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けっして難しくない酸素療法 第4回

前回までに「酸素流量計の種類と使い分け」 「酸素療法の種類」 「低流量システムとは」について記載させて頂きました。もしもこの部分について理解が深まっていない場合はご一読頂けますと幸いです。では今回は残りの酸素療法、「⾼流量システム」について掘り下げていきたいと思います。

⾼流量システム・・・・ それは名前の通り、⾼流量(大量)の空気を患者さんに送る方法です。 ⾼流量の空気とはどれぐらいなのか・・・。それは患者さんが必要とする濃度と量のガスです。←これが⼤事なのですがとても分かりにくくて曖昧です。前回の「低流量システム」では患者さんの一回換気量に対して十分ではない量の酸素しか流していなかったため不足分を大気を用いて自ら補う必要がありました。その結果、含まれる酸素の割合が変化して呼吸のたびに異なった濃度の酸素のガスを吸い込むことになる。

今回の高流量システムは、どの瞬間においても患者さんが必要とする濃度と量のガスを口元に存在させるよう工夫されたシステムであり、不足した大気を別の場所から補う必要がないため常に安定した濃度の酸素を吸い込む事ができるという優れた酸素供給システムとなります(低流量システムが優れていないという訳ではありませんが・・・)。では一体どれだけの量のガスを口元に待機させておけばこの優れたシステムの性能を十分に生かすことができるのでしょうか・・・。

考え方はこうです。人それぞれ呼吸は異なりますので1分(60秒)間に何回呼吸を行うか分かりませんし、浅い呼吸もあれば深い呼吸もあるかもしれません。また正常な呼吸状態の人もいれば呼吸が障害されている方もみえます。でもどんな呼吸であっても毎秒(1回以上/秒)呼吸をすることは現実的にありえないはずです。であれば、推定される一回換気量に60(秒)を掛けた量のガスを流せば、口元には常に一回の呼吸に必要な量と濃度の空気が存在している事になります。実際の数字を当てはめてみると・・・⼀回の換気で50%の酸素濃度のガスが500ml必要な患者さんがいたとします。でもこの患者さんはいつ呼吸を⾏うか分かりません。ということは、常に患者さんの⼝元には⼀回換気量分500ml、酸素濃度50%のガスが流れていなければなりません。 もし、流れていなければ・・・ 低流量システムと同じで、不⾜した分のガスは⼤気から吸ってしまいます。 そうすると⼤気から吸う事でガスの量は補えるかもしれませんが、 酸素濃度21%の⼤気が混ざってしまうので、50%の酸素濃度を維持する事が困難となってしまいます。 そして結果的に酸素濃度50%、500mlのガスを吸う事ができなくなります。この状況に上記の考え方を適応してみます。この患者さんに必要な一回換気量は500mlです。それに60秒を掛けてみます。「500ml×1分間(60秒)=30リットル /分」となりました。上の考え方を参考にすると、酸素濃度50%のガスが30L/min流れていれば大気からの補充を必要とすることなく常に500ml/50%の酸素濃度のガスを吸い込むことができる計算になります。 これも流しそうめん風に考えてみます。そうめんが「規定濃度のガス」、そうめんを送り届けてくれる筒が「蛇腹」、そうめんを流す⽔ が「⼤気」であると想像してみてください。 まず、間歇的に流しそうめんが流れてくる場合を考えて⾒ます。 常に⼀程の間隔で⾷べる⼈(呼吸する⼈)ならそれでよいかもしれませんが、時には早く、そして時には休憩しながら⾷べたい(呼吸したい)⼈もいますよね。そうなるとお椀にすくう前に流れていってしまうものもあれば、⾷べたいときに⽬の前にない場合も出てきます。そんな時何をすくうか・・・ お⽔(⼤気)です。本当に⾷べたいそうめん(酸素)ではなく、お⽔(⼤気)を取り⼊れる事になります。 これに対して、常に⼀回分の量のそうめんが常に⽬の前を流れていたとします。そうすると⾷べたい時にいつでも⾷べたい分のそうめん口に入れる事ができます。⾷べずに流れていってしまうそうめんも多くなってしまうかもしれませんが、いつでも希望する量のそうめん(⼀定濃度の酸素)を 体内に取り込むことができます。 これが⾼流量システムの基本的な考え⽅です。

口元に流れてくるガスが少なく規定濃度の酸素が吸えない場合のイメージ

常に必要な分のガスが流れているため安定したガスが吸えるイメージ

じゃあ⼀つ戻って低流量システムはというと・・・ 細い筒(酸素チューブ)にいつも少量のそうめん(酸素)が流れ続けています。 基本的に⼀回で⾷べたい量以下のそうめん(酸素)しか⽬の前を流れていませんので、おなかを満たすには⽔(⼤気)を使ってかさ増しするしかありません。でもそれでは欲求は満たされるかもしれませんが、栄養を取り込んでいる訳ではないですね。 ⾷欲(必要とする⼀回換気量)によって、そうめんが多い(酸素濃度が⾼い)場合もあり、時にはそのほとんどが水で、そうめんがない(酸素濃度が低い)場合もあります。 これが低流量システムのイメージです。

どうですか、「⾼流量」と「低流量」・・・ なんとなくイメージして頂けるとうれしいです。 つまり、⾼流量システムとは患者さんにとって必要な⼀定濃度の酸素をいつでも吸えるように⼯夫されたシステムなのです。ということは、前回の内容で出てきた「思いがけない酸素濃度の上昇が起こる可能性の高い低流量システム」によって引き起こされる“悪のサイクル”を防止するためには、どんな呼吸であったとしても常に一定濃度の酸素しか吸い込むことのできないこの⾼流量システムが安全である事がお分かり頂けると思います。

では実際に設定を行う場合、具体的にどのくらいの流量を流せばよいのでしょうか・・・ ⼀般的には成人の場合、1分間に30リットルの流量が必要であるといわれております。これは成人の一回換気量を500mlとして換算しているからです。しかし30リットルだと多すぎる人もいれば少ない人いるかもしれません。 じゃあ、上に記した“いつでも一回の呼吸で必要な量と濃度のガスが存在する”条件を満たすようなセッティングができれば30 リットルという数値に固執する必要はなさそうです。このあたりの使⽤⽅法については追ってご説明させて頂きます。どうでしょう・・・ ⾼流量システムの概要を理解して頂けたでしょうか。では次回からはいよいよそれぞれの物品とその使用方法について理解を深めていきたいと思います。

 

 

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