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動悸や立ち眩み、軽く見ていませんか?~心房細動とその治療に関するご紹介~

はじめに

 当センターの循環器内科では、2024年4月より心房細動という不整脈に対するカテーテル・アブレーション治療を開始しました。既に当センターで治療を受けた方は、2025年の年の瀬までには100名を越える見込みで、来年度には不整脈専門医研修施設として認定予定です。
 心房細動は不整脈の一つですが、とりわけ高齢者で急激に増加する疾患であり、高齢化の進行した我が国では100万人以上の患者さんがいると推定されています。心房細動は、動悸や息切れなどの不快な症状を引き起こすだけでなく、心不全や広範囲脳梗塞の原因となり健康寿命を大きく損ねる不整脈です。当センターの設立目的に「高齢者の健康寿命の延伸」が掲げられています。従ってこの阻害因子となる心房細動への積極的な治療を、当科に於ける最重点項目として名古屋大学循環器内科・医局より複数名の医師派遣の下で推進しております。
 本項では、不整脈の中でも特に心房細動に焦点を当て、本疾患の概要と当センターにおける治療について紹介します。

心房細動とは?

 心臓は、規則正しく収縮(整った脈:整脈と呼ばれます)することによって、効率よく全身へ血液を送り出すポンプとして機能しています。健康な方では、安静にしている際の心拍数はおよそ1分間に60から70回で、飛んだり、跳ねたり、走ったりすると、動きに合わせて一過性に心拍数が増加し、休めば心拍数はゆっくりと元の状態へと戻っていきます。

 このような心収縮の規則性が崩れた状況を不整脈といいます。ひとくちに不整脈といっても放置可能なものから、直ちに対処しなければ死に至る重篤なものまで、実際には多種多様な不整脈が世の中には存在します。その中で、近年非常に増加している不整脈が冒頭で述べた心房細動です。心房細動では心臓が効率の悪いポンプに変化するため、さまざまな循環不全による症状(動悸・疲れ・立ち眩み・冷や汗)を自覚することが多いです。しかし、中にはこの状況に慣れてしまって自覚症状がない方もおられ、このような方が医療機関を受診しないまま、ある日重篤な脳梗塞を起こして寝たきりへ移行することが大きな問題とされています。

不整脈と心房細動の関連性は?

 例え若い方であっても、ストレスや睡眠不足などの状況では、一定の間隔で脈が抜ける“結滞”は時折出現します。これは期外収縮と呼ばれるもので、それ自体は危険ではありません。しかし、このような期外収縮が引き金となって、心房細動を誘発することが明らかとされています。前項でも触れたように、ひとたび心房細動になり、そしてこれが継続すると、発症者の1/3が死亡し1/3が寝たきりへ移行するという、きわめて予後の悪い重篤な脳梗塞を発症し得ることが報告されています。とりわけ75歳以上、高血圧、糖尿病、心不全、一過性脳虚血発作既往のある方で、これらの該当項目が多い方ほど脳梗塞を発症する危険性が高くなります。
 実際これまでにも、著名な方が心房細動によりある日突然脳梗塞を発症して表舞台から去っていかれたというエピソードは、枚挙にいとまがありません。

当センターの不整脈・心房細動の診断は?

 どのような不整脈も、心臓の負担が大きくなると増えてくるという特徴があります。従って、心臓弁膜症や先天性心奇形など、心臓が過剰に働かされるような構造的な異常がないかどうかを評価するための心臓超音波検査、心疾患や内分泌疾患の有無に関する検査、不整脈が命に係わる危険性のあるものか放置しておいても良いものかを判断するための検査、そして不整脈による心臓以外の臓器への障害の有無を評価する検査をすべて外来で実施します。ほとんどの患者さんでは、初回外来の際に検査を予約し、検査(1時間程度が2回)、2回目の外来で結果を説明させていただき、今後の方針をお伝えしています。
 このような検査結果から、何らかの治療が必要であると判断されれば、改めて薬物治療や入院して不整脈を根治させるカテーテル・アブレーション治療をお勧めしています。

当センターのカテーテル・アブレーション治療はどんなもの?

 当センターでは、3泊4日でカテーテル・アブレーション治療を実施しています。基本的には、心腔内でカテーテルと呼ばれるリード線を操作し、左房と肺静脈との間の電気的な交通を遮断するべく焼灼ないし電磁パルス法を実施します。治療自体は選択する手技により2時間から3時間程度で終了します。
 なお、当センターで実施するカテーテル・アブレーション治療は静脈麻酔下に実施していますので、手術室に入ると眠ってしまい処置終了後に目覚めるため、ほとんど苦痛を感じることはありません。

おわりに

 繰り返しになりますが、心房細胞は、ある日突然、脳梗塞を引き起こし、寝たきり状態になってしまったり、最悪の場合死に至る可能性のある恐ろしい病気です。そのため、例え特別な症状はなくても、健診で不整脈を指摘されたり、脈の乱れや動機、立ち眩みなど体調に違和感があるときには、積極的な医療機関の受診をお勧めします。