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体重減少の原因は?

はじめに

「痩せた?」、ダイエット中の人にはとてもうれしい一言です。しかし、思わぬ病気が潜んでいる可能性もあります。今回は、体重減少(痩せ)の主な原因について解説したいと思います。

やせている画像

体重減少のメカニズム

ヒトの体は、血液・体液などの水分・塩分、筋肉・臓器(内臓・脳)などのタンパク質・脂肪、骨などの無機質(ミネラル)からできています。消化管から体内に取り込まれた水分・塩分・ミネラルは直接、食物中の三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂肪)はそれぞれブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸とグリセリンに分解されて体内に吸収されます。そして、ブドウ糖は呼吸により取り込まれた酸素の作用で活動のためのエネルギーを産み出し、アミノ酸はタンパク質に、脂肪酸とグリセリンは脂肪に合成(同化)されて筋肉や臓器などを維持しています。余ったブドウ糖は、グリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられますが、使われないと脂肪に置き換わり、余った脂肪とともに脂肪組織に蓄えられます。一方、ブドウ糖・グリコーゲンを使い果たすと、筋肉や脂肪を分解(異化)して活動に必要なエネルギーを維持しようとします。一連の過程で生じた「老廃物」は、余分な水分・塩分とともに「尿」として排泄されます。このような体とその機能を維持する巧妙な仕組みを、「代謝」と呼びます。体重減少は、食事摂取から代謝過程のどこかで消費するエネルギーとの不均衡(アンバランス)が生じ、エネルギー不足になって発生します。また、水分は体重の三分の二を占めるため、脱水症も急激な体重減少を引き起こします。

栄養摂取量の不足による

偏食や重度の歯周病・義歯の不適合など咀嚼障害があると栄養摂取量の不足を招き、体重減少に繋がります。好き嫌いを極力なくすこと、偏食で不足する栄養素を知り、補うように努めること、そして定期的な歯科受診をお勧めします。神経疾患や加齢による飲み込みの障害(嚥下障害)もまた、体重減少を招きますので対策が必要です。

 

消化・吸収不良による

食道を通過し、胃内で胃酸分泌を受けじっくりと揉みほぐされた食物は、十二指腸で脂肪の分解を助ける胆汁と、炭水化物・タンパク質・脂肪の分解酵素を豊富に含む膵液の分泌を受けます。そして小腸から、それぞれブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸とグリセリンとして体内に吸収されます。栄養が体内に十分に取り込まれないような胃腸の疾患は、体重減少の主な原因となります。食欲不振、腹痛、下痢などの便通異常がある場合は消化器内科を受診してください。

代謝・内分泌異常による

ブドウ糖はすべての細胞の活動を支えるエネルギーの源、いわば「ガソリン」ですが、細胞内に入るためにはインスリンというホルモンが必要です。インスリンの作用が不足するとブドウ糖が細胞内に入れず、「ガス欠」が生じます。この状態が糖尿病による糖代謝障害で、食欲の亢進と体重減少を引き起こします。血糖値が高く、尿糖排泄増加により多尿となるため、口が渇く、飲水が増える(多飲)などの症状を伴います。ダイエットによらない体重減少が出現したら、直ぐに代謝内科を受診してください。本来は、症状のない段階(健診)で発見し、治療を開始するべき病気です。

一方、尿量を制御する抗利尿ホルモンの分泌不足をおこす尿崩症では、多尿、口渇、極端な多飲(3Lから5L)と糖尿病とよく似た症状が見られますが、通常、食欲の変化はありません。手の震えや動悸を伴う場合は、新陳代謝を司る甲状腺ホルモンの分泌過剰、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の可能性があります。まれな病気ですが、副腎腫瘍などからカテコラミンという昇圧物質が間歇的に異常分泌される褐色細胞腫では、発作的な血圧上昇による頭痛・吐き気など気分不快の反復と体重減少がみられます。

炎症性疾患など消耗による

結核慢性関節リウマチなどの炎症性疾患や、悪性腫瘍による消耗状態では体重減少がよく見られます。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、代謝に必要な酸素が十分でないためエネルギー産生が不足気味となり、体重減少を起こします。微熱や息切れなどの症状がある場合、専門診療科の診療が必要です。

サルコペニア・フレイル

近年、老年医学の視点から注目されている状態で、サルコペニアは筋肉減少症、フレイルは加齢による可逆的な虚弱状態を指します。50代以降では筋肉量は徐々に減ることが分かっており、タンパク質摂取を意識的に行うことが必要です。また、筋肉を維持するには適度な運動が重要ですが、歩行のような有酸素運動は筋肉の異化を招くため、やりすぎは禁物です。一方、軽い負荷をかけて行う無酸素運動(いわゆる筋トレ)が筋肉の維持に有効と考えられています。食事を控えて運動をしないでいると、筋肉の異化が進み筋肉減少による体重減少からサルコペニアを招き、さらに体力低下からフレイルに進行します。また、筋肉は水分を維持するスポンジの様な働きも持つため、筋肉の減少は脱水症になりやすい体質の原因にもなります。ぜひ、良質な栄養摂取と適度な運動で、サルコペニア・フレイルの防止を心がけてください。

おわりに

「体重減少」をキーワードに代謝内科の視点から解説しました。体重はまさしく「健康のバロメーター」です。理想体重[身長(m)2×22(kg)]を意識して、健康にお過ごしください。そして万一、異常を感じた場合は、どうぞ遠慮なく代謝内科にご相談ください。

当センターの受診をご希望の方は、下記の「外来診療予約センター」へお問い合わせください。

外来診療予約センター

TEL:0562-46-2547
月曜日~金曜日の午後1時~午後4時まで

表1 体重減少の主な原因と疾患

原因

疾患

症状

栄養摂取量の不足

偏食

皮膚・頭髪の異常など

 

歯周病 義歯不適合

咀嚼障害

 

神経疾患 加齢

嚥下障害

消化・吸収不良

胃腸疾患

食欲不振 腹痛 便通異常

代謝・内分泌異常

糖尿病

食欲亢進 口渇 多飲 多尿

 

尿崩症

多尿 多飲 口渇 

 

バセドウ病

手指の振え 動悸

 

褐色細胞腫

発作的な血圧上昇による頭痛 嘔気など

炎症性・消耗性疾患

結核 

微熱 咳

 

慢性関節リウマチ

微熱 多発関節炎症

 

悪性腫瘍

微熱

 

慢性閉塞性肺疾患

息切れ

サルコペニア フレイル

サルコペニア

筋力低下

 

フレイル

体力低下

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