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国立長寿医療研究センター

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ヒト遺伝子多型とオミックスデータの統合解析ため基盤構築研究

「ヒト遺伝子多型とオミックスデータの統合解析のための基盤構築研究」についてのお知らせ

この研究は、国立長寿医療研究センターバイオバンクから分譲を受けた試料・情報を用いて解析を行うものです。この研究に関するお問い合わせなどがございましたら、下記の「16.この研究に関するお問い合わせ先」までご連絡いただけますようお願い致します。

1. 研究課題名

「ヒト遺伝子多型とオミックスデータの統合解析のための基盤構築研究」 (倫理・利益相反委員会受付番号Y 2020-147)

この研究課題については、理化学研究所横浜研究所倫理・利益相反委員会による倫理審査を経て、理化学研究所理事長の実施許可を受けております。

2. 研究責任者及び分担研究者の氏名及び所属研究機関(部署名)

研究総括代表者

  • 山本一彦 理化学研究所(生命医科学研究センター センター長)

分担研究者と所属機関(部署名)

  • 寺尾知可史 理化学研究所(生命医科学研究センター ゲノム解析応用研究チーム チームリーダー)
  • 池川史郎 理化学研究所(生命医科学研究センター 骨関節疾患研究チーム チームリーダー)
  • 伊藤薫 理化学研究所(生命医科学研究センター 循環器ゲノミクスインフォマティクス研究チーム チームリーダー)
  • 鈴木亜香里 理化学研究所(生命医科学研究センター 自己免疫疾患研究チーム 副チームリーダー)
  • 尾崎浩一 国立長寿医療研究センター (メディカルゲノムセンターこのリンクは別ウィンドウで開きます 部長)

3. 当該研究の意義、目的

 多因子疾患の中で免疫系が関与する疾病 (自己免疫疾患、アレルギー疾患、感染症、癌、移植など) には適切な治療が少ない疾病も多い。これらの問題を解決し、よりよい治療法を見つけ出すために、ヒト免疫機能の十分な理解と疾患における病態の適切な把握が必要であると考える。このため、本研究では、健常人由来のリンパ球など免疫担当細胞を対象としたオミックス解析と遺伝子多型解析をベースにした新しい疾病研究の方法論を確立し、病態の理解と創薬の標的確定に重要な情報を蓄積することを目的とする。 これまで重点的に行ってきたゲノムワイド関連解析が自己免疫疾患をはじめとする多くの多因子疾患に用いられ、リスク多型とその機能が明らかにされつつある。しかし現時点で、これらの情報は疾患発症機構の理解や創薬に十分に生かされておらず、それは疾患のリスク多型やリスク遺伝子がどのように機能的に変化し、その結果疾患に結びつくかの理解が不十分であるためと考えられる。疾患リスク多型の機能解析は、特定の細胞の特定の遺伝子発現の量的変化やスプライシング変化に関係していることが明らかになりつつあるが、これらの解析は疾患に関わる細胞種、組織別に実施することが重要であるため、いまだその情報は十分であるとはいえない。本研究では、多因子疾患における疾患リスク多型の多くが、遺伝子発現やスプライシングに影響を与える遺伝子多型であることを基礎として、特定の細胞の遺伝子発現、エピゲノム変化、蛋白発現、パスウェイ変化、細胞変化などのオミックス解析から、疾患に対して「因果関係をもつ中間形質としての疾患に関わるファクター」を描出し、疾患成立や進展に対して因果関係を有する要素を同定することを最終目標とする。そのための基盤データとして、健常人における免疫担当細胞のそれぞれのサブセットにおける、遺伝子発現を中心とした上述のオミックス解析を遂行することが重要と考える。その先駆けとして、研究実施研究者の山本らは、各疾患のゲノムワイド関連解析と健常人末梢血免疫担当細胞のサブセット別アレル別遺伝子発現量解析の統合解析を実施しており、ゲノムに関連する研究では世界的な拠点のひとつであることからも本研究は非常に重要であると考えている。
 さらに、多因子性疾患では環境因子も重要な要素と位置づけられており、近年注目されている微生物叢に関する研究も実施する。腸内細菌などの微生物叢は疾患発症と密接に関連していると考えられる。微生物叢の多様性と宿主であるヒトゲノムの多様性の関係に着目し、オミックス解析とあわせた多層解析を行い、より詳細な疾患発症メカニズムにアプローチする。
 またゲノム情報をはじめとするこれらの情報は人種特異性を示すことも多いため、本研究ではアジア人データを収集するが、比較対象として、その他の人種に協力を依頼する可能性もある。
 最終的に本研究より得られる解析結果より病態の理解と創薬の標的確定に重要な情報を提供することを目的とする。

4. 研究に使用する情報

遺伝子解析情報、診療情報(年齢、性別、既往症情報など)、

5. 当該研究の方法

 ヒトの免疫システムに関与する健常人由来担当細胞種毎の遺伝子発現、エピゲノム解析、転写因子結合解析を行い、カタログを構築する。各疾患のリスク遺伝子多型とこれらのデータを比較し、遺伝子多型とそれぞれのステイタスによる違いを調べるため、マルチオミックス解析を行い、遺伝子多型によって表現型としての遺伝子発現量やエピゲノムステイタス、クロマチンステイタスがどのくらい変化するかを調べる。まずは日本人健常人の末梢血(150-200人を目標)から採血し、全血そのまま、またはPeripheral Blood Mononuclear cell (PBMC)に精製し、25種類ほどの免疫担当細胞サブセットをセルソーターで分離する。もしくは分離せずにシングルセル化し、解析する。各分画細胞において定常状態および刺激後の遺伝子発現 (mRNA)を次世代シークエンサー (NGS)にて解析し、遺伝子発現、遺伝子多型をカタログ化する。さらにこの細胞分離の段階で、エピゲノムの解析に用いる検体を採取し、網羅的ヒストン修飾解析を行いカタログに加える。またシングルセルを用いた同様の解析も実施することで、疾患に関わる特定の細胞を同定することを目標とする。また層別化解析のため末梢血血液検査一般の項目、ミトコンドリア活性、性別、年齢、既往歴、家族歴の情報を用いる。
 サンプル収集については、理研にて以下に規定された手順に則り、書面による同意をえた上で、提供されるヒト由来試料及び、臨床情報を用いる。連結可能匿名化は理研にて行う。匿名化されたヒト由来試料のデータと臨床情報は以下に規定された管理手法にて厳重に管理され、情報的に保護される。サンプルについても規定された手法にて厳重に保管される。
 これらの匿名化された健常人由来試料より、細胞をそれぞれ約25種類(T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、モノサイト、好中球など)にセルソーターを用いて分画する、あるいはシングルセルで実験に用いる。これらの細胞からはゲノムDNA、RNA、クロマチンを抽出する。抽出したDNAを用い、ジェノタイピングアレイや次世代シーケンサーによるホールゲノムシーケンシング法などを用いてジェノタイピングを行い、全ゲノム相関解析や疾患関連多型や変異の網羅的解析を実施する。またエピゲノム解析として、次世代シーケンサーを用いて、メチローム解析、すなわちヒストンメチル化解析、メチル化DNA解析を行う。またゲノムに結合したタンパク質に対して、抗体を用いた免疫沈降を行い、同時に沈降するゲノムDNAの解析を次世代シーケンサーを用いて行う。RNAについては次世代シーケンサーやNanoporeテクノロジーをもちいたホールトランスクリプトーム解析、転写開始点の同定、また、エンハンサー解析を実施する。発現カタログとそれぞれの解析対象疾患における疾患リスク多型とを比較参照するためにバイオバンクジャパンのデータベースの情報を用いる。各疾患で主に関与する細胞とその細胞での疾患成立に因果関係を持ち中間形質として位置づけられる遺伝子発現を推察し、さらに疾患発症に至る過程での状況を確定する。また人種間の比較のためにNIHのデータベースにあるデータを用いる。
 さらに、パスウェイ解析や転写因子エンリッチメント解析等、統計学的手法により、これらの中間形質の中から疾患成立に因果関係を持つものを確定することで、病態の理解と創薬への展開の方向性を明確化する。
 健常人検体においては個人差とゲノムの関係を量的に解析し、疾患とのかかわりを研究する基盤として情報取得し、また解析方法を確立することを目標とする。これらの網羅的データを組み合わせて、表現型の原因となる遺伝子を同定し、治療方法や診断方法の開発に用いる。さらに東京大学アレルギーリウマチ内科の作成した自己免疫疾患患者・健常人の免疫細胞遺伝子発現データやeQTLデータについても二次利用し、統合解析することで多様な炎症状態における遺伝子発現予測モデルを構築する。
 各研究機関より提供された情報と本研究で収集される情報を統合し、マルチオミックス解析を行い、疾患に関与する遺伝子の同定を目指す。研究に使用する情報、試料の他研究機関への提供 本研究実施のため当センターで収集した試料とそれらに付随する臨床情報、遺伝子情報を上記2記載の研究機関(国立国際医療研究センター)に送付します。その場合、個人を特定する情報は削除し、匿名化した状態で提供します。

6. 研究期間

2018年4月1日~2023年3月31日

7. 対象となる方・研究対象者として選定された理由

研究対象がヒト疾患であることから、日本人健常人を中心としたヒト由来試料、情報の基盤的データが必要であるため。またアジア人特異的なデータは世界的に見ても少ないため、当研究所での実施は非常に有意義であるため。

8. 研究対象者に生じる負担並びに予測されるリスク及び利益

プライバシーの保護について十分に配慮され、対象者個人に対する直接の利益も想定されません。

9. 研究実施について同意しないこと及び同意を撤回することの自由について

ご自身の試料・情報が、当該研究課題に利用されることにご同意いただけない場合には、研究に使用する試料・情報からあなたにかかる試料・情報を削除いたしますので、16.に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。研究期間の途中であっても構いません。また、試料・情報の削除依頼をしたことにより、不利益な取扱いを受けることはございません。ただし、ご連絡をいただいた時点で、研究結果が学会や論文等で既に公開されている場合は解析結果から削除できないことがあります。

10. 研究に関する情報公開の方法

本掲示により研究に関する情報公開といたします。研究結果の公開についてはホームページ掲載・学会発表・論文投稿などを通じて行う予定でおります。

11. 研究計画書等の閲覧について

他の研究対象者等の個人情報等の保護及び当該研究の独創性の確保に支障がない範囲内で研究計画書及び研究の方法に関する資料を閲覧することができます。閲覧を希望される場合には、16.に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。

12. 個人情報等の取扱い(匿名化する場合にはその方法を含む。)

この研究で使用する情報(上記 項目4)は、バイオバンクから分譲を受けます。情報に含まれる個人を特定する事項(氏名、生年月日、住所、病院ID等)は、バイオバンクの匿名化システムによって削除され、新たな符号が付されます。分譲以降はこの符号で管理されます。新たな符号と個人を結びつける対応表はバイオバンクのみが保有し、研究倫理指針の定める個人情報管理者によって保護されます。

13. 試料・情報の保管及び廃棄の方法

バイオバンクより分譲された情報については、研究期間終了後5年もしくは学会や論文等での発表から5年の間保管されます。情報は電子媒体に記憶する形で生命医科学研究センター内において施錠保管いたします。保管期間満了後は速やかに記憶媒体から削除いたします。

14. 研究の資金源等、研究機関の研究に係る利益相反及び個人の収益等、研究者等の研究に係る利益相反に関する状況

  • 研究資金:科学研究費助成事業
  • 利益相反:本研究における利益相反はありません

15. 研究対象者等及びその関係者からの相談等への対応

この研究に対する問い合わせは下記16.において随時受け付けます。この研究は、当該被験者が識別される保有する個人情報はございませんので、保有する個人情報についての開示は行っておりません。

16. この研究に関するお問い合わせ先

〒230-0045 神奈川県横浜市鶴見区末広町1-7-22
理化学研究所 生命医科学研究センター 研究所長 山本一彦
電話番号 045-503-9111(代表)

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