この記事に目を留めていただき感謝します。
あなたは、大切なご家族や友人が、肺の持病を持っていて、何かつらそうだけど、わかってあげられない、と悩んだ経験をお持ちではありませんか?
自分の言葉で、息苦しさを訴えることが難しい人のつらさを、どのようにキャッチしてあげればよいか、について書かれた解説は多くありません。
そこで、この記事では、家族や友人に、息苦しさを、上手に口で表現できない人がいても、そのつらさに気づいてあげられる視点について解説します。
私は、認知症の専門病院である国立長寿医療研究センターで、痛みや息苦しさを和らげる緩和ケアの医師として活動しています。また、私の所属するチームは、認知症の人のお体のつらさをやわらげるための経験を積んでいます。
この記事では、私たちの経験と海外の医学論文の知見を合わせて、息苦しさを上手く表現できない人のつらさに気づいてあげる視点をお伝えします。
8つの視点は、息をする時の様子についての5つの視点、体全体の様子についての3つの視点に分かれます。
息をはあはあしていないか観察しましょう。普段と違って、息のしかたが少し速い、とても速いなどの変化に注目しましょう。息が苦しい時は、はあはあが、速くなります。
息をする時の胸とお腹の動きを観察しましょう。普通は、息を吸う時に、胸とお腹が膨らみます。息を吐く時に、胸とお腹がへこみます。胸とお腹がバラバラに動いていないか注目しましょう。もし、バラバラなら息苦しいサインです。
息をする時の首すじの様子を観察しましょう。普段は、胸とお腹の筋肉を使って息をするのですが、息苦しい時は、普段は使わない首すじの筋肉も使います。鎖骨を吊り上げ、首すじの筋肉を緊張させて、頑張って、息をしていないか見てみましょう。
興奮すると鼻がひくひくする方もいらっしゃいますが、息苦しい時に、小鼻が開くような息づかいになることがあります。余談ですが、海外の研究で、痛みや息苦しさは直接測定しにくいので、興奮を測定した研究もあります。興奮と息苦しさなどの症状は近い関係があるのかもしれません。小鼻を観察しましょう。
息をする時の、のど元や胸元の音に耳を澄ましてください。ゼロゼロ、ヒューヒューと音がしていれば息苦しいサインです。中には、慢性の呼吸器の持病のせいで、普段から音がしている人もいます。その場合は、いつもより、その音が大きいかどうかで判断してください。
表情をよく観察しましょう。眼を大きく見開き、歯を食いしばり、表情がこわばっていないか注目しましょう。もし、その様子がうかがえる時は、息苦しいサインかもしれません。
そわそわ落ち着きのなさがないか観察しましょう。一貫性なく、よく動き、時に、寝ているより座っているほうが楽な様子で、そわそわしていれば、それは、息苦しいサインかもしれません。
左右どちらかの手の手首のあたりで、脈を触れてみましょう。普段よりもドキドキが少し速い時、とても速い時は、息苦しいサインかもしれません。ただし、脈を触れることが難しい人もいます。その時は無理をしなくても大丈夫。その他の視点を観察しましょう。
以上、息をする時の様子についての5つの視点、体全体の様子についての3つの視点、あわせて8つの視点、認知症があっても息苦しさをわかってあげられる視点について解説しました。
これは、下記の医学論文を参考に、私や、私の所属するチームの経験をもとに記載したものです。
この記事では、認知症の人の息苦しさをわかってあげられる視点について触れました。8つの視点うち、1つでも2つでもあてはまると感じたら、国立長寿医療研究センターの外来棟ロビー階にある、老年内科外来にお越しください。隣に緩和ケア外来もありますし、看護外来も併設しています。認知症の人の息苦しさについて、皆さんの悩みを一緒に考えるスタッフがそろっています。遠慮なくお越しください。