最近、固い物を食べなくなった、むせやすくなった。そんなことはありませんか?また周りの人でそんな方はいませんか?おじいちゃんおばあちゃんにずっと健康で長生きしてほしい。と思うご家族も多いと思います。そのような方は「オーラルフレイル」を意識してみてください。
オーラルフレイルとは、口のフレイル(虚弱)という意味の造語で、口の機能低下に注目した概念です。下の図に示すように最近むせやすくなった、食べこぼしが増えた。食欲がない。軟らかいものを好んで食べるようになった。滑舌が悪くなった。口が乾きやすくなった。歯が抜けたままになっている。など…。これらのようなちょっとした口に関する“ささいな衰え”がオーラルフレイルです。
例えば虫歯や歯周病を放置したことで歯が折れたり抜けたりして、それまで噛めていたものが噛めなくなることがあります。そのため自然と食べやすい軟らかいものを選択するようになり、いつしか軟らかいものを食べることが習慣となります。そのため噛むための筋肉を使わなくなり、結果として噛む機能が低下します。噛むための機能が低下することで軟らかいものを選択するようになり更に噛めなくなる、という負の連鎖を引き起こします。徐々に口の機能の低下が進行し、食べ物の選択肢が狭まり栄養に偏りが生じたりすることで心身機能の低下にもつながると考えられています。このような“負の連鎖”に早めに気づくための重要なサインとしてオーラルフレイルは近年注目されています。
ある調査によると、オーラルフレイルの人はそうでない人と比べ、2年以内に身体的フレイルを発症する確率が2.4倍、4年以内に死亡するリスクは約2倍ということがわかってきました。ここから言えることは、お口のささいな衰えを甘く見てはいけない、ということです。
自分がどのくらいオーラルフレイルの状態に近づいているのか、まずはチェックしてみましょう。次の表で当てはまる回答の点数を合計してください。
質問事項 | はい | いいえ |
---|---|---|
半年前と比べて、堅い物が食べにくくなった | 2点 | 0点 |
お茶や汁物でむせることがある | 2点 | 0点 |
義歯を入れている | 2点 | 0点 |
口の渇きが気になる | 1点 | 0点 |
半年前と比べて、外出が少なくなった | 1点 | 0点 |
さきイカ・たくあんくらいの堅さの食べ物を噛むことができる | 0点 | 1点 |
1日に2回以上、歯を磨く | 0点 | 1点 |
1年に1回以上、歯医者に行く | 0点 | 1点 |
オーラルフレイルの危険性はどうでしたか?もし危険性が高いという判定の場合、専門的な対応が必要です。かかりつけの歯科医に相談するなど、早めの対策をとりましょう。
また次のようなことを意識して日ごろから口や歯をケアするようにしましょう。
口の中の衛生状態が保たれていないと、虫歯や歯周病のリスクが発生し、進行すると大切な歯を失うことになってしまいます。そのため「食べる」「話す」といったことが難しくなります。虫歯や歯周病を予防するには、歯ブラシだけでなく、デンタルフロス、歯間ブラシなどを有効に使用して適切なケアをしてください。自分にはどんな道具が合っているのか分からない場合はお近くの歯科医院で相談してみましょう。また、かかりつけの歯科医院を作り、歯石除去などの定期的なメインテナンスを受けると良いでしょう。
口腔機能とは、「噛む」「のみ込む」などの食べる機能だけでなく、「発声する」「笑う」といったコミュニケーションを担う機能も含まれています。これらの機能を保つためには唇や舌、喉や口周辺の多くの筋肉の働きを衰えさせないようにする必要があります。オーラルフレイルのセルフチェック表で「オーラルフレイルの危険性あり」以上に該当した場合は次に紹介するトレーニングを行って、口腔機能が衰えないように維持しましょう。
引用:日本歯科医師会HP
オーラルフレイル対策のための口腔
ほほを膨らませた後、すぼめるという動きを数回する。(水はなくても良い)
引用:日本歯科医師会HP
オーラルフレイル対策のための口腔
引用:日本歯科医師会HP
オーラルフレイル対策のための口腔
注:お口を開くときには、無理せずに痛みが出ない程度にしてください。
引用:日本歯科医師会HP オーラルフレイル対策のための口腔
早口言葉が効果的です。口の動きをよくすることで、明瞭な発音につながり、表情が豊かになります。口を大きく動かしながら3回続けて言いましょう。
効果としては「誤嚥(食べ物・つばが食道でなく気道に入ってしまうこと)」や「むせ」などの症状改善につながります。
引用:日本歯科医師会HP オーラルフレイル対策のための口腔
どのトレーニングも、続けることが大切です。わかっているけどなかなか毎日は続かない、という方におすすめなのが「ガラガラうがい」「ブクブクうがい」です。
口に水をふくんで上を向く「ガラガラうがい」も、頬全体をふくらませる「ブクブクうがい」も、意識してやることで口腔機能を鍛えることにつながります。いつもより「少し長め」「少し回数多め」を意識して行いましょう。
詳しいトレーニングのやり方は、以下の「日歯8020テレビ」でも動画で紹介されています。ぜひ参考にしてみてください。
引用:日本歯科医師会HP「日歯8020テレビ:口腔体操でオーラルフレイル予防」
もし口腔機能で気になるところがあれば、まずは今のお口の状態を知ることから始めてみましょう。当センターの歯科口腔外科では口腔機能検査を積極的に実施していますので、ご興味のある方はご相談ください。