最近においを嗅いでいますか?においの感じ方は習慣や環境によって個人差が大きく、よくわかるにおいも人によってバラバラです。においの低下は意外と気がつきにくく、ほかの人がにおっているのに自分がわからなくて、はじめてにおいの低下に気がつく場合や、いつから衰えてきたのか本人でもよく覚えていない場合があります。また視力や聴力の低下のように周りの人が気づくこともないため、においの低下がずいぶんたってから見つかることがあります。
もともとにおいは、動物にとって餌をみつけるための大事な感覚です。動物が縄張りを主張したり、異性をひきつけるフェロモンとしてなど、生命の維持、種の保存の役割があります。
人の生活にとっても、においは大事な役割があります。痛んだ食べ物も、においがわからず食べてしまうと食中毒の原因になります。火事の煙や有毒なガスのにおいがわからなければ、逃げ遅れて命に関わります。
さらににおいには精神的な役割もあります。たとえば 花やアロマなどのよい香りは満足感を与え、生活に潤いを与える効果があります。また、においは記憶力とも関係があることが知られています。特定のにおいを嗅いだときに、昔の記憶をふと思い出すような経験は誰にでもあるのではないでしょうか。においは単に嗅ぎ分けるだけではなく、本人にとって好き嫌いなどの感情や判断にも作用します。
ほかにも、においは食事のおいしさの一つとして大事な要素です。においがわからずに食事をしても、風味を感じることができなくてはおいしさも半減してしまいます。
鼻炎や鼻茸、蓄膿症状などで鼻水、鼻づまりがあると、においの分子がたどり着くことができません。においを感じるには鼻がよく通っていることが重要です。また鼻がつまったまま長期間放置しておくと、においの神経細胞が減ってしまうリスクもあります。
インフルエンザなどでは、風邪が治った後に、においが戻らない場合があります。ウイルスの感染がにおいの神経細胞の数を減らしてしまうためと考えられています。ある程度においが戻っても、以前のにおいとは違ったにおいに感じることもあります。最近は新型コロナウイルスの感染後でもにおいがわからなくなることがあると報告されていますが、詳しいことはまだわかっていません。
歳以上になると、年をとるにつれて、においも低下することが知られています。またどの年代においても女性のほうが男性よりも若干優れていると言われています。
アルツハイマー病やパーキンソン病などではにおいも低下します。これらの疾患では認知機能の低下よりも、においの低下のほうが数年早く起こることが知られています。何かにおっていても何のにおいかがよくわからないことが特徴です。
においの低下がある場合は、もの忘れなどが起こらないか注意しておく必要があります。
におい低下で受診した場合、まず内視鏡検査や副鼻腔CTで鼻のつまりがないかを調べます。においの検査は、注射でにおいをあてる検査、においの種類をあてる検査、においの濃度を調べる検査などがあります。またにおいと関連がある味覚の検査も行います。
においを劇的によくする治療はまだありませんが、においを常に嗅ぐようにして、意識して嗅覚を刺激することが重要です。近年、漢方薬を使う治療も行われるようになりました。
嗅覚味覚外来では予約制で診察を行っています。診察を希望される方は耳鼻科外来までお問い合わせください。