯留した髄液を体の他のスペースへ流す、髄液シャント術という手術を行います。髄液を抜く場所には脳室と腰椎の2種類あり、髄液を流す場所も腹腔と心房の2種類があります。脳室を穿刺する場合は、髄液を流す場所として腹腔と心房のどちらでも選べますが、腰椎を穿刺する場合は、位置的に腹腔しか選べないため、髄液シャント術術は、脳室-腹腔(V-P)シャント、脳室-心房(V-A)シャント、腰椎-腹腔(L-P)シャントの3種類となります。シャントチューブにはバルブと呼ばれる機械がついており、術後に細かく圧設定を行って髄液の流れを調節します。

 正常圧水頭症については、もの忘れ外来にて専門外来を行なっていますので、下記ページもご参照ください。

悪性神経膠腫

 脳を構成する神経膠細胞が腫瘍化したもので、原発性の悪性脳腫瘍の中ではもっとも多く、代表的なものに膠芽腫(グリオブラストーマ)があります。

 画像診断で悪性神経膠腫を疑った場合、病理診断を確定し、症状や生存期間を改善するため、手術摘出を行います。当センターでは、手術用顕微鏡やナビゲーションシステムを使用し、安全で確実な摘出を行なっています。術中の光線力学療法や抗癌薬の脳内留置は行っておりません。病理検査では、IDH1、p53、EGFR、BRAFの遺伝子変異や、1p/19q染色体異常、Ki-67による増殖能を調べることができ、後療法に備えます。

 膠芽腫の標準治療(科学的根拠のある最善の治療)は、手術で可能な限り摘出した後、放射線治療とテモゾロミドによる化学療法を行うものです。電場療法(TTF)といって、頭部に電場をかけながらテモゾロミド投与を行う特殊な治療法も、継続してできる症例では標準治療となっています。ベバシズマブという分子標的薬をテモゾロミドと併用すると、症状の改善が得やすくなるため、患者さんの状態によっては使用しています。

 高齢者の膠芽腫では、放射線照射量を減量してテモゾロミドを投与する治療が標準治療です。当センターでも標準治療にしたがって治療していますが、高齢で認知機能の低下している患者さんには、放射線治療を延期または行わずに、薬物療法のみで治療する場合があります。放射線治療が必要な時は、近隣の施設へ依頼して行なっています。

 比較的若くて元気な患者さんには、名古屋大学病院などで行われている臨床試験をご紹介しています。ウイルス療法などの先進的な治療は行なっておりません。

悪性リンパ腫

 血液の細胞が腫瘍化したもので、脳や脊髄に限局して発生するものを、中枢神経系原発悪性リンパ腫といいます。ほとんどは脳内に発生しますが、1から2割の方は眼球にも腫瘍が進展します。

 脳に発生した悪性リンパ腫は、造影MRIやFDG-PETで特徴的な所見を示すため、画像検査で診断をかなり絞れますが、最終的には手術による病理検査で診断をつけます。ほとんどが「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫」という種類で、抗がん薬や放射線治療がよく効くため、手術で全摘出を目指す必要がなく、定位生検術などの術式がよく用いられます。

 手術後の薬物療法ですが、脳の悪性リンパ腫は全身性のリンパ腫と比べると治療成績が悪く、使用する抗がん薬も異なります。当センターでは、海外での科学的根拠を参考に、メトトレキサート大量療法に他の抗がん薬を併用するR-MPV療法を行っています。この治療法は、手術で悪性リンパ腫の診断が確定後、R-MPVを頭文字とする抗がん薬(リツキシマブ、メトトレキサート、プロカルバジン、ビンクリスチン)を2週間隔で5回投与するもので、高齢者にも投与可能な有効性の高い治療レジメンです。また、この治療では化学療法後に行う放射線治療の照射量を減量できるメリットがあります。腫瘍が消失している場合には、全脳照射の総線量45Gyを23.4Gyまで減らせるため、高齢者の認知機能温存に役立ちます。放射線治療後には、地固め療法として、シタラビン(キロサイド)大量療法を3週間隔で2回行います。

 放射線治療は、近隣の施設へ依頼して行なっています。自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法は、高齢の患者さんが多く、技術的、安全性に問題があることから、当センターでは行なっておりません。

転移性脳腫瘍

 原発性脳腫瘍の10倍以上の患者さんがいると言われていますが、各種がんの終末期の方も多いため、手術が必要な転移性脳腫瘍の患者さんはそう多くありません。脳へ転移するもっとも多い原発巣は肺がんで、転移性脳腫瘍の半分くらいを占めますが、当センターでは肺がんの他、大腸がんや腎がんの患者さんも比較的多く見られます。

 高齢で合併疾患のある方は手術リスクが高くなりますが、手術をするメリットとリスクのバランスで手術適応を決定します。単発の腫瘍で、比較的大きく(3cm以上)、手術により症状改善と長期生存を見込める場合が、よい適応です。手術は、手術用顕微鏡やナビゲーションシステムを使用し、安全・確実な方法で、全摘出を目指しています。

 放射線治療は、全脳照射と局所照射(定位照射)があり、それぞれの腫瘍や病状に合わせて決定しますが、最近は定位照射での治療が増えています。手術の代わりに放射線治療を行うこともありますし、手術後に照射する場合もあります。放射線治療が必要な場合は、近隣の施設へ依頼して行なっています。薬物療法は確立したものがなく、原発巣の治療の一環として行われることがあります。

髄膜腫

 良性の脳腫瘍で、頭蓋内に原発する全ての腫瘍の中でもっとも多いものです。高齢者ほど有病率が高くなるので、当センターでも多く扱っています。腫瘍の直径が年間1mm程度の速さで増大することが多いですが、何年も大きさの変わらないこともあります。直径が3cmを越えると脳への圧迫が強くなり、麻痺などの症状が出やすいため、手術摘出を検討します。手術は全摘出を目指しますが、稀に再発を繰り返す悪性度の高い腫瘍もあります。

慢性硬膜下血腫

 頭部打撲の1から2ヶ月あとに、頭蓋骨と脳の間に血液がたまってくる病気です。脳が萎縮していると頭蓋内で動いて傷つきやすくなるため、高齢者に多く発生する病気です。血腫が自然に吸収されて治ることもありますが、多量の血腫により脳が圧迫されて症状の強い場合は、手術で治療します。慢性期の血腫は液状になるため、手術は局所麻酔下で頭蓋骨に小さな穴を開けるだけで、血腫を洗浄できます。多くの場合、1回の手術で治りますが、1割程度の人は血腫が再発し、再手術が必要となります。

セカンドオピニオン

正常圧水頭症、脳腫瘍

 専門的な知識を生かし、正常圧水頭症と脳腫瘍に対してセカンドオピニオン外来を行っています。正常圧水頭症のセカンドオピニオンは、現在の診断や治療法はどうなっているのか、患者さんに手術の適応があるのかどうか、などについて専門的な意見をお伝えすることができます。脳腫瘍のセカンドオピニオンは、悪性脳腫瘍(膠芽腫、悪性リンパ腫、胚細胞腫瘍、髄芽腫、転移性脳腫瘍など)の診断や治療について、客観的な立場から専門的にアドバイスを致します。ご希望の方は、下記までお問い合わせください。


業績(原著 2018年から)

  1. Okumura E, Takeuchi K, Momota H, Nagatani T, Taoka T, Aimi Y, Hashizume A, Okazaki M, Saito R. Registry-Based Assessment of Shunt Operation Methods and Outcomes in Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus (RASHOMON Study): Protocol for a Multicenter Prospective Observational Cohort Study. JMIR Res Protoc. 2025; 14: e80678.
  2. Momota H, Saito T. Long-term outcomes after shunt surgery in older patients with idiopathic normal pressure hydrocephalus. Clin Neurol Neurosurg. 2025; 249: 108783.
  3. Zhang P, Ohkawa Y, Yamamoto S, Momota H, Kato A, Kaneko K, Natsume A, Farhana Y, Ohmi Y, Okajima T, Bhuiyan RH, Wakabayashi T, Furukawa K, Furukawa K. St8sia1-deficiency in mice alters tumor environments of gliomas, leading to reduced disease severity. Nagoya J Med Sci. 2021; 83: 535–549.
  4. Ohkawa Y, Zhang P, Momota H, Kato A, Hashimoto N, Ohmi Y, Bhuiyan RH, Farhana Y, Natsume A, Wakabayashi T, Furukawa K, Furukawa K. Lack of GD3 synthase (St8sia1) attenuates malignant properties of gliomas in genetically engineered mouse model. Cancer Sci. 2021; 112: 3756–3768.
  5. Sakurai K, Kaneda D, Uchida Y, Inui S, Bundo M, Akagi A, Nihashi T, Kimura Y, Kato T, Ito K, Ohashi W, Hashizume Y. Can Medial Temporal Impairment Be an Imaging Red Flag for Neurodegeneration in Disproportionately Enlarged Subarachnoid Space Hydrocephalus? J Alzheimers Dis. 2021; 83: 1199-1209.
  6. Poh B, Koso H, Momota H, Komori T, Suzuki Y, Yoshida N, Ino Y, Todo T, Watanabe S. Foxr2 promotes formation of CNS-embryonal tumors in a Trp53-deficient background. Neuro Oncol. 2019; 21: 993–1004.
  7. Nagata Y, Hirayama A, Ikeda S, Shirahata A, Shoji F, Maruyama M, Kayano M, Bundo M, Hattori K, Yoshida S, Goto YI, Urakami K, Soga T, Ozaki K, Niida S. Comparative analysis of cerebrospinal fluid metabolites in Alzheimer's disease and idiopathic normal pressure hydrocephalus in a Japanese cohort. Biomark Res. 2018; 6: 5.
  8. Nakamura A, Cuesta P, Fernández A, Arahata Y, Iwata K, Kuratsubo I, Bundo M, Hattori H, Sakurai T, Fukuda K, Washimi Y, Endo H, Takeda A, Diers K, Bajo R, Maestú F, Ito K, Kato T. Electromagnetic signatures of the preclinical and prodromal stages of Alzheimer's disease. Brain. 2018; 141: 1470-1485.
  9. Iwasawa T, Zhang P, Ohkawa Y, Momota H, Wakabayashi T, Ohmi Y, Bhuiyan RH, Furukawa K, Furukawa K. Enhancement of malignant properties of human glioma cells by ganglioside GD3/GD2. Int J Oncol. 2018; 52: 1255-1266.
  10. 杉浦彩子、文堂昌彦、鈴木宏和、中田隆文、内田育恵、曾根三千彦、中島務. 高齢正常圧水頭症患者におけるシャント術前後の聴力変化. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2020; 123: 730-737.

業績(著書 2018年から)

  1. 百田洋之. 化学療法1(glioma). 悪性脳腫瘍のすべて. 第5版. メディカ出版. 2020: 236–243.
  2. 文堂昌彦. 「8. 正常圧水頭症について教えてください」, 「27. 認知症の診断に有用な画像検査の種類と特徴的な所見についておしえてください」. 知っておきたい!認知症知識Q&A. 医歯薬出版社. 2018.
  3. 文堂昌彦. 「特発性正常圧水頭症、シャント手術効果予測の現状と問題点 -診療ガイドライン第2版以降の研究報告についてー」, 特集/4 大認知症以外の「そのほかの認知症」について -診断をする際のポイントと最近の知見―. 老年精神医学雑誌. 2018: Vol. 29.