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転びやすくなる原因は?

はじめに

 『近頃よく転んでしまう』とお悩みの方もおられると思います。患者さんご本人だけでなく、ご家族から相談を受けることもよくあります。ここでは、高齢の方の転倒の原因や、どのようにしたら転倒しにくくできるか、また万一転倒してしまった場合に留意した方がよいことについて、高齢の方が転倒した場合に起きやすい骨折等と合わせて、ご紹介します。

転倒の頻度

 まず、高齢者のどのくらいが転ぶのかについてですが、家で暮らす65歳以上の方でおよそ2割、また施設に入居されている方では3割以上が1年間に転倒すると報告されています。性別では女性は男性より転倒発生率が高く、高齢になるほど率が高くなります。80歳以上では不慮の事故による死亡は、転倒がその3割近くを占めます。交通事故が5%程度であるのに比べて非常に高いですね。注意が必要です。

転倒の要因

 転倒に関連する危険因子としては、身体的要因が主である内的要因(個人の要因)と、環境要因が主である外的要因に大きく2つに分けられますが、両者が複合的に関連して発生する場合が多くあります。特に内的要因は、図1に挙げるように多岐にわたります。すなわち、歩行、バランス、筋力などの運動機能の低下をはじめ、脳神経機能、感覚機能、循環器系などに関連する病気や障害、あるいはこのような機能に影響を与えるお薬の服用があげられます。これらは、いずれも高齢になるほど要因が増す、あるいは程度の上がるものですので、すぐに改善することは困難なものが多いのも事実です。

図1 転倒の要因
原田敦 松井康素 高齢者の転倒と骨折 2002 整形・災害外科Vol45 P715-722 より引用・改変

転びやすさに対する対策

 お薬については、服用を止めたり量を減らせば、比較的短期間で、転びやすい状態ではなくなる場合もありますので、かかりつけ医に相談するとよいと思います。特にお薬を一日に6剤以上飲んでいる方はポリファーマシーという状態で、有害な出来事が起きやすく、転倒の発生率が高いことも報告されています。

 歩行、バランス、筋力などの運動機能の低下は、一朝一夕には改善することは難しいかもしれませんが、これらのロコモティブシンドローム(ロコモ)の状態を改善するためには、下の図にあるような、家の中でも容易にできる運動が、ロコモーショントレーニング(ロコトレ)として紹介されています。下の図2を参考に、できれば朝、昼、夕の3回運動を習慣づけるとよいと思います。

図2 ロコトレ
日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモONLINE より

 歩く時は、つま先をできるだけ上に向けるようにし、踵(かかと)から接地するように心がけましょう。床や地面にあるものにつまずいたり、ひっかかったりしにくくなります。

 また、ビタミンD不足が転倒の危険因子となることが知られています。特に皆さんの最近の傾向として、紫外線を避けることに神経を使いすぎていて、陽に当たることがだんだん少なくなってきていることと関係していると思いますが、日本人の8割がビタミンD不足であるという報告もあります。季節にもよりますが、夏季でも熱中症を予防しながら、一日15分から20分は陽に当たるように心がけるとよいと思います。冬季は少し長めの方がよいでしょう。ビタミンDが多く含まれる食品をとったり、食事だけでは改善されない場合は、サプリメントを考慮してもよい場合もあります。

転倒の外的要因としては、室内や戸口の段差、滑りやすい床、つまずきやすい敷物、履物、家具、電気器具のコード類、暗い照明などです。生活環境の整備など目に見える形の対策が取りやすいと思いますので、身の回りをまずチェックして、改善できるものは、改善しましょう。

転倒した場合の注意点

 高齢の方が転倒した場合、骨折してしまうこともあります。転倒後歩くだけでは痛みはなくても、立ち上がったり、横になる動作で腰や背中に痛みがある場合は、背骨の骨折が疑われます。また、股関節周囲に痛みはあるが歩ける場合でも、片脚で立てなかったら、脚の付け根の骨(大腿骨近位部)が折れていることもあります。初診時にレントゲンで骨折はないと言われた場合でも、骨折によるズレや変形がほとんどない例では、骨折していてもレントゲンではわからないことがありますので、要注意です。痛みが続く場合は、再度整形外科の受診をおすすめします。再度のレントゲン検査やCT検査、MRI検査が診断に役立つ場合もあります。大腿骨近位部の骨折は寝たきりにつながる可能性もあり、特に注意が必要です。転びやすくなっている方は骨粗鬆症がないかを調べることをお勧めします。もし骨粗鬆症であればお薬での治療が必要となります。

 また、頭を打った場合、頭蓋内出血を起こし、ときに生命にかかわることもあります。特に抗凝固薬(血液をさらさらにする薬とよく表現されます)を飲まれている場合には重症化しやすいこともあるので、念のため医療機関の受診をお勧めします。注意していただきたいことは、頭のケガによる症状は、頭を打った後すぐに起こることもあれば、数日から数カ月経ってから起こることもあります。最初に症状や検査等での異常所見がなくても、しばらく経過を見て慎重に対処する必要があります。

おわりに

 転倒は、ロコモやフレイルになっている方によく起こります。国立長寿医療研究センターでは、転びやすい原因を含め、多方面の専門家により、トータルにお体の状態を評価して、どのようにするとより健康になるかをアドバイスする「ロコモフレイル外来」を開いていますので、ホームページをぜひご参照ください。