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血便の原因は? 痔?癌?それとも…?

はじめに

 トイレにいったら、「便器の水が真っ赤だった。」とびっくりして外来を受診される患者様を診察することがあります。赤い(鮮血)もしくは暗赤色の血液が肛門からでることを「血便」と言います。「血便」の原因として、痔核や大腸癌がよく知られており、特に大腸癌を見逃さないことは、とても重要なことです。

 しかし、一般の方にはあまり聞きなれない病気が、高齢者の血便の原因で多いことをご存じでしょうか。「大腸憩室出血」「虚血性腸炎」という病気です。今回は、この2つの病気について説明したいと思います。

大腸憩室出血

大腸憩室とは?

 大腸の壁が5-10mm程度の大きさに袋状に吐出したものを大腸憩室といいます。日本人の24%程度が保有していると言われています。大腸の右側(主に上行結腸)、左側(下行結腸、S状結腸)、もしくは、その両方にあるものなど、その存在場所や数には個人差がありますが、憩室が存在すること自体は、病気ではありません。

大腸憩室出血とは?

 大腸憩室出血とは、この袋の中の血管が破れて出血することです。腹痛を伴わず、突然出血することが特徴と言われています。大腸憩室保有者で、出血を生じる人はごく一部で、男性、高齢者、肥満、NSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛剤やアスピリンを服用している人に多いと言われています。

診断、治療は?

 診断するには、CT検査や大腸内視鏡検査が行われます。内視鏡検査で出血している憩室が確認できた場合は、出血を止めるための処置(クリップ止血)が行われます。しかし、憩室出血の70%から80%は自然に血が止まることが多く、内視鏡で観察した時点で、すでに血が止まっていることも多く経験します。しかし、一方で血圧が低下し、輸血を行うほどの大量出血になる場合もあります。

問題は?

 止血した大腸憩室出血の1年後の再出血率は20-35%、2年後は、33-42%との報告があり、再出血率が高いことが問題となっています。

 

 

(出血を伴う結腸憩室)

虚血性腸炎

虚血性腸炎とは?

 虚血とは、組織や臓器に動脈血が減少または、途絶することです。何らかの原因で、大腸の動脈血流が阻害されることによって大腸の一部が虚血となり、炎症が生じる病気を虚血性腸炎といいます。

原因は?

 原因は単一なものではなく、血管や腸管の原因が複雑に絡んで発症すると考えられています。血管が原因の場合は、動脈硬化です。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病のある高齢者は、動脈硬化が進行していると考えられます。また、腸管が原因の場合は、便秘です。便の停滞により腸管内の圧が高まり、虚血が生じると考えられています。

症状は?

 症状は、突然、激しい腹痛(多くは下腹部痛)が生じ、何回かトイレに行くうちに血便に気が付くということが典型的な症状です。前述の大腸憩室出血が出血以外は無症状であることとは、対照的です。

診断方法は?

 虚血性大腸炎になりやすい部位は、体の左側にある下行結腸、S状結腸です。診断は上記症状を確認し、CT、内視鏡検査を行います。

治療法は?

 虚血性腸炎の大半は、腸管の安静(絶食)と点滴にて改善し、1-2週間で退院できます。しかし、少数ですが、炎症の強い部分が狭窄したり、壊死して腹膜炎になるものも存在します。大腸に壊死が生じた場合は、外科的に手術を行うことになります。

予後は?繰り返すの?

 一般的に予後は良好です。再発は10%程度あると言われています。

(虚血性腸炎の内視鏡画像)

最後に

 今回は、「大腸憩室出血」「虚血性腸炎」についてお話させていただきました。

 真っ赤な血液をみるとパニックになったり、痔出血だろうと安易に考えたりしがちです。血便の原因は多岐にわたり、軽症なものから血圧が低下するなどの重篤なものまで様々なものがあります。癌が見つかることもあります。

 原因を正しく把握することが治療の第一歩となります。自分だけで判断せずに必ず専門医に相談してください。

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