細菌の塊である歯垢(プラーク)は、ムシ歯や歯周病の直接的な危険因子であると同時に、全身疾患を引き起こす菌の温床としての役割を果たす可能性が高い。口の中の細菌が関与すると考えられる代表的な全身疾患としては、
などがあげられます。要介護高齢者は、健康な人にとっては病原体とはいえないような細菌によって、日和見感染症、感染性心内膜炎や誤嚥性肺炎に陥ることがありますが、口腔ケアを行えばこれらの疾患を予防できることが分かってきました。つまり口腔ケアは、単に歯や歯ぐきのためだけではなく、生活援助に加えて全身疾患の予防など、生命の維持・増進に直結したケアでもあるのです。
口の中は常に37℃前後に保たれ、唾液という水分があり、定期的に食物が通過するので、細菌が増えやすい環境になっています。唾液1㎖には数十億の細菌が含まれているといわれています。要介護高齢者、特に寝たきりの方は、口の中や義歯を自分で清掃することが難しくなるので、口の中にはこのような細菌がとりわけ多く棲息することになります。しかも高齢になると口腔内自浄作用は低下し、口の中を清潔に保つことはさらに難しくなっています。例えば舌には舌苔(細菌などが脱落して舌表面に堆積した苔状の付着物。多くの細菌が付いています。)が堆積していることが多く、歯と歯ぐきには歯垢がたまり、細菌が繁殖しています。このような口の中の細菌が誤嚥されると、誤嚥性肺炎など高齢者にとって致死的な感染症が引き起こされます。この予防策としては、「誤嚥を生じにくくする」ことも大切ですが、たとえ誤嚥しても誤嚥性肺炎に移行しないように、口の中の細菌を取り除いて清潔にしておく、つまり口腔ケアを行うことが重要です。
まとめると口腔ケアには以下のような効果があります。