新しい治療薬と診断法
新しい治療薬

認知症の原因としてもっとも多いのはアルツハイマー病による認知症で、認知症全体の半数以上を占めます。
近年では、アルツハイマー病によるMCI(軽度認知障害)や早期の認知症の方を対象に、アルツハイマー病の一因とされる脳内のアミロイドβを取り除き、病気の進行を遅らせることが期待される抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ、ドナネマブ等)による治療も行われています。
これらの新しい治療薬を使うためには、治療の対象になる条件を満たしているかどうかを確認するための検査と、医師による判断が必要です。検査では、通常の神経心理学的検査や脳画像検査に加え、バイオマーカー検査も行われます。バイオマーカー検査では、画像検査や血液、脳脊髄液などによって、アルツハイマー病などに関連する脳の変化が起きているかどうかを、客観的に調べます。
新しい治療薬による治療を希望される場合は、かかりつけ医、もの忘れ外来のある医療機関、認知症疾患医療センターなどにご相談ください。
引用:van Dyck CH,et al.,New Enbl J Med,2022 Sims JR,et,al.JAMA.2023
新しい認知症診断法
認知症診療における血液バイオマーカー
近年、血液検査によるアルツハイマー病の診断技術が急速に進歩しています。特に「血液p-tau217検査」は、脳内にアルツハイマー病の病理変化があるかどうかを高い精度で判定できることが複数の研究で示されています。
血液バイオマーカーの臨床的意義
認知症の原因はアルツハイマー病をはじめ様々な疾患があります。アルツハイマー病かどうかを明らかにすることで、抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ、ドナネマブ等)の適応を検討できます。
軽度認知障害(MCI)の方がアルツハイマー病による場合も同様に、血液バイオマーカーによって早期から適切な支援体制を準備できます。血液p-tau217により、認知機能が正常な段階でも脳内でアルツハイマー病が始まっているかを技術的には検出可能です。
ただし、現時点では無症候期のアルツハイマー病に対する治療法が確立しておらず、一般住民へのスクリーニング(健診)には適しません。
血液バイオマーカーの課題
血液バイオマーカーは認知症診療を大きく変える可能性を持つ一方、その活用には医学的、倫理的、社会的な準備が必要です。自治体においては、この技術革新を住民の健康と尊厳を守りながら適切に地域に導入していくための、計画的な体制整備が求められています。
国の指針や学会のガイドライン策定の動向を注視しながら、地域の実情に応じた段階的な取り組みを進めていくことが重要です。
血液バイオマーカーを用いた早期発見・早期介入

最近の認知症医療は、レカネマブやドナネマブなどのアルツハイマー病の抗アミロイドβ抗体薬が実用化されたことで大きな転換期を迎えています。特に、「早期診断・早期治療」の意義はますます高まっているといえるでしょう。
しかし、認知症を臨床症状だけで正しく診断するのは容易なことではありません。原因が異なるのに同じような症状を示すことが少なからずあるからです。そこで必要になるのが、病理学的な脳の変化を客観的にとらえることのできる「バイオマーカー(生体指標)」です。
現在のところ、アミロイドβの蓄積をとらえるバイオマーカーとして国際的に信頼性が認められているのは、PET検査と脳脊髄液検査の2つです。日本でもアルツハイマー病の抗アミロイドβ抗体薬を使用する際はどちらかの検査を行い、病理としてのアミロイドβの蓄積を確認することが求められています。
しかし、どちらにもいくつかの課題や制約があります。まずPET検査ですが、高額なうえ実施できる施設が限られ、ごくわずかながら放射線被曝を伴います。一方、脳脊髄液検査は専門医による手技を必要とし、体にある程度の負担がかかる検査です。そのため、より安価で、より侵襲性が低く、専門施設でなくても行える「血液検査によるバイオマーカー」の実用化に大きな期待が寄せられています。
J-DEPP研究では、認知症の血液バイオマーカーを用いた早期診断・早期介入を実現するために、臨床現場で活用可能な血液バイオマーカー検査を活用した診断レポートシステムを構築し、それにもとづき実証を行っています。

