現代医療の発展は目覚しく、そこで使用される医療機器においても高度複雑化が進んでいます。 このような医療の中で、医学と工学の知識をもつ技術者のニーズが高まり、1987年(昭和62年)に国家資格制度ができ臨床工学技士が誕生しました。 当センターの臨床工学部は、センター内で使用される各種医療機器を包括的に管理・運営するとともに、循環器業務や血液浄化業務・人工呼吸業務やその他臨床工学に関する業務など、高度な知識・技術を要する幅広い業務を行っています。
臨床工学部内は効率のよい作業と清潔・不潔の区分けを考慮し「機器貸出し室」「返却・洗浄室」「作業室」「事務室」「情報管理室」に分かれています。この構造は医療機器等を常に最高の状態でお使い頂くための工夫の一つです。またその各場所にはCliticalな分野のカメラモニターや生体情報モニターが設置され、部内にいてもさまざまな場所の状況・バイタルサインを確認できるようにしています。これは緊急症例に対する迅速的確な判断と対応、適切な人員配置に役立っています。
各診療科・部署が共用できる機器については臨床工学部で一括して管理しています。現在の管理台数は約90種類1000台以上にのぼります。このような管理は過剰な在庫を減らすとともに臨床の場においては常に完璧な状態で機器を使用する事を可能としています。機器管理専用データベースシステムを利用して機器の使用状況をモニタリングし、購入から廃棄に至るまでにかかる費用・稼働率を算出しコストを削減しながらも安全を担保した円滑な機器運営を実現しています。
一般病棟とは異なり、手術室では高度な医療機器が数多く使用されます。そのような医療機器がいかなる時も安全にできる様、使用前点検を始めとして使用中点検や定期点検を行い機器の性能維持を担保しています。
針電極のセッティング
検査条件の確認中
Reference刺激
脊椎外科や大動脈疾患、頭頚部領域の手術の際に、目的とする神経の活動をモニタリングします。この手技は術中においても神経へのダメージを把握する事が可能となります。これは安全で確実な手術の実現をサポートします。
レジストレーション(位置合わせ)
磁場用ナビゲーション機材のセッティング
脳神経外科や耳鼻咽喉科、整形外科の手術の際に、術前に撮った画像情報と実際の術野の位置情報を整合し、安全な手術のサポートを行うためのナビゲーション装置の操作を行っています。
装置の準備
多くの出血が見られる手術において、術野からの出血を回収し清潔な状態を維持したまま洗浄・濃縮を行い再度患者さんに戻す手技です。自己血輸血は一般的な輸血と異なり感染リスクの低減等さまざまなメリットがあります。
ペースメーカー外来のひとこま
ICMやペースメーカーの植込み時の手術サポートを行っています。また他院で埋め込まれたICM・ペースメーカー・ICDやCRTD等の心臓植込みデバイス全般において日常生活における管理(デバイス外来)を通してQOL向上を目指して患者さんをサポートしています。さまざまなメーカー・機種がある中でそれぞれの特徴を理解し患者さんにフィードバックできるのは臨床工学技士ならではだと考えています。近年はMRI撮影時のサポートも行っています。
血管内超音波にて冠動脈の状態を確認中
虚血性心疾患に対する検査や治療、各種不整脈に対する詳細な検査、心不全の原因追及のための検査等に立ち会います。これらの検査や治療は高度な機器を数多く使用するため私たち臨床工学技士は機器・デバイスを含めた手技全般においてサポートしています。
心房細動や心房粗動、PSVT(AVNRT、WPW症候群))、心室性期外収縮などの異常興奮電位・伝導路を有する頻拍性不整脈に対して高周波エネルギーによりそのような異常電位・伝導路を焼灼する治療です。このような治療にはとても多くの装置(3Dマッピング装置、ラボ、心筋刺激装置、心腔内エコーや高周波発生装置等)を使用します。それらの装置の操作・解析等を行い安全な不整脈治療をサポートします。
3Dマッピング装置の操作
心原性ショックや急性循環不全患者に対してはIABPやPCPS等の補助循環装置を用いて救命を行います。そのような場合、臨床工医学技士は装置の操作・管理を通して患者さんの全身管理の一端を担っています。
器具の点検
検査前のセッティング
直接介助
内視鏡業務に使用される各種機器のセットアップ・メンテナンスを行い安全な医療体制の維持に努めています。また他の医療スタッフと協力しEVL・EMR・ESDなどの各種治療において直接介助を行い治療の質の向上に努めております。
経皮的胆管ステント留置術のひとこま
内視鏡業務の一環ではありますが、透視室においてはERCP・ESTや消化管に対する各種ステント留置の介助を行うとともに、デバイスの選定や操作についてのサポートを行っています。
肝細胞癌に対して超音波ガイド化にて患部に電極針を刺入し、専用の装置から通電を行う事でタンパクの不可逆性変化を起こさせ癌細胞を死滅させる治療です。この治療の際に使用する装置の操作を行い、安全で確実な治療のサポートをしています。近年は肺や腎臓に対しても治療が行えるようになっています。当センターでも徐々に治療対象を増やすことが目標です。
現在は慢性腎不全患者に対する維持透析は実施しておりませんが、急性期や術後の血液透析、その他の血液浄化療法(DHP、CHDF、PE、PA、DFPP)は必要に応じて実施しています。このような治療の際は臨床工学部のスタッフが開始から終了までトータルにサポートさせて頂いています。
病棟では血圧計やパルスオキシメーターなど日常的に医療機器が使用されていますが、これらの医療機器は常に正常に作動しなければなりません。これら病棟が保有している小型医療機器についても日々点検・修理を行う事で正確な作動を手助けしています。
人工呼吸器下での呼吸アセスメント
人工呼吸器を使用している方や酸素療法を行っている患者さんの安全確保と有効的な機器の使用方法の確認を目的に病棟をラウンドします。
人工呼吸療法
HighFlowTherapy
睡眠時無呼吸や心不全等に対してCPAP装置を使用する患者さんに対してその導入を行います。外来診察時に必要なデータの抽出や日常管理における窓口としても私たち臨床工学部が関わっています。
画像ファイリングシステム
監視モニター
臨床工学部内の情報管理室では、術中動画や術場映像等のファイルを厳重に管理しています。通常とても高額なシステムが必要ですが、当センターでは現場からのヒアリングを基に必要最低限の機能を持ち合わせた独自のシステムを構築しています。約3年前に臨床工学部が中心となって構築した本システムにはすでに5000件以上の動画ファイルが保存されており、電子カルテシステムからの閲覧や要望に合わせた画質・規格でのさまなざま画像ファイルの取り出しも可能となっています。
院内で使用するさまざまな医療機器の取り扱い説明を定期的に実施します。また、臨床工学技士が得意とする分野(呼吸・循環・代謝等)の疾患を患った患者に対する医療機器を用いた治療へのアプローチ等の講義を行います。
男性2名・女性2名の計4名と少人数の部署ではありますが、スタッフ全員で協力し合い質の高い医療の提供を心掛けて業務を行っています。
臨床工学技士、看護師、臨床ME専門認定士、3学会合同呼吸療法認定士、第1種内視鏡技師、第2種電気工事士、透析技術認定士、高圧ガス取り扱い責任者 他
臨床工学技士会、日本不整脈学会、日本集中治療学会、日本呼吸療法医学会、
臨床工学部
TEL:0562-46-2311(代表)
E-mail:med-eng(at)ncgg.go.jp
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