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首の腫れが心配.ひょっとして甲状腺の病気かも?

鏡を見て首の腫れに気づいたり、周囲の人に腫れを指摘されたりして、病院を受診する患者さんは少なくありません.一方、甲状腺が腫れていても、症状がない、あるいは特徴的でないことも少なくないため、重大な甲状腺疾患が残念ながら放置されたり、他の病気に間違えられたりすることもあります.ここでは「甲状腺の腫れ(甲状腺腫)」について解説します。

甲状腺とその働き

甲状腺は、首の真ん中よりやや下(のどぼとけの下)にあり,気管に張り付くように位置する臓器で、大きさは4〜5cm,重さは15〜20gで、蝶が羽を広げたような形をしています。正常な甲状腺はとてもやわらかいので、触って確認することは困難です.

甲状腺は、ヨードを原料に「甲状腺ホルモン」という新陳代謝を活発にする、ヒトの生存に不可欠な物質を作っています。甲状腺の働きは、頭蓋底にある「下垂体」から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)により繊細に調整されています。

 

甲状腺腫と主な病気

甲状腺腫は「びまん性甲状腺腫」と「結節性甲状腺腫」に大別されます.それぞれ代表的な病気を概説します.

  1. びまん性甲状腺腫(甲状腺全体が腫れるもの)

バセドウ病

甲状腺機能亢進症(ホルモン過剰)を示す代表的な病気で、20〜30代の若い女性に多いことが知られていますが、高齢の患者さんもみえます.慢性関節リウマチなどと同じく自己免疫疾患の一つで、抗TSH受容体抗体がTSHに代わり甲状腺を無秩序に刺激するため発症します.甲状腺腫に加えて体重減少、手の震え、発汗、動悸、眼球突出が特徴的ですが、典型的でないケースも多々見られます。特に高齢者では甲状腺腫が見られないこともあります。また心房細動(脳塞栓)や心不全の原因になることがあります。

橋本病(慢性甲状腺)

成人女性の約10人に1人、成人男性の約40人に1人とごく普通に見られる自己免疫疾患で、甲状腺自己抗体(抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体)によって甲状腺に慢性的な炎症が生じるため、徐々に甲状腺機能が低下します.自己抗体が陽性でも大多数(9割以上)で甲状腺機能は正常ですが、いったん機能低下症を発症すると、継続的な甲状腺ホルモンの補充療法が必要となります.体重増加、むくみ、倦怠感、便秘、冷え性・寒がりになる、皮膚の乾燥などが主な症状ですが、高齢者では認知症の原因となることがあります。また、経過中に甲状腺組織の破壊による一時的な甲状腺機能亢進状態が見られることもあります.ごく稀ですが、悪性リンパ腫を発症することがあります。

亜急性甲状腺炎

甲状腺に炎症が起きて、甲状腺組織が壊れる病気(破壊性甲状腺炎)ですが、橋本病と異なり甲状腺自己抗体は陰性です。炎症による症状(甲状腺腫の強い痛みと発熱)、一時的な甲状腺機能亢進状態とそれに続く機能低下状態をへて、数カ月で完治します.痛みは反対側に移動することがあります.痛みで食べ物が飲み込めなくなることもあります.喉の病気や風邪と間違われて、診断や治療が遅れることがあり、注意が必要です.

未分化がん(稀)

数は少ない(甲状腺がんの約2%)が最も予後不良の甲状腺がんで、急速(1か月程度)に頸部の腫れが強くなり、声がれや飲み込みにくさが出現・進行します。痛みなど炎症症状を認めたり、びまん性甲状腺腫を呈することがあります。

  1. 結節性甲状腺腫(甲状腺に「結節(しこり)」があるもの)

甲状腺にしこり(結節)ができて、部分的に腫れるもので、「腫瘍」の他に「過形成」や「のう胞」などの場合があります.腫瘍には悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍がありますが、一般に甲状腺に見られる結節の大部分は「良性」です.また、極く少数ですが機能性結節(甲状腺機能亢進症を示すもの)も存在します。

結節性甲状腺腫は症状がほとんど見られず、「良性か悪性か」の見極めが最も大切です。

 

腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)

腫瘍に類似した「過形成」により、大小さまざまな形の結節ができます.嚢胞(液体の貯留)を示すこともあります。基本的に結節が「がん」に変化することはありませんが、「がんを合併すること」はしばしばあるため、経過観察を行います.少数ですが、機能性甲状腺結節である場合があります.

嚢胞(のうほう)

液体がたまってできた結節が「嚢胞」です.内部に出血して、しこりが急に大きくなり、痛みが生じることがあります.

濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)

良性の腫瘍で、甲状腺腫瘍の中で最も多いものです.超音波検査や穿刺吸引細胞診で調べても、濾胞がんとの区別が困難なことが多いため、濾胞性腫瘍(ろほうせいしゅよう)として、慎重に経過を観察します.

機能性甲状腺結節

良性の腫瘍(プランマー病)や腺腫様甲状腺腫が甲状腺ホルモンを作り、甲状腺機能亢進状態になることがあります.バセドウ病によるものに比べて症状は一般に軽症です.

悪性腫瘍(がん)

甲状腺悪性腫瘍は細胞の種類により以下の5つに分けられます.

受診する際のポイント

診断のために診察・検査を行いますが、甲状腺腫では病歴が非常に重要です.

  1. いつ腫れに気づいたか
  2. 大きくなってきたか
  3. 痛みはあるか
  4. 体重は変化したか
  5. 家族歴はあるか
  6. 持病(治療中の病気)はあるか

など、受診までに整理されておくとよいでしょう.

診察後に血液検査を実施し、超音波検査、細胞診検査、CT、シンチグラフィーなど精密検査の日程を計画します。最低でも2回(シンチグラフィーを除く)の受診が必要となります。ご了承ください.