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あなたの息切れ(呼吸困難)の原因は?

「息が苦しい」という症状をどのように表現しますか?

今回は、「息が苦しい」「息切れがする」「呼吸が苦しい」などの症状について考えてみましょう。「息が苦しい」という症状には、色々な言い方がありますが、「呼吸がしづらい」「息が詰まる感じ」「空気を吸い込めない感じ」などと表現されることが多く、医学用語では、これらの症状をまとめて、「呼吸困難」と呼んでいます。

このように、呼吸困難は、客観的に表現するのが容易ではなく、「胸がドキドキする」「息が切れる」「胸が締めつけられる感じがする」「胸が痛い」「だるい」など人によってその表現の仕方がちがってきます。原因としては、肺炎や気管支炎、心不全あるいは精神的なストレスなど、実に様々な病気が原因となっている場合があります。

呼吸困難は、どのようにおこったか?

 実際の診療の場では、呼吸困難が、「突然におこったか?」、あるいは「知らない間にゆっくりとおこったか?」ということを尋ねられます。前者を急性発症、後者を慢性発症と呼びます。また、体を休めているとき(安静時)に呼吸困難があるのか、あるいは体を動かしたり運動したときだけに呼吸困難があるのかについても、尋ねられるでしょう。前者は、安静時呼吸困難、後者を労作時呼吸困難と呼んでいます。

 急性または慢性、あるいは安静時または労作時の呼吸困難かについての区別は、容易でない場合もありますが、病気の診断に大きな手掛かりとなりますので、該当する場合は、考えてみてください。

呼吸困難と呼吸不全の違い

呼吸困難は、ひとりひとりが感じる主観的な感覚ですが、これに対して、「呼吸不全」という用語は、厳密な医学的な取り決めがあります。

大気中から酸素を体に取り入れて、体内でできた炭酸ガスを体外に放出するという呼吸の本来の働きを果たせなくなった状態を呼吸不全と呼びます。血液に含まれる酸素のほとんどが赤血球中のヘモグロビンと結合して体の各組織に運ばれます。血液の中の酸素の量は動脈血ガス分析(血液中にとけている気体の量を調べる検査)で調べ、これは通常の静脈からの採血ではなく動脈に直接針を刺して血液を採ります。血液中の酸素が減少することを低酸素血症と呼び、動脈血中の酸素分圧(酸素の含まれている度合いを圧で示す)が60mmHg以下になることを呼吸不全と定義しています。指先にクリップをあてて測定するのは、動脈血酸素飽和度と呼ばれる測定値ですので、これとは異なったものです。

 また、呼吸困難を自覚するけれど、呼吸不全にはなっていないということが多くあります。反対に、呼吸不全になっているけれど、呼吸困難を自覚しないこともしばしばあります。酸素吸入による治療は、呼吸不全に対して実施するものです。呼吸不全になっていないという場合は、酸素吸入を実施するべきではありません。

呼吸困難と呼吸不全の図

呼吸困難と呼吸不全

呼吸困難をきたす主な呼吸器疾患

多くの呼吸器疾患が、呼吸困難の原因となります。緊急性を伴った初期治療が必要な基礎疾患や病態には、喉頭浮腫(気管の入り口の部位が炎症、外傷、アレルギー反応などによって腫れ空気の流入を妨げる状態)、気管支喘息発作、肺血栓塞栓症や自然気胸などがあります。

数時間から数日以内に起こる場合は亜急性と、さらに数日から数年の間に起こる場合は、慢性の呼吸困難と呼ばれます。肺や気管支の病気の種類は実に多くあり、その大部分が多かれ少なかれ呼吸困難を引き起こしますが、ここでは、比較的頻度の高い病気を紹介します。

気管支喘息

気管支が収縮して発作的な呼吸困難などの症状を引き起こす病気です。呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴(ゼイゼイやヒュヒューという音)などの症状があります。喘息発作に対する治療に加えて、発作を起こさないように継続する治療(維持治療)が必要です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

以前の喫煙が原因で、肺機能検査で1秒率が70%未満であることにより診断されます。数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難が典型的ですが、気道感染等をきっかけに悪化するとCOPD急性増悪と呼ばれます。
秒率とは思い切り息を吸い込んだ状態から勢いよく空気を吐き出した時に、最初の一秒間に肺活量の何%を吐き出せたかを表す数値

市中肺炎

通常,胸部X線の異常所見と発熱など炎症反応を示唆する臨床症状に基づいて診断しますが、呼吸困難を訴えることもあります。

肺線維症または間質性肺炎

このグループには、いくつかの病気が含まれます。もっとも多いのが、特発性肺線維症という名称の難病であり、労作時呼吸困難と咳嗽がもっとも多い症状です。

肺癌

進行した肺癌では、呼吸困難は頻度の高い症状です。

胸水貯留

肺を覆う胸膜に、体液が貯留する状態で、複数の原因があり、原因を同定するために溜まっている胸水を採取して調べる胸水検査が必要です。

呼吸困難を来たすその他の病気は?

心不全

心臓の心室機能の障害により生じる症候群です。一般に、左室不全では息切れや疲労が生じ,右室不全では全身のむくみが生じるとされています。

狭心症または冠動脈疾患

症状の主体は、胸痛と考えられていますが、しばしば呼吸困難などの非定型的な症状を示すことが知られています。

その他にも、様々な病気が呼吸困難を起こすことがあります。

貧血または慢性出血(特に消化管出血)

労作時呼吸困難の症状が多く、血液の中の酸素を運搬するヘモグロビンの減少が原因です。

神経筋疾患

筋萎縮性側索硬化症やデュシェンヌ型筋ジストロフィーでは横隔膜や肋間筋などの呼吸筋に病変がおよび呼吸困難を起こすことがあります。

過換気症候群

精神神経系疾患のひとつと考えられていますが、不安に関連した呼吸困難および頻呼吸であり、しばしば全身症状を伴います。若年女性にもっとも多く認められます。

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