本文へ移動

病院

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

 

外来診療・時間外診療・救急外来 電話:0562-46-2311

ホーム > 病院 > 健康長寿ナビ > 肩の痛みの原因は?

肩の痛みの原因は?

はじめに

一般に「肩が痛い」という場合、大きく分けて2つの種類があると思います。一つは、腕の付け根の前側の、肩関節の痛みであり、もう一つは肩甲骨の上あたりの、「肩こり」がおきる付近の痛みです。両方とも高齢の方に多く、はっきりとしたきっかけや原因が思い当たらないことも多いです。後者の多くは頚椎(首の骨)の変形により起こることが多く、腕や肩関節の動きとはあまり関係がありません。ここでは、前者の、肩関節の異常によって起きる痛みの原因について説明します。

「五十肩」=肩関節周囲炎

肩関節の異常な状態も大きく2つに分けることができます。1つはMRIなどで調べても肩関節の構造には問題がなく関節が拘縮して(固くなって)いる場合で、いわゆる「五十肩」の状態です。この状態は古くから、40~50歳くらいの方に起こることから、日本独特の言い方でそう呼ばれていました(が、外来に受診される患者さんの中には70代、80代の方も少なくありません。)

「人生50年」の時代が長く続いていたので、現在の「人生100年時代」を象徴する現象なのかもしれません。原因としては、多くの場合、力こぶをつくる上腕二頭筋の長頭腱が炎症をおこしています。その腱が関節の中に入る付近や、関節の中での同腱の近くが炎症で痛みます。痛みのため腕を動かさずじっとしていると、炎症のために関節の袋(関節包)が癒着を起こし、上腕骨の頭の部分が動くスペースが少なくなり、動かすと突っ張って痛む、そうするとまた動かさない、という悪循環を来たし、さらに関節の可動域が狭くなってしまいます。

治療は、多少痛みを伴っても何とか肩関節を大きく動かすことが基本です。お勧めは図のように仰向けで横になり、痛い方の腕が前から上にあがるように、肘のあたりを反対側の手で後ろに押す体操です。このように行うことで肩甲骨が固定され、肩甲骨と上腕骨頭の間を動かし易くなります。症状が軽いうち、癒着が少ないうちに鎮痛剤を飲んだり、張り薬を貼ってでも動かすことです。癒着が起きて症状が進んだ状態でも、できるだけ動かした方がよいでしょう。痛みが強ければ、悪化防止のために関節へステロイドなどの注射を打つことが有効な場合もあります。

肩腱板損傷

もう1つの肩関節の異常な状態は、腱板損傷です。五十肩と違い、腱板損傷では、肩関節を包む腱が切れています。肩関節には上方、前方、後方に合わせて4つの腱があり、上方の棘上筋腱が最も切れやすいです。原因は、転倒して手や肘をつくなど、明らかな場合もあれば、長年手を上げた姿勢の作業に就くなどで腱に負担がかかり続けて擦り切れる、あるいは加齢による場合もあります。

腕を上げる時、五十肩は、ある角度から痛みが増してそれ以上は上げられません。腱板損傷では腕を上げる途中が最も痛く、上げてしまうと痛みが減り、腕を下ろす際にも途中が痛みます。腱の切れた箇所が肩甲骨の肩峰という部分の下を通過する際に引っかかって痛みが起きますが、それ以外では痛みが少ないのです。何か物を取ろうと手を伸ばした際、瞬間的にズキッと痛みが走るなどします。診断にはMRIが有効です。

腱板損傷が起きていても、痛みのないケースもあり、また痛んでも、鎮痛剤の内服や注射、専門的リハビリで改善される場合も多いです。リハビリは切れている腱の状態や症状により異なりますが、基本は残っている腱の動きを維持し、痛みのでない姿勢でゴムバンドを使い低負荷で鍛えたり、肩関節や肩甲骨を動かすストレッチをしたりします。治療を続けても強い痛みが改善されない時や仕事内容によっては、腱の修復手術が奏功することもあります。