ホーム > 病院 > もの忘れセンター > ニュース&トピックス > 脳の基底核領域の血管周囲腔拡大は認知機能検査 (前頭葉機能検査:FAB)の低スコアと関連する

2025年10月22日
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
国立大学法人琉球大学
学校法人久留米大学
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典、以下国立長寿医療研究センター)もの忘れセンター 佐治直樹副センター長と金城よしの外来研究員は、琉球大学や久留米大学医学部医療検査学科 室谷健太教授と協力して、脳MRI画像の異常所見(基底核領域の血管周囲腔拡大)1)が、前頭葉機能検査(FAB:Frontal Assessment Battery)2)と関連することを発見しました。この研究は、もの忘れセンターで実施している腸内細菌と認知症に関する研究の一環で実施されました。
本研究は、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの長寿医療研究開発費、日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費:JP20k07861、JP24K10546)、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターの「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(異分野融合発展研究)、公益財団法人ダノン健康栄養財団、公益財団法人本庄国際奨学財団、文部科学省の高度医療人材養成拠点形成事業(高度な臨床・研究能力を有する医師養成促進支援:GP R6-11)の支援で実施されました。
研究成果は、2025年10月22日に国際学会World Stroke Congress 2025(WSC 2025)で発表され、科学雑誌Journal of Alzheimer's Diseaseでも論文公開されます。
脳MRI画像の拡大血管周囲腔という画像所見は脳ドックなどで高齢者に散見され、認知症との関連でも最近注目されつつあります。今後、MRI画像を詳細に解析していくことで、認知症における発症機序の解明につながるかもしれません。

図1:今回の研究の流れ(腸内細菌研究の一環)
今回の研究では、上記の「腸内細菌研究」で得られたデータを解析して実施した。

図2:血管周囲腔拡大について
血管周囲腔とは、脳血管周囲における髄液や間質液が貯留している腔のことであり、穿通動脈(基底核部)や髄質動脈(半卵円中心部)で発達している。
脳小血管病の1病型であり、基底核領域と半卵円中心領域で病態が異なると推測されている。最近では、脳内の老廃物を排出するグリンパティックシステムとの関連も想定されている。
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FAB正常群 (39人) |
FAB低下群 (61人) |
p |
|---|---|---|---|
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MMSE, スコア |
28 (26–30) |
25 (23–27) |
< 0.001 |
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血漿NfL濃度, pg/mL |
19.0 (12.8–23.1) |
23.6 (18.7−33.9) |
< 0.001 |
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基底核領域のEPVS高度, n (%) |
3 (7.7) |
24 (39.3) |
< 0.001 |
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半卵円中心領域のEPVS高度, n (%) |
10 (25.6) |
27 (45.0) |
0.059 |
FAB低下群では、MMSEスコアも低下し、血漿ニューロフィラメントLが高値であり、基底核領域のEPVSが高度である割合が多かった。
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多変量解析 |
|---|---|
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OR (95% CI) |
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年齢 |
1.03 (0.95−1.12) |
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教育年数 |
0.85 (0.70−1.04) |
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ASCVDスコアの高リスク |
2.46 (0.64−9.47) |
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大脳白質病変 |
1.78 (0.42−7.49) |
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脳微小出血 |
2.36 (0.40−13.9) |
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基底核領域のEPVS高度 |
4.37 (1.08−17.8)* |
FAB低下群を従属変数としたロジスティック回帰分析。
*p < 0.05. ASCVD:atherosclerotic cardiovascular disease.
多変量ロジスティック解析では、基底核領域のEPVSは年齢など他の関連因子と独立して、FABが低下するオッズ比が約4.4倍高かった(FAB <13点)。
脳の基底核領域の血管周囲腔拡大は、前頭葉機能検査(FAB)と独立して関連した。
血管周囲腔拡大は脳小血管病の1病型であり、高齢者における血管リスクの管理が、認知機能の維持に重要かもしれない。
Kinjo Y, Saji N, Murotani K, Sakima H, Takeda A, Sakurai T, Kusunose K. Association between enlarged perivascular spaces in the basal ganglia and the Frontal Assessment Battery: A cross-sectional study.

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