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「胃ろう」を勧められた時にどのように考えたらよいですか?

はじめに

 われわれが生きていくためには栄養が必要です。普通は口から栄養を摂取します(経口摂取)が、口から食事が全く食べられない時、または少しは口から食べることができてもそれだけでは足りないときに「胃ろう」が検討されることがあります。主治医から「胃ろう」の話をされたときにはどのように考えたらよいでしょうか。

 

「胃ろう」とは?

 「胃ろう」とは、腹部に小さい穴を開けてチューブを入れて、胃と繋いでそこから直接栄養を入れる方法です。胃ろうは内視鏡を使ってPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼ばれる方法でつくられることが多いです。PEGは「ペグ」と読みます。ただし、胃の手術後など、いくつかの場合では開腹手術をしてつくることもあります。胃ろうの管(カテーテル)は定期的に交換が必要になります。

口から食べられない時に「胃ろう」以外の方法はありますか?

 口から食べられない時に栄養を入れる方法としては、大きく静脈栄養法と経腸栄養法に分けられます。静脈栄養法は静脈から栄養を入れる方法です。経腸栄養法は腸を使う方法であり、胃ろうも経腸栄養法の1種です。腸が使える場合は、経腸栄養法を使うのがよいとされています。われわれが長い間歩かないと歩けなくなってしまうように、腸も使わないでいると弱ってきて、消化吸収や腸の免疫機能が落ちてしまいます。また、経腸栄養法は静脈栄養法と比べて感染しにくいです。ただし、腸が機能していない場合には経腸栄養法は使えません。

静脈栄養法にはどのような方法がありますか?

 静脈栄養法には、細い静脈から栄養を入れる末梢静脈栄養法と太い静脈から栄養を入れる中心静脈栄養法があります。末梢静脈栄養法はよくみる普通の点滴から栄養を入れますが、この方法では人間が必要な栄養の量を十分に入れることができません。そのため、2週間以上口から食べられない時には末梢静脈栄養法は推奨されていません。もちろん、ある程度口から食べられる時は末梢静脈栄養法を併用することで栄養が足りることもあります。中心静脈栄養法はもっと心臓に近い静脈から栄養を入れる方法であり、経口摂取なしでも十分な栄養を入れることができます。ただし、中心静脈栄養法では感染のリスクがあり、その場合は一定の期間、管(カテーテル)を除去して、再度入れる必要があります。

経腸栄養法にはどのような方法がありますか?

 経腸栄養法には経口摂取、経鼻胃管、胃ろう、腸ろうなどがあります。われわれが普段行っている経口摂取も経腸栄養法に含まれます。消化管はできるだけ使うのが望ましいので、なるべく上の方、つまり上部消化管から使うのがよいです。したがって、経口摂取は理想の経腸栄養法になります。経鼻胃管は鼻から青い管を入れます。鼻から常に管が入っていますので、決して快適ではありません。苦しくて自分で抜いてしまう方もいます(自己抜去)。 そのため、短期間ならよいのですが、長期の経鼻胃管は勧められていません。4週間以上経口摂取以外の方法が必要な場合には胃ろうが推奨されます。医学的理由などで胃が使えない場合には小腸を使う腸ろうが行われることもあります。経鼻胃管、胃ろう、腸ろうではいずれも十分な栄養を与えることが可能です。

胃ろうは延命治療ですか?

 人生の最終段階において、胃ろうの是非が問われることがあります。医療には本人の意思が重要ですが、認知症などにより本人の意思が十分に確認できないときは特に悩ましくなります。このような場合では医療者の側も、胃ろうを勧めることにも勧めないことにも葛藤があります。自分で意思表示ができなくなったときにどうしたいかは普段から家族と話し合っておくのがよいと思います。また、胃ろうは必ずしも延命治療ではなく、胃ろうを使いながら働いたり、1人で生活ができている方もいます。

胃ろうをつくった方がよい場合はありますか?

 胃ろうは医学的には非常に優れた栄養投与方法です。様々な病気で入院したときに、食欲がなく口からしばらく食べられないことがあります。食べないと体力も落ちます。体力回復のためにはリハビリテーションによって動くことが重要ですが、動くためには栄養が必要ですので、栄養が不十分なままにリハビリテーションはなかなかできません。高齢者では元々栄養が足りていない方も多いので、そのような方が病気をすると栄養不足がさらに進むことになってしまいます。栄養を付けてからリハビリテーションを行うのが効果的です。もう1つ、重度の摂食嚥下障害、つまり飲み込みに非常に問題がある場合に胃ろうが検討される場合があります。飲み込みの障害が軽度であれば、とろみを付けたり軟らかい食べ物に変えることで食べられることも多いですが、経口摂取が困難な場合には短期的には経鼻胃管が使われます。ただし、鼻から入っているチューブは喉を通っており、喉にチューブがあると喉の動きを妨げますので、ますます経口摂取が困難になります。そのため、一時的に胃ろうをつくり、喉にチューブがない状態にして食べるリハビリテーションを行うと効果的です。リハビリテーションの結果、口から食べられるようになれば、胃ろうは抜去可能です。また、重度の摂食嚥下障害があっても他に大きな問題がなく、働いたり、自分の意思を十分に示せる方についても胃ろうが効果的と思われます。

胃ろうをつくると、口から食べることはできませんか?

 胃ろうがあっても口から食べられます。高齢者でも1日1,500Kcalから2,000Kcal程度の栄養が必要なことも多く、摂食嚥下障害、体力低下などの理由によって、口から全部食べることができない人は、一部を口から、残りの必要な栄養を胃ろうから入れることも可能です。水分は固形物よりも誤嚥しやすいので、固形物は口から食べて、水分を胃ろうから入れている人もいます。特に夏は脱水になりやすいので、水分の十分な補給が必要です。ただし、重度の摂食嚥下障害などにより口から食べることを勧められない場合ももちろんありますので、主治医とよく相談してみて下さい。

胃ろうは1度つくると、やめることはできませんか?

 そのようなことはありません。摂食嚥下障害がよくなったり、病気が治って体力が回復すれば胃ろうを抜去することができる場合もあります。

摂食嚥下障害のある方へ

 摂食嚥下障害の有無や程度を詳しく調べるにはリハビリテーション科で嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査などが可能です。リハビリテーション科にご相談下さい。

おわりに

 胃ろうは非常に優れた栄養投与方法です。胃ろうは絶対行ってはいけないと考えている方もいますが、必ずしも正しい考え方ではありません。胃ろうを行った方がよい場合、行わなくてもよい場合など様々な状況がありますので、人生の最終段階、それ以外の場合などご家族も交えて普段から話し合っておくのがよいと思います。