最近、もの忘れで受診される患者さんの中に、実は「てんかん」の患者さんがたくさんいることが分かってきています。高齢者のてんかんは近年注目されてきて、少しずつ、色々なことがわかるようになってきました。
今回、高齢者てんかんについて、どんな病気なのか、ご紹介します。
てんかんは子どもの病気というイメージがありませんか?実は大人のほうが多いのです。
少し前の研究で、65歳をこえると100人に1人以上がてんかんを発症することがわかっています。
てんかんは「けいれん」をおこす病気と思われがちです。しかし、実際には、ほとんどの高齢のてんかんの患者さんは、けいれん以外の症状が中心で、一度もけいれんを起こしたことがない方もたくさんいます。てんかんの発作中や、発作前後では、ぼんやりとしてその間の出来事を忘れるため、認知症に間違われていることも時に見られます。
高齢者のてんかんには薬がよく効くことが多く、きちんと診断されて治療を始めれば症状がなくなってしまうこともあり、生活が様々な面で改善することが期待できます。
てんかんは脳の神経細胞が過剰に活動することによって、一時的な症状が何度もでるものとされています。脳の一部に傷が入ってしまうことが原因ですが、その原因となる病気としては色々なものがあり、大人の場合では、古い脳梗塞や脳出血、頭の怪我や、認知症を起こす病気など、とても多様です。
その他、一見すると寝ているだけにしか見えない発作、家族しかわからないような、なんとなくおかしい程度の発作、急な感情の変化といった発作もあります。治療を始めてみてはじめて発作の症状だったとわかる場合もあります。
色々な症状がてんかんで起きてきます。
もちろん、一人の患者さんで様々なことがおきることもあります。しかし、多くの場合にはどれか一つの症状を繰り返すことが多いです。あれっ?と思う症状があれば、その症状の繰り返しがないかよく見ていただくことがとても大事です。
本人はそのときのことを覚えていないことが多く、発作があったことに気づいていないことがほとんどです。そのため、御家族や周囲の方の協力が大切です。おかしいな、と思う症状がありましたら、ビデオなどの動画を撮っていただくことで、診断や治療の大きな手助けになります。
まずは診断が必要です。発作が疑われるときの症状を詳しく聞かせて(ビデオ動画などをみせて)いただくことが大事です。また、脳波や脳のCT・MRI検査などを補助的な診断のために行うことが通常です。
診断後は薬を飲むことで症状の改善を目指すことができます。
てんかんの発作を生じなくすることが目標です。
時々、お昼寝など、これまで発作と思っていなかった症状も発作であったことがわかる方もいます。また、認知機能が明らかに改善する方も少なからずいます。
最近では副作用の少ない薬も増えてきて、基礎疾患や副作用など、状況に応じて使い分けることができるようになってきました。高齢者やいろいろな病気をかかえる方でも内服での治療がほとんどの場合可能です。
きちんと薬を飲むことで70%以上の人で発作がなくなると言われています。最近では薬剤の進歩により、さらにこの確率は高まっていると考えられます。
大人になってからのてんかんでは、多くの場合、脳に血管障害や、脳細胞の変化など、何か原因があることが多いため、薬をやめるとすぐにてんかん発作が起きるようになることが多いです。そのため、てんかんの薬は中断しないほうがいいと言われています。
てんかんは誰にでもおきる病気です。
自分や家族がてんかんかもしれない、認知症と思っていたけど何かおかしい等、まずは医師に相談をしていただくことで治療や症状改善への道が開けるかもしれません。
2021年の4月より高齢者を中心として成人発症のてんかん診療のために、神経内科に「高齢者てんかん外来」を新規に開設しました。
ご心配な症状がおありの場合は、高齢者てんかん外来や神経内科外来へご相談ください。高齢者てんかん外来は初診も予約受付しております。