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外来診療・時間外診療・救急外来 電話:0562-46-2311

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もの忘れと認知症

 もの忘れ(記憶の障害)があるからと言って必ずしも認知症とは限りません。また、もの忘れ(記憶の障害)がなくても認知症と診断される方もおられます。ここでは認知症の症状について説明します。

 国立長寿医療研究センターにはもの忘れセンターがあり、もの忘れ外来を行っています。もの忘れ外来の一番の目的は認知症や認知機能の障害のある方を診療し、その生活を支援することです。

認知症とは

 認知症とは、「いろいろな原因によって認知機能が障害され日常生活に支障が出ている状態」を指す言葉です。したがって、「認知症」は一つの病気の名前ではなく、「状態」を指す言葉であり、その背景にはいろいろな病気があります。

認知症の原因となる病気

 認知症の原因としてアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、正常圧水頭症などの疾患があります。中でもアルツハイマー型認知症は最も多い認知症の原因疾患です。

さまざまな認知機能障害

 認知症でみられる認知機能の障害とそれによる主な症状としては以下のものがあります。

 

 このように認知症でみられる認知機能の障害はさまざまで、もの忘れ(記憶の障害)はその中のひとつに過ぎません。ただ、認知症の原因疾患として最も多いアルツハイマー型認知症では、記憶に関係すると言われている脳の一部(海馬やその周辺)が障害されて新しい記憶が障害されることが多いことから、認知症イコールもの忘れ(記憶障害)と認識されることが多くなったと考えられます。

 認知機能は加齢に伴い徐々に低下していきますので、認知機能が通常の加齢で起こる程度とは言えないほど障害されているかどうかを評価するため、もの忘れ外来では上記の障害がどの程度起こっているかを調べる検査(神経心理学的検査)が行われます。どのような認知機能が障害されているかを調べることで、脳のどの部分が障害されているかがある程度わかり、認知機能の障害の原因となった疾患の推定に役立ちます。

日常生活の支障

 認知機能の障害があっても日常生活の支障がなければ認知症とは診断されません。もの忘れ外来で評価を行う日常生活能力としては、金銭や服薬の管理、公共交通機関の利用、買い物、電話、食事の準備、着替え、入浴、排泄などがあります。認知機能の障害があっても、日常生活の支障がほとんどない状態のことを軽度認知障害と言い、認知症とは区別しています。

  認知機能の障害 日常生活の支障
正常 年相応 なし
軽度認知障害 あり なし
認知症 あり あり

チェックリスト

 下のチェックリストは当センターのもの忘れ外来を受診された方の診察の前に、本人の状態をよく知るご家族にお答え頂いて診察の参考にさせて頂いているものです。

以下のうち現在ある症状に〇をつけて下さい。(複数回答可)
1 同じことを言ったり聞いたりする
2 物の名前が出てこなくなった
3 置き忘れやしまい忘れが目立ってきた
4 薬の管理ができなくなった
5 以前はあった関心や興味が失われた
6 だらしなくなった
7 日課をしなくなった
8 時間や場所の感覚が不確かになった
9 慣れたところで道に迷った
10 財布などを盗まれたという
11 ささいなことで怒りっぽくなった
12 蛇口、ガス栓の閉め忘れ、火の用心ができなくなった
13 複雑なテレビドラマが理解できない
14 料理の手順が悪くなった
15 機械の操作が覚えられない、使いこなせない、使い方を忘れる
16 思考が遅くなった、判断力が落ちた
17 夜中に急に起き出して騒いだ
18 幻覚を見る

 もの忘れ外来では診察、血液検査、神経心理学的検査、脳の萎縮や脳梗塞などの状態を見るための頭部MRIや脳の働きが低下した部位を画像で調べる脳血流シンチグラフィー等の検査の結果から、受診された方が認知症であるかどうか、認知症であるなら原因疾患は何か等の診断を行います。診察前にチェックリストでお答え頂いた結果と診察・検査後の診断結果を比較検討したところ、18の質問項目の中で、「1. 同じことを言ったり聞いたりする」「4. 薬の管理ができなくなった」「5. 以前はあった関心や興味が失われた」「8. 時間や場所の感覚が不確かになった」「18. 幻覚を見る」の5項目が、特に認知症の有無と関係が深いことがわかりました。

 チェックリストで「ある」の項目が多い方、特に上記の5項目が該当する方は早めに専門医療機関のもの忘れ外来などを受診されることをお勧めします。